第56話 異形化した者
「フェイズ3――異形状態だよ。幸い、屋内だったから、上手く閉じ込めて時間稼ぎをしている所だけど……あちらの方が力が強い。おそらく破られるのは時間の問題だね」
「異形状態……。その名称から推測するに、璃紗さんのあの変異と同じ状況、という感じでしょうか?」
桜満の一言で理解したらしい舞奈が、そんな風に問いかけてくる。
「ああ、アレ――変異が完全に進行しきってしまった状態、だな。つまり……完全に魔物の如き異形の姿となってしまっているって事だ。まあ、千堂部長の妹と同様に接近さえ出来ればすぐに片づくが」
そう舞奈に説明すると、桜満の方を向き、
「てなわけで、外に出てきた所を狙ってケリをつける。屋内じゃ接近しにくいしな」
と、告げた。
「了解したよ。奴はすぐそこのパブ――」
そこまで言葉を発した所で、ドンッという重い衝撃音と共に、近くの店舗……桜満が口にしたパブの扉が宙を舞った。
「……出てきたようだね」
と言って肩をすくめてみせる桜満。
そして、それとほぼ同時に、
「ガアアアアアアアッ!」
という咆哮と共に、腕が四本ある二足歩行の狼といった雰囲気の異形が道路へと飛び出してくる。
だが……何も考えずに飛び出してきたのは大間違いだ。
俺は即座にそいつへと接近すると、道路に着地したばかりのそいつ目掛けて、真横から勢いよく威力はないが動きを止めるのに最適な雷の魔法を叩きつけた。
「グギャァァァァァッ!」
悲鳴と共に、弱い雷をまともに浴びた異形は、魔法の効果により一時的な麻痺が発生。その場でその身体を震わせ、固まる。
その動けないそいつにめがけて、俺は魂の欠片を肉体から分離させる魔法を放った。
――当然、クリーンヒットだ。
そいつの肉体から、中空へと魂の欠片が弾き出される。
俺は即座に魔法剣を生み出すと、魂の欠片を一刀両断。
……だが、異形の肉体が元に戻る気配がない。
「透真! そいつ、魂の欠片1つじゃないわ! 3つよ! あと2つ! 駅に着いた時には1つ分しか感じなかったのに、いつのまにか増えているわっ!」
かりんがそんな警告の声を俺に投げてくる。
……まて、それはつまり、この短時間の間に2つの魂の欠片がこいつの間近に現れ、それを取り込んだ……という事になるが……そんな事があり得るのか?
「ゴガアアアアアッ!」
魔法による麻痺と、魂の欠片の分離による混乱から立ち直った異形が、近くにあった立て看板を掴み、放り投げてくる。
まあ……あれこれと思考を巡らせるのは後だな。
立て看板を斬り伏せながらそう考え、俺は異形へと接近する。
が、異形は電信柱を足場に連続で跳躍。
俺の頭上へと迫る。
真上からの攻撃か?
俺は後方へと下がりつつ、真上へと顔を向ける。
だが、異形は俺に攻撃を仕掛けたりなぞせず、そのまま通り過ぎていった。
な……に……っ!?
まさか、一度離脱を図る気か!?
と、そんな事を思った直後、後方から、
「かりんさんっ!」
という舞奈の声が響いた。
諸々ありまして、明日の投稿は難しくなってしまったのですが、
今日なら投稿する余裕があったので今日投稿してしまいました!
※予約投稿でも良かった気はしますが、調整も終わっていて、どうせならと思いまして……
というわけで、また次回!(明後日、月曜日の予定です!)
追記
投稿予定が『明日』になっていたのを『明後日』に修正




