第55話 飛翔した先に待つもの
「と、ところで、空を飛ぶなんて初めてなんだけど……。こ、これ、どうすればいいの!?」
「ああ、俺の方で制御しているから何もしなくていいぞ」
どうしていいのか分からずに慌てるかりんにそう告げる俺。
逆に舞奈の方は、先程のやり取りで理解したのか、何も言ってこなかった。
そんなわけで、俺が制御して空を飛んでいく最中、
「あの……幽霊って、空飛べないんですか? 物語とかだと、こう……飛び回っているイメージがありますが……」
と、そんな疑問を口にする舞奈。
たしかに、ゴーストタイプのアンデッドモンスターは飛翔出来る奴が多いな。
「え? う、うーん……飛べる幽霊も存在すると思うけど……私は無理ね」
「そうなんですか? ……あ、そういえば『簡単に言うと幽霊みたいな物』と言っていましたね。つまり、かりんさんは幽霊は幽霊でも、完全な幽霊とは違う……という事ですね」
「……説明する手間を省いてくれてありがとう、というべきかしらね? その通りよ。私は……『生霊』に近い存在なの。ただまあ、それも正確ではないのだけれど、私にはそれ以上詳しく説明出来ないというか……自分でも私自身がどういう存在であるのか良くわかっていないから、むしろ逆に知っている人がいるなら教えて欲しいくらいね」
なんて事を言って、ため息をつきながら首を横に振って見せるかりん。
「正確な説明は俺にも無理だな。霊体だけの存在になっているという意味では、生霊と言っても良いかもしれないが……それにしては、少々状況が特殊すぎる」
そう言いながら、俺はかりんを一瞥する。
……やはり、感じる霊力がアンデッドの類とはどこか違うな……。これは……精霊の持つ霊力にも似ている部分がある……と、言うべきだろうか?
何にせよ、破壊の化身――彼の魂の欠片を長年封じ続けてきた事で、かなり異質な存在と化している事は間違いない。
まあ、あの魂の欠片自体、人間を変異させる力があるし、霊体が変異してもおかしな事ではない……か。
そんな思案をしている内に、眼下に白と黒のツートンカラーの車――警察車両が見えてくる。
なるほど……。既に『事件』として封鎖済みというわけか。
という事は――
「パトカーが止まっていますね……」
「すぐ近くから『感じる』わね」
「ああ。どうやらあそこが目的地のようだな。となると……」
舞奈とかりんにそう返しつつ、眼下を見回す俺。
すると予想通り、すぐにダークスーツに身を包んだ桜満の姿を見つける事が出来た。
「やっぱり居たか。よし、降りるぞ」
そう告げて桜満の後方へと降下。
3人全員が地上に降り立った所で、俺は隠蔽魔法を解除する。
「――桜満!」
という呼びかけに桜満が俺に気づき、振り向いてくる。
「やあ、来てくれたようだね。……って、そのふたりは?」
「あ、えっと……月城舞奈といいます」
「私はかりん。……幽霊みたいなものよ」
桜満の問いかけに俺が説明するよりも先にふたりが名乗る。
「ああ、貴方が月城舞奈さんか。……それと、幽……霊……のかりんさん?」
「まあ……そこの説明は後でする。ふたりとも協力者だと思っておいてくれ。それで? どういう状況なんだ?」
かりんを見ながら首を傾げる桜満に、俺はそう告げて、状況の説明をするよう促した。
次の更新も1日空けて日曜日になる予定です。
ただ、その翌日(月曜日)も更新出来る想定です。今の所は……ですが。
追記
タイトルの第55話の所が、第55になっていたので修正しました。




