第51話 川の向こう
「そ、そうだな……。たしかにこの辺りに関しては舞奈の方が詳しいから、案内して貰えると助かるな」
引き気味にそう答える俺。
案内以外にも、欠片の捜索という面でも、分析能力が役立つ可能性もあるしな。
と、そう思った所で、かりんが同意の言葉を紡ぐ。
「そうね。私も結界の向こう側にはこれまで行けなかったから、全然知らないし」
それに対し、舞奈はホッとしたような表情を見せ、そしてかりんへと問いかける。
「それで……その欠片とやらが南のどの辺りから感じるのか……というのは、大体推測出来ているんですか?」
「うーん……推測というか……まっすぐ南に14町……じゃなくて、1.5キロくらいの所にある感じかしらね。なんとなくだけど」
「1.5キロというと……川の向こうの駅から少し北側になりますね……。居酒屋や雑居ビルの並ぶ繁華街のあたり……でしょうか」
かりんの回答を聞き、おおよその場所を口にする舞奈。
ふむ……南の駅か。
「――そう言えば……南には複数の鉄道が乗り入れている駅があったよな?」
「え? あ、はい、たしかにありますね。……来る時に使わなかったんですか?」
「ああ。この街には地下鉄で来たから使ってないんだ。――その駅に印を刻んでおいたら、遠出する時に便利そうだな。ゲートもそこら中にあるわけじゃないし」
「じゃあ、電車で行きますか?」
という舞奈の問いかけに、そうだなと答えようとした所で、
「別にいいけど、電車なんてもの生まれてこの方乗った事ないわよ? 私。学校の図書室で読んだ本で知識としてはあるけれど、駅自体は結界の向こう側だったし」
と、かりんが少し不安げな表情で言ってくる。
「大丈夫だ。俺もこっちに来るまでほとんど乗った事なかったが、何度か使ったら慣れたしな」
実際には、こっちの世界に来る前は『ほとんど』どころか『皆無』だったりするんだけどな。そもそも鉄道なんてもの自体、向こうには存在していなかったし。
「何を持って大丈夫なのか分からないけど……まあ、何事も経験よね、うん」
と、自分を納得させるように言って、うんうんと首を縦に振るかりん。
「じゃあ、さっそく駅へ向かうとしましょうか」
「そ――あ、待って! ……もうひとつ問題があったわ」
「え? もうひとつ……ですか? なんでしょう?」
首を傾げる舞奈に対し、かりんが申し訳なさそうに、
「……えと、その……私、お金を持っていなかったわ……。一銭も」
なんて言ってきた。
……ああうん、そうだな。
よく考えればわかるけど、そうだよな……
諸事情により明日は更新するのが難しい為、
次の更新は明後日の予定です……すいません orz




