外伝II-I 古都の怪異1
一方その頃――
弥衣と綾乃を連れて古都へ戻ったボクたちは、調査を再開。
と、そこで……
「都市伝説系怪異の……多発?」
「はい。なんらかの儀式をすると『何か』が現れるという類のものです。その後は連れ去られたり、殺されたり、存在を消されたりするパターンですね」
首を傾げる弥衣ちゃんに対し、桜満さんの部下の女性――凜那さんという名前らしい――がそう答える。
「ああー、ホラーの定番みたいな奴だね」
「定番って……。いやまあ、少女マンガとかで前に何度か見た事あるけど……」
そう返してくる鈴花にさらに返事をするボク。
「ボクは今でも読むよ! 何度も見るよ!」
「まあ、咲彩はそうだな。最近、俺ん家に置いていったりするし」
雅樹はやれやれと言わんばかりの表情でそう言いながら、凜那さんの方を向き、
「――って、それはそれとして……実際に被害は出ているのですか?」
と、そんな風に問いかける。地味に敬語で。
というか……しっかり読んでおきながらなんという言い草っ!
などと、心の中でちょっと憤慨していると、凜那さんが、
「はい。行方不明になったケースがそれなりに確認されています。……もっとも、存在ごと消された場合、確認のしようがないので、もしかしたら確認出来ている以上の被害が、実際には出ている可能性もゼロではありませんが……」
などと言ってくる。
それはまあたしかに……と思っていると、
「……少なくとも……存在ごと消す程の……力を持つ奴は……いない」
「うん。そんなのいたら、とっくに『波動』で気づいている」
カナちゃんとミイちゃんが凜那さんの発言に対し、そう返した。
そしてそのまま、
「ただ……。記憶改竄くらいは……やっている……かも」
「たしかにそれはありえる……かも」
なんて続ける。
「なんにせよ、儀式によって危険な存在が出てくるのは変わらないって事だね」
「そうなるねぇ。どういう儀式かはわからないけど、やる人って必ずいるしね」
紘都の言葉に頷きつつ、ボクの方を見てくる鈴花。
そしてそれに雅樹も同意し、「ああ、そうだな」と言ってこちらを見てくる。
「ぐふぅっ」
「うぐっ」
「ぐうっ」
ボクに続き弥衣と綾乃も胸を押さえた。
3人とも『実際にやらかしている』のだからそうなるよね。うん。
綾乃の場合は少し違うけど、まあ……自分から首を突っ込んだも同然だという意味では、似たようなものだと言えなくもない……かも。
「興味本位、恐ろしい」
「まったくです、ね……」
弥衣と綾乃のそんな呟きに続くようにして、
「まあ……『いかにもな代物』が見つかったら、試してみたくなるものだよね……。さすがに今は不用意にそんな事したりはしないけど」
と、そう口にするボク。
そして、
「そういう意味でも、放ってはおけないかなぁ。一度『救われた側』としては、一発アウトになんてさせたくない」
「その通り……です、ね。今度はギリギリでも『救う側』になれれば……と。そう思います、ね」
と、そんな風に言うボクと綾乃。弥衣も無言で首を縦に振って同意する。
「ま、それはその通りだな」
「だとすると、まずは『終わってしまったもの』よりも『今まさに進行中だと考えられるもの』を潰しに行くのがいいんじゃない?」
頷く雅樹に続くようにして、鈴花がそう言ってくる。
「たしかにそうです、ね。こう言ってはなんですが……『全滅』を食い止められれば、情報を得られる……というのもありますし、ね」
「あと、出来れば犠牲者が出る前に片付けたいとは思うけれど、まだ何も起きていないものを調べているより、そっちの方が確実だというのもあるかな」
綾乃と紘都がそんな事を告げてくる。
あー、なるほど……たしかに。
「それじゃ、『今まさに進行中だと考えられるもの』を急いで潰しに行こうか。凜那さん、何かそれっぽいものはないですか?」
「そうですね……」
ボクの問いかけに凜那さんがリストを確認しつつ、
「――これなんかまさにそうだと思います」
と告げながら、それを見せてくる。
……うん。たしかに『まさに』だね、これは。
予定(活動報告参照)よりも、ほぼ1日更新が遅れてしまいましてすいません……
さて、今話から何話か『咲彩側』の話となる『外伝II』になります。
こっちの出番が皆無なので、区切りの付いたここらで挟んでおこうかと思いまして……
というか『外伝』自体、とても久しぶりすぎる気がします……
そのうち手前に何か挟んだりした場合は、IIIになったりするかもしれません。
とまあ、そんな所でまた次回!
次の更新は少し間が空いてしまいますが……8月4日(月)頃を予定しています!
『頃』です……。でも、前回から今回ほど間が空いたりはしないです。きっと……
※追記
脱字があったので修正しました。




