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第154話 異界と扉と

「ところでー、誰かがへんてこな建物を作ってまでやろうとした事って、結局なんなのー? 舞奈の言う『今回の目的』って何ー?」

 そんなもっともな疑問を口にするセラに、舞奈は額に手を当てて、

「残念ながら、そこが良くわからないんですよね……」

 と、そう返す。

 

「え? わからないのー?」

「はい。正確には例の異空間に上の建物ごと……いえ、地下も含めて取り込む事が『目的』だったのは確実なんですが、それだけではないような気がするんです。この施設の規模や構造から考えて、同時に、あるいはそれを通過点として、さらに何かやろうとしていたのではないかと……」

 セラに対して舞奈がそう答えると、

「ここにあるものを『回収』するのも目的だった……とかではないです?」

 と、そんな風に言う悠花。

 

「それも目的のひとつだとは思うんですけど、それだけが目的だったら、ここまで霊力を供給する必要性はないですし……」

「あ、なるほど……。たしかにその通りなのです」

「……近くにあった湖も関係があるのでしょうか?」

 納得した悠花に続き、今度は紡がそんな疑問を口にする。

 

「まあ、距離を考えると無関係とは思えないよね」

「……そうだな。あの湖には、例の異空間にあった血のプールのように、異界の魔物を召喚するような性質を有する術式があった。例の異空間との繋がりから考えても、この場所もそれと何らかの関係性があると言っていいと思う」

 亮太に続くようにして、俺は腕を組みながらそんな風に言う。

 すると、

「ブルルッ。術式的にも上の建物にあった術式の中に似ているものがあったブルッ。例えば転移のトラップとかがそうブルね」

「トッラー。たしかに一部分ではありますが、似ている所があったでありますトーラー」

 ブルルンとオトラサマーが俺の発言を補足するかのようにそう言ってくる。

 

 術式的にも似ている……か。

 ……幻想なる異界の扉を開こうとしていた奴らと、この施設を作った奴らが『同じ』かどうかは、さすがにこれまでに得られた情報だけではわからない。

 だが、もしも同じだったとしたら……

 召喚魔法とは、いわば一時的に異界の扉を開いているようなもの。

 仮にここが召喚魔法の逆流によって、こちらに転移してきたのだとすると、それを何らかの方法で探知し、こちら側から召喚の術式によって、俺が元いた世界と『継続的に接続する扉のようなもの』を構築する事が出来る……という可能性もゼロではない。

 

 まあ……ゼロではないというだけで、かなり困難なのは間違いないが、それでもやろうとしていたのだとすれば……

 

 と、そんな事を考えていると、

「――なにか気づいた事でもあるのですか?」

 などと、首を傾げながら舞奈が問いかけてきた。

 

「ああいや、単に幻想なる異界の扉を開こうとしていた奴らと、この施設を作った奴らが同じだったとしたら、この施設もその扉を開くためのものだったのかもしれない……と、そんな事を思っただけだ」

 そう俺が答えると、今度は悠花が問いかけてくる。

「幻想なる異界の扉……。事前に読んだ資料にあったですね。たしか、赤い空の異空間を生み出したであろう人たちは、それを開こうとしていた可能性がある……だったですか?」

 

「ああ、そのとおりだ。まあ……どうやってそんな事を成し遂げようとしていたのかはさっぱりだけどな」

 俺が悠花に対して頷きながら返事をしたところで、

「なるほど……異界の扉を開くと言うと荒唐無稽な話ですが、その異界の代物だとわかる『明確なもの』があれば、異界の存在もまた『確実』となります。この施設を作った何者かは、異界の扉に関する確実な情報を得ていて、本気で異界の扉を開こうとしていた……いえ、諸々の情報を踏まえると、今も現在進行系で開こうとしている……と、そう考えた方が良さそうですね」

 なんて事を思考を巡らせながらといった仕草で呟くように言ってくる舞奈。

 

「それってつまり、この部屋がその『異界の代物』だと言いたいわけよね?」

「ええまあ、そういう事ですね。この部屋自体は大昔からあったようですし」

「そうね。そして、ここへ至る階段が緩やかで長かったのも、異界の代物であるがゆえに、理解出来るものがいなくて大人数が行き来したか……あるいは大型の『何か』を通す必要があった……とも考えられるわね」

 そんな風に話すかりんと舞奈を見ながら、間違いなく異界の代物だと言いたい衝動に駆られるが、今ここで話すものではないな。

 もし皆に言うとしても、まずは桜満と話すのが先だ。

 というわけで――

「……ま、細かい調査は桜満に任せればいいさ。持ち出せそうな物は特にないし、そろそろ引き上げるとしよう」

 と、そんな風に告げた。

 

「隠し通路や隠し階段なんかもなさそうだしねー。それに……」

 セラはそう言いながら、ずっと黙ってついてきている青白い人の形をした霊体――霊魂へと顔を向けた。

 

「そうだな、こっちもどうにかしないと駄目だな。まあ……上で少し話したように、ホムンクルスを使うしかないというか、そっちも桜満任せになるが……」

 そんな風に返事をしてため息をつくと、

「そればかりは仕方がないわね。私たちにはどうしようもないし」

 と言って肩をすくめてみせるかりん。

 ま、たしかにそのとおりなんだが……

 

「とりあえず、地上へ戻って連絡と報告ですかね? あ、それともここからゲートで戻ります?」

「本当なら、印を設置してゲートで戻りたい所なんだが……ここは歪みが凄まじくて使えそうにない。一度地上に戻るしかないな」

 俺は舞奈に対してそう返し、やれやれと首を横に振ってみせる。

 

 それにしても……だ。一番最後にとんでもない物と遭遇したものだ。

 まさか、魔王の間にまた足を踏み入れる事になるとは思いもしなかったぞ……

 

 地上へ引き返す前に部屋を見回し、そんな事を思う俺だった――

というわけで(?)物凄く長くなってしまった広大な謎の廃墟の探索はこの話で終わりです!

プロット通りではあるのですが、まさかここまで長くなるとは……という感じです。


……今回は探索にケリを付けるのを優先するために会話を圧縮した結果、再び説明ばかりになってしまっているのがなんだか微妙なので、いずれ微調整するかもしれません……


ま、まあ、そんなところでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、7月12日(土)の想定です!

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