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第153話 術式、先か後か

「良くわからんが、今すぐどうにかなるような感じではなさそうだな」

 4つの石を見回しつつ俺がそんな風に言うと、

「もしかして、あまりにも時間がかかりすぎると判断して、放棄した……とか?」

 という推測を口にする亮太。

 

「あー……それはありそうな気がしますね」

「たしかにな。この感じだと千年以上は軽くかかりそうな感じがするし」

 舞奈に対し、俺が頷きつつそう返すと、

「ブッル。ブルルンもそう思うブル」

 と、身体の上半分を前に倒しながら言い、同意を示すブルルン。

 

「ここまでの術式のあれこれは、ここに全て繋がっていた……というのはわかったけど、だとしたら例の異界にわざわざ引き込まれにいった理由はなんなのかしら?」

 かりんのそんなもっともな疑問に、皆が考え込む。

 すると程なくして、

「ううーん……。この器に霊力を溜めて何かをしようとしたけどー、全然溜まらなすぎてどうにもならなさそうだから、諦めて他の方法を考えた……とかー?」

 なんて事をセラが言った。

 

「なるほど……。たしかにそれはありそうですね」

「そうだな。もしかしたら……この石を要として使った術式を解析する事で、例の異空間に関する術式が生み出されたのかもしれないな。例えば、幽霊宿を閉じ込めていたあの術式と組み合わせるような感じで」

 紡に続くようにして、そう口にした所で俺はふと思う。

 そして、

「……いや、あるいは大昔にここを発見した誰かが既に解析済みで、その術式が先に生み出された可能性もあるか」

 と、呟いた。

 

 どちらにしても、ここに召喚術――もっと言えば、『時空』や『次元』に関する術式に関わるものがあったのではなかろうか? なにしろ、上の建物は『空間』に作用する術式が広範囲に使われていたし。

 そんな風に心の中で付け加える俺。

 

「もしかして、上の建物の術式に統一感がないのも、その『異空間関係の術式』を生み出す過程で、実験として他の色々な術式を組み合わせたりしていたから……だったりするですかね?」

「うーん、たしかに持ち込まれた古今東西様々な術式を用いた実験の結果、元の術式の構成……というか『体系』に近い新たな術式が生み出された……というのもあり得ない話ではないね」

 悠花と亮太のその発言に、

「ま、先に副産物的に生み出された術式を『ちょうど都合が良いから用いた』という可能性もなくはないけれど」

 なんて言葉を付け加えるように言うかりん。

 

 まあ……ちょうど都合が良いという言い回しはアレだが、それぞれの場面場面で、適切な術式を用いていった結果、カオスな状態になった……というのは、大いにあり得る話ではあるな。

 

「そもそもの話だけどー、ここにどんな術式があったんだろうね? というか、今はもうないのー?」

 セラがそんな風に言うと、

「トッラー。この『石』以外に術式らしいものは何も感じないでありますトーラァ」

 と、そう返事をするオトラサマー。

 

「ブッルル。残滓の類すら感じないブル。長い間に自然消滅した……というのは、あり得ないブッルね」

「そうだな。ま、『持ち去られた』と考えるのが妥当だろう」

 俺がブルルンの言葉に頷きつつそう口にすると、

「持ち去られた……です? つまりその術式は、『符』や『魔導具』のように持ち運ぶ事が出来るようなものだった……と、そういう事です?」

 と、今度は悠花がそう問いかけてきた。

 

「ああ、そういう事だ。もちろん推測でしかないが、そう考えれば今この場に何もなくてもおかしくはない」

「なるほどなのです。たしかにこんな魔王城の最深部みたいな場所ならば、呪物的なものがあったとしても不思議ではないのです」

 俺の返答に対し、そんな事を口にしつつ納得する悠花。

 

 魔王城の最深部みたいな場所じゃなくて、本当に魔王城の最深部なんだが、まあそこは敢えて言うまい。

 

「もしそうだとして……大昔に持ち去られたのか、それとも最近――と言っても、この上にある施設が作られた頃だけれど――になってから持ち去られたのかが気になるわね」

「うーん、そうですね……。上の建物に使われている様々な術式の事を考えると大昔に持ち出されたような気もしますが……案外、持ち出されたの自体は最近なのではないか……という気もしています」

 かりんに対して舞奈がそう返事をすると、かりんは「というと?」と言いながら首を傾げた。

 

「これはあくまでも仮説……というか想像なんですが、ここへ至る階段、途中で作られた時代が明らかに変わっていましたよね? 下の方――古い時代のものは、大昔に鉱石の採掘かなにかで穴を掘っている時にここにぶち当たり、それを知った何者か……当時の権力者とかが作ったのではないでしょうか?」

「なるほど、たしかにそれはあり得るわね。坑道のままだと危険だし行き来がしづらいから、『通路』として整備した……というのは普通に考えられるわね。でも、その時にここにあった『何か』も持ち出されたんじゃ?」

「いえ、もしそうだとしたら、坑道のままでも問題なくないですか? わざわざ整備したという事は、今かりんが言った通り『行き来』する必要があったからなのではないでしょうか」

 舞奈にそう言われたかりんが、ハッとした表情で「あっ、言われてみるとその通りね」と返す。

 そしてそのまま顎に手を当てると、

「という事はつまり……舞奈はその当時はここにあったものを『持ち出せなかった』から、『解析のために行き来する通路』を作る必要があった……と、そう言いたい感じかしら」

 なんて事を、考えながら口にして舞奈の方を見た。

 

「はい。そして解析された術式をもとに、あの幽霊宿に使われた術式などが作られたわけです。しかし、当時はそれで十分でしたが、『今回の目的』ではそれだけでは足らず、解析された術式の大元……つまりここにあった『何か』が必要になったのではないかと」

「だから埋もれてしまった『かつての通路』まで掘り進んだ……と。でもそうなると、かつては持ち出せなかった物を持ち出す手段が生み出されたという事になるわね」

「そうですね。持ち出す為の手段が術式なのか、それとも『現代技術で生み出された道具』なのかは分かりませんが、どちらにしても、現代だからこそ持ち出す事が可能になった……と、そう考えるのが自然ですね」

 

 そんな舞奈とかりんの会話を聞きながら、俺は『なるほど』と納得する。

 たしかにその流れなら、色々と辻褄が合うな。

 そして、そうだとすると、上の建物で使われている各種術式の『体系』がカオスな状態なのは、例の異空間に関する術式――いや、もっと上のレイヤー……舞奈が今さっき言った『今回の目的』と関係がありそうな感じがするぞ……

ちょっと説明話すぎたのを少しだけ調整していたら、平時よりも少し更新が遅くなりました……

(まだ調整しきれていませんが、あまり遅くなるのもどうかと思ったので一旦投稿する事にしました……)


概ね落ち着いたので、今回からは平時の更新間隔に戻ります! ようやくです!

ただ、今月も大きな対応が必要となる場合も無くはない状態なので、突発的に1回だけ更新を休むとかはあり得るかもしれません……

とはいえ、1ヶ月丸々更新なしみたいな事にはなりませんが。


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新は、7月9日(水)の想定です!

(更新時間は平時よりも遅くなるかもしれません)

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