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第152話 階段の先にあったもの

 階段は少し下りた所で右に45度ほど折れ曲がり、また少し下りた所で右に45度ほど折れ曲がる……というのを何度も繰り返しながら、下へ下へと続いていた。

 

「八角形の螺旋……とでも言えばいいのでしょうか? 妙な構造の階段ですね」

「曲線じゃないけど、たしかにそう表現したくなるわね。これは」

 舞奈とかりんがそんな風に言うと、

「どうしてこんな形をしているのかが気になるのです」

 と、悠花が続く。

 

「ブッルブルー、この内側の壁の中をあの鎖が――正確に言うブルと、あの鎖の魔力と同じ魔力が通っているブッルよ」

「トッララー。この階段はその魔力の流れを囲うようにして作られている感じでありますトォーラァ」

 そうブルルンとオトラサマーが言う通り、壁の内側を魔力が流れているのが感じられた。

 

「うーん……。それだったら、普通に螺旋とかでもいいのにねー」

「この階段の構造自体も、もしかしたら術式の類なのかもしれないな」

 セラの言葉に、俺がそんな風に呟く。

 するとそれに対して、

「たしかに、建物全体が魔法陣であると考えると、これにも意味があるような気がしてくるわね」

「一番考えられるのは、魔力の増幅……とかだと思いますが、それならこの階段に沿って鎖が続いているはずですし……」

 と、そうかりんと紡が言ってきた。

 

「どちらかというと、魔力が外へ漏れ出さないようにしている……のかもしれないね。一直線に下へ魔力が向かうようにしている感じで」

「つまり、魔力の流れを覆うカバーの役割と言うわけですか。なるほど……今いるこの階段を含めて魔力の『ケーブル』のような感じになっていると考えると、たしかにそれは大いにあり得そうな気がします」

 亮太の発言に対し、舞奈は顎に手を当てて考え込みながら、そんな風に言う。

 

「魔力のケーブル……。そう言われると、ちょっと納得出来るのです」

 と、納得の表情で言った悠花に対して、セラは「うーん、たしかにー」と同意してみせた後、周囲を見回してから言葉を続ける。

「……あれ? 壁の雰囲気がなんか違ってないー?」

 セラにそんな風に言われ、俺は周囲を見回す。

「……たしかに、殺風景なコンクリートの壁から、いつの間にか石壁に変わっているな」

「どう見ても、こっちの石壁の方が古いわね。普通に考えたら意味がわからないけれど……」

 俺に続いて、かりんが石壁を確認しながらそう呟く。

 

「たしかに、先にこちらが作られたとするならば、ここまでどうやって下りてきたのか……という話になりますね」

 というもっともな疑問を口にする紡。

 それに対して、

「まあ、地面をすり抜けられる人間がいたとかでなければ、埋もれたと考えるのが自然ですね」

 と、舞奈。

 

「そうだね。そして、なんらかの理由で地中に埋もれてしまった場所へと再び至る為に、ここまでの階段が作られたと考えると自然だね」

 亮太がそんな風に言うと、セラが呟くように疑問を投げかける。

「なるほどー。というか、結構下りてきた気がするけど、今どのくらいの深さなんだろー?」

 

「そうですね……。1段の高さと段数から考えると……既に8階分くらい下りてきていると思います」

「8階分か……。うーん……たしかにこの階段は、地中に埋もれていた『何か』へ繋ぐためのものであり、同時に魔力の『ケーブル』として作られたものでもある……と、そう考えて間違いなさそうな気がするな。この建物全体は地上3階、地下3階で収まる構造だったし。まあ、地下2階はないに等しいが」

 紡の言葉を聞き、俺は腕を組みながらそんな風に言った。

 

 ――そして、そのままさらに2階分ほど下りた所で、唐突に階段が終わる。

 その代わり、そこには石の扉があった。

 

「石の扉……? また随分と古めかしいというか……古すぎる扉が出てきたわね」

「開けられるですかね? 凄く重そうな感じがするですが……」

 かりんに続いて、もっともな疑問を口にする悠花。

 

「……ちょっと重いですが、横へスライドさせられそうですね、これ。開けようと思えば開けられそうです」

 舞奈が石の扉に駆け寄り、手を掛けながらそんな風に言ってくる。

 それに対して、

「ちょっと重いで済むんだ……」

「トッラー。さすが、身体強化魔法マスターでありますトーラァ」

 セラとオトラサマーがそれぞれそう口にした。

 

「どうしましょう? 開けてしまいますか?」

 という問いの言葉を投げかけてくる舞奈に、

「トラップのある感じもしないし、開けてしまって良さそうだな」

「ブッル。ご主人の言う通り、問題なしブル」

 と、俺とブルルンが返事をする。

 

「では、よ……い……せっ……と!」

 舞奈が石の扉に力を込め、横へスライドさせる。

 ガリガリと石の削れる音と共に扉は開いていき――

「これは……王の間?」

 そんな風にかりんが呟く。

 

 ……いや待て、どうしてこんなものがここにあるんだ……?

 

「半壊しているけど、たしかにそれっぽいね。なんというか、意匠が禍々しいけど」

「まったくなのです。まるで魔王でも待ち構えているかのような感じなのです」

 亮太と悠花が、石の扉の先に広がる光景を見ながらそう口にする。

 

 悠花の言葉は正しい。

 そこは向こうの世界の魔王城――その魔王の間そのものだったのだから。

 

「ブッルー、鎖の魔力を奥の方から感じるブルよー」

「奥……というと、あの魔王の玉座みたいなものがある方ですね」

 ブルルンに対して紡がそんな風に言って、奥にある玉座を見る。

 

 まあ……『みたいなもの』じゃなくて、『魔王の玉座そのもの』なんだけどな。

 なんて事を思いながら、奥へと進む俺。そしてそのまま玉座の裏へと回り込む。

 

「丸い石が……4つ?」

 俺はそこにあったものに対し、そう呟いた。

 何故なら、そこにあったのは台座に乗った丸い石だったからだ。

 オーブ――というか、巨大な水晶玉が石化したものだと言われたら納得するような、そんな感じだ。

 それが4つ並んでいた。

 

 うーん……。魔王との戦いの時は、当たり前と言えば当たり前だが、こんな所まで見ている余裕なんてなかったから気づきもしなかったな……。倒した後は破壊神が現れて、この場所は消し飛んだし。

 ……いや、待てよ? まさか消し飛んだように見えて、実はこっちの世界へ転移していた……のか?

 あの破壊神……というか、破壊の化身の『欠片』がそもそも向こうの世界に現れた事を考えると、こっちの世界からの召喚術を、あの魔王が用いていた可能性は大いにあり得る。

 となれば、破壊神の出現で術式の魔力が逆流して転移現象が発生した……という可能性もまたゼロではない、か。

 

 そんな風に思考を巡らせていると、

「石に向かって鎖が繋がっていますね」

 と、周囲を見回しながら舞奈が言った。

 たしかに鎖が4つの石全てに繋がっているな。

 

「この石に対して霊力を供給しているみたいね。……全然反応していなさそうだけど」

「トッララー。霊力そのものは流れ込んでいるでありますトラー。でも、『器が大きすぎて全く溜まっていない状態』でありますトォーラねー」

 かりんに対してそんな風に返すオトラサマー。

 

 オトラサマーのその言葉に、俺は石の魔力をたしかめてみる。

 なるほど……たしかにこれはそう簡単に溜まるようなものではなさそうだな。

 どうやら、相当膨大な魔力を必要とするようだ。

 まあ、召喚術の要……もっと言うなら、あの欠片――破壊の化身に関する術式の要だったとするならば、当然だと言えなくもないが……

おおよそ1ヶ月ぶりの更新となりました……

まったく書く余裕がなくて、大幅に間が空いてしまい、申し訳ありません……


次の更新も、書く余裕が出来次第となります……

が、7月からは元に戻れる予定です!

……よ、予定です(多分大丈夫だとは思いますが……)

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