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第151話 オーバーフロー

 階段を下りると、予想通り昇降機のあった場所へと出た。

 まあ、これで別の所に繋がっていたら、それはそれで困るが。

 

「あの奥……というか、地下がこんなに広いとは思わなかったのです」

「たしかにそうだね。……それにしても、なんでこっちの通路はこんなに幅が広いのに、もうひとつの入口から入った所は、あんなに狭かったんだろう?」

 涼太が悠花に頷きつつ、そんなもっともな疑問を口にする。

 

「あっちは裏口みたいなものだったとかー?」

「たしかにそれはありえなくもないですが、それにしては狭すぎる上に、奥の方でグルっと回るだけの場所があるのが気になります」

 セラに対して舞奈がそう言うと、それに続くようにして、

「そうねぇ……。下へ続いている梯子かなにかが、以前は存在していたと思われる場所はともかく、その先のただ回って戻るだけの通路の意味は良く分からないわね」

 と、かりん。

 

「あのタイミングでは進む事しか考えていなくて、しっかりと確認していなかったが、通路の壁面とかに、何か視認出来ない文字が刻まれていたのかもしれないな」

 そんな風に俺が言うと、

「うーん、なるほど……。たしかにその可能性は十分にありますね。この建物、構造そのものに、なんらかの意味……術式的な意味がありそうな感じですし」

 と、顎に手を当てて考え込みながらそう返してくる舞奈。

 

「一見すると、例の異空間に敢えて取り込ませる事が目的だったように感じますが、それだけでは説明がつかない所がありますからね。特にこの地下や、あの人形などは」

「ブッルゥ。あの鎖もいまいち良くわからない代物ブッルル。流れを切り替えられるのは分かったブッルけど、切り替える事でどこにどういう用途で流しているのかがさっぱりブル」」

 紡に続き、ブルルンがそんな風に言ってくる。

 

「そうだな。純粋に地下へ魔力を送っているだけであれば、単純明快だったんだがな……」

「単純に送るだけの仕組みだとオーバーフローしてしまう……とか、そんな感じなんでしょうか?」

「なるほど、オーバーフロー対策ってわけか。それはたしかにありえそうだ」

 俺が舞奈に対してそう返した所で、

「オーバーフロー?」

「トッラー? オーバーフローとはどういう意味でありますトッララー?」

 というある意味、もっともな疑問を口にする悠花とオトラサマー。

 

「凄く大雑把に言うと『溢れる』という意味合いですね。今回の場合ですと、過剰に魔力が流れる事で、暴走、あるいは術式そのものが壊れしまいかねないという事です。なので、流れを変えて、他の所に魔力を使う事で、その過剰な分を減らしたのではないか……という話ですね」

 舞奈がそんな風に説明すると、

「なるほどなのです。もしかして、ところどころ術式が生きているのも、そのオーバーフローしてしまう分を、なんらかの方法で回していたりするです?」

 という新たな疑問を口にする悠花。

 

「今までの話から考えると、おそらくですが、私や咲彩ちゃんの学校に似ている術式によるもの……なのではないでしょうか」

 紡のその言葉に、

「ああー、そう言えば地上の石碑の所で、ブルルン言ってたよねー? 紡の学校に張り巡らされていた術式に似ているとかなんとかー」

 と、悠花に代わって口にするセラ。

 そしてブルルンはそれに対し、首を縦に振るかのように身体の上半分を前に倒し、

「ブッル。言ったブルねー。かりんも『その辺り一帯を魔法陣にしてしまうようなもの』みたいな事を言っていたはずブッルルー」

 と、そんな風に言った。

 

「そうね。今なら改めてこう言えるわね。この建物とその周囲を含めた全てが、ひとつの巨大な術式――魔法陣だと」

「え? そこまでなのです?」

 頷くかりんに驚く悠花。それに対し、

「ええ。そもそも、建物の形がYみたいな形になっている事自体が、既に普通ではないもの」

 と、返すかりん。

 

「た、たしかにその通りなのです。そこの魂さんを拾った所も、話に聞いた人形の所と繋がっていたのです」

 当たり前だが無言でついてきている魂を見ながらそんな風に悠花が言い、それに涼太がため息混じりの突っ込みをいれる。

「いや、拾ったって……。言い方……」

 

「ううーん……? 結局あの鎖はー、建物全体に魔力を流す術式に、そのオーバーフローした魔力を流し込むためのものかもしれないという事ー?」

 なにやら考え込んでいたセラがそんな風に纏めるように言ってくる。

 それに対して舞奈が頷き、

「そうですね。そう考えて良いのではないかと。あくまでも仮定であって、確定ではありませんが」

 と、そう答えた。

 

 そんな舞奈の発言に続くかのようにして、

「で、その鎖があれってわけだね」

 と、そう言いながら指で正面を指し示す涼太。

 

 その視線の先――前にスルーしたさらに下へと続く階段の脇には、地上で見た『鎖』が天井から床に向かって伸びていた。それも、1本ではなく複数本だ。

 

「ブルッ、前に見た時は鎖なんてなかったブルよー」

「ええそうですね。上で魔力の流れを変えた事で現れたのでしょう。外のあの焼却炉のように見える所と同じように」

 紡が鎖を眺めながらブルルンに同意。そんな推測を口にする。

 まあ、推測というよりかは、ほぼ『その通り』だと思うが。

 

「わかりやすいくらいの変化ですね」

「そうだな。だが、これで『何かが起きた』のは確実だろう」

 舞奈にそう返しつつ、さらなる地下へとつながる階段へと向かって行く。

 

 さて、このわかりやすい変化の先には何があるのやら……だな。

予定より1日強遅くなりました……


次の更新は諸々詰まっている関係で、5月10日(土)頃を予定しています。

(5月11日(日)になる可能性もあります)

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