第150話 神殿と魔術
「ああ、そうだ。涼太たちも一緒に来てくれないか? 今さっき言った通り、地下にあった階段の先を調べたら一旦引き上げるつもりだ」
俺がそんな風に告げると、
「了解なのです」
「あの場所を調べて判明した情報については後で話すね」
と、そう返してくる悠花と涼太。
「それじゃ、一旦あそこまで戻りましょうか」
そう言ってきたかりんに頷き、来た道を引き返す。
「こんな所の入口があったです?」
「全然気づかなかったなぁ……」
悠花と涼太がそんな風に言う。
それに対して、
「まあ、これを何も知らずに気づくのはかなり難しいかと……」
「だねー。これはさすがに分からなさすぎー」
と、舞奈とセラ。
たしかに、こればっかりは難しいと思う。
俺も気づかなかったし。
とまあ、それはさておき……
「それはそうと、あの書庫みたいな場所を調べた結果はどうだったんだ? 何か良い情報はあったのか?」
そんな風に俺が問いかけると、
「あの湖を使って異界に接続しようとしていた事と、この建物が異界への扉を開く為の鍵となるように作られた『神殿』のようなものらしいってのはわかったけど……」
「あとは内容が良く分からないものだったり、大した事のないものばかりだったのです。中にはSAN値が下がりそうなものもあったですが……」
なんて返してくる涼太も悠花。
「SAN値って……」
と、呟くかりん。
SAN……サニティ。つまり正気値。
「一体どんな代物だ、それ」
そう俺が問いかけると、
「狂気に囚われかけたのですっ! 危なかったのです!」
なんて事を主張してくる悠花。
しかしすぐに、オトラサマーがちょっとやれやれと言った感じで、
「トッラー。あれはただの意味不明な絵トラーよ。何も問題ないトラッラー」
と、告げた。
「まあ、こんな所で宇宙規模の危険なのとかが現れても困りますしね」
「そうね。現れるわけないけれど」
舞奈とかりんがそんな風に言い、
「まったくだね。いくら、神殿と書かれた書物を見つけたからって、引っ張られすぎ」
と肩をすくめながら同意する涼太。
そしてそのまま、
「もっとも、狂気を感じる絵だったのはたしかだけど」
なんていう言葉を続けた。
狂気を感じる絵って……。なんだか気になるな、それはそれで……
まあ、オトラサマーが『何も問題ない』と言っていたから、本当に意味はない代物ではあるのだろうけれど。
などと、そんな事を考えていると、
「ところで……ここなのですけど、神殿と書かれた書物というのがあった……との話ですが、ここって普通に最近建てられたものですよね?」
という、ある意味もっともな疑問を口にする紡。
「そうだね。西洋の古い書物……そこに記されていたものを模倣して建造したもののようだね。西洋の古い書物も他にいっぱいあったし。それこそ『錬金術』の書もあったよ。まあ、中身は『アレ』とは全然違う眉唾物だったけどね」
涼太が頷きながらそんな風に言い、
「なるほど……。ですが、たしかに西洋のものを模倣した……と言われると納得出来る所もありますね」
と、顎に手を当てながら納得の表情をする紡。
まあ、祭壇だの天球儀だのといろいろあったしな……
「そういえば、逆にこちら……東洋の書は少なかったのです」
「トッラー。そうでありますトォーラねぇ。あったのは、陰陽術や方術、呪術と言ったものばかでありましたトットラー」
と、悠花とオトラサマーがそれに続く。
「ブッルブルー。ここの術式は、魔法に近いものが多いブル。術式を作った人間や建物を作った人間は、西洋の魔術とかそういうのに傾倒していたブッルかねー?」
「あそこにあった書物を考えるとそんな感じはするね」
ブルルンに対し、そんな風に涼太が答える。
「人形は凄く東洋でしたけれどね……」
いまだトラウマなのか、舞奈が肩を抱きながらそんな事を言ってきた。
それに対して、
「あー、でも、あそこにも西洋の人形あったよねー」
と、セラが返す。
「人形の話はさっき聞いたのです。それでふと思い出したですが……以前、廃村に悪霊が出現する事件があったですが、その時、その廃村の寺院跡に人形が大量に置かれた部屋があったのです」
「ああ、そう言えばそんなのあったね。まあ、その部屋はあの一件にはなんの関係もなかったけど」
悠花と涼太がそんな事を言う。
それに対して、
「その寺院で、かつて行われていた事を再現したのかしら……?」
という推測を口にしながら思考を巡らせるかりん。
「ないとは言えないのです。もっとも、あれがなんだったのかは良く分からないままではあるですが」
「必要に応じて、そっちも、もう一度調べてみた方がいいかもね」
悠花と涼太のそんな言葉に、
「たしかにそれはそれで気にはなるな」
とそう返す俺。
そしてそのまま、
「っと、今回はこっちの階段から下りてみるか」
と言って、眼前に見えていた階段の方へと顔を向けながら言う。
それに対して、「そうですね」と同意してくる舞奈に続き、
「今回は……です? こことは別の階段があるですか?」
という問いの言葉を、小首を傾げながら投げかけてくる悠花。
「そう言えば、そこまで詳しく話していなかったな。下からは紡が破壊した昇降機の所から戻ってきたんだ」
俺が悠花に対してそう答えると、悠花はそれに対して今度は、
「昇降機を破壊……? 紡お姉さんの魔法は障壁だった気がするですが……」
という、当然の疑問を口にしてきた。
「はい、その通りです。障壁を応用すれば、壊すのにも使えるんですよ。まあ、なんでもというわけにはいきませんけどね」
「ほええー、十分驚きなのです」
紡の返答に、まさに驚きだと言わんばかりの表情でそう返す悠花。
「まあ、紡の魔法の応用力はなかなか凄まじいものがあるわよねぇ……」
「ブッル。たしかにその通りブルね」
かりんとブルルンがそんな事を言いながら階段を下り始める。
まったくもってその通りだな……と思いながら、俺もまた階段を下りていくのだった。
絶不調からは立ち直ったものの、今度は急な予定により丸1日遅れになりました……
とまあ、そんな所でまた次回!
次の更新は予定通りとなります、4月30日(水)を想定しています!
※追記
申し訳ございません……
現在、諸々の都合により全く執筆する余裕がない為、他の更新も遅れており、こちらの更新も、5月4日(日)~5月5日(月)に変更いたします……




