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第149話 合流

 シャッターを開けた舞奈の口に風で靡いた髪の毛が入り、

「うぷっ、いつの間にか結構強い風が吹いて来ていますね……」

 と、言った。

 それに対し、俺は空を見ながら返事をする。

「そうだな。空も大分黒い雲に覆われてきているし」


「今日って、大雨の予報だったっけ?」

「夜になると雨になるかもしれないって予報だったわね」

 小首を傾げながら問うセラに、かりんがそう答えると、紡がそれに続いて推測を口にする。

「となると、雨雲が予想よりも発達した……といった所でしょうか」

 

「なんにしても、もう少し探索したら一度引き換えした方がいいな。正直、思った以上に広くて、今日1日……というか、この人数で調べきるのは不可能だし」

「たしかにそうですね。地下をもう少し調べたら撤収するのが良い気がします」

 俺の発言に対し、舞奈が顎に手を当てながら肯定の言葉を返してくる。

 

「ところでこのシャッター、外からだと壁にしか見えないようになってるねー」

「あ、本当ね。見事なまでの擬態だわ。これだと外からここにシャッターがあるだなんて、初見では気付かないわね」

 セラとかりんがそんな風に言った通り、シャッターは外側から見ると、壁そのものにしか見えないようになっていた。

 たしかにこれだと、ここが『持ち上がる』とは思えないな……

 

「これだけ風が吹いているのに、シャッター特有のガタガタという音がしませんね」

「ブッルゥ、外側に薄っすらと障壁が張られているブル。おそらくこれは風を防ぐ為の物ブッルね」

 舞奈のもっともな疑問に対し、ブルルンがそう答える。

 そしてそれに対して舞奈よりも先に、

「風を防ぐ障壁を薄く張る……ですか。なるほど、こういう感じですね」

 なんて言いながら琥珀色の薄い膜のような障壁を展開する紡。

 

「あ、ホントだー。この膜みたいなのの後ろにいると、全然風が来ないー」

 障壁の裏側に回り込んだセラがそんな風に言う。

 普通の防風障壁だが、魔力の厚み……のようなものは同じなので、性能は通常時と同じと考えていいだろう。

 

「相変わらず、あっさりと新しい障壁を作るわねぇ……」

 感心しつつも少し呆れの混じった声でかりんがそう言うと、

「いえ、これは防風障壁を薄く展開しただけなのでそこまででは……」

 と言って頬を掻く紡。

 それに対して俺は、

「薄くなっているというのに、普通に展開した時と性能が変わっていない事が見て取れる上に、無詠唱という時点で『そこまで』というレベルではないと思うが……」

 と、そう返して肩をすくめてみせた。

 

「そ、そうでしょうか……」

 今度は照れながらそう言ってくる紡に続き、

「あ、あー、あっちに小さい建物が見えるー」

 なんて事を何故か棒読み気味に言って、小さい建物とやらを指さすセラ。

 

「って、あれは……」

「例の焼却炉のようなものですね。たしかに、いつの間にか鎖が巻き付いています」

 俺に対して舞奈がそう返してきた。

 

 まあ……位置的には、たしかにそこまで離れてはいないしな。

 涼太たちの姿が見えないが、中にいる……のか?

 

「例の魂を確認して来ます?」

「そうだな。ちょっと見に行ってみるか」

 舞奈の問いかけに対し、頷きながらそう答えると、焼却炉のようなものに向かって歩き始める。

 

 するとそこでブルルンから、

「ブッルー。ご主人、悠花たちは例の地下への階段があった辺りに移動したみたいブルよー」

 と、そんな風に告げられた。

 ああ、姿が見えなかったのはそういう事か。

 

「じゃあ、そっちへ移動するか」

 そう言って建物の外を回って再び地下への階段があった場所へと移動すると、

「トッラー。来たトラよー」

 というオトラサマーの声と共に涼太と悠花の姿が見えてきた。

 

 更にその近くに、青白い人の形をした何かが浮いていた。

 ……いや、『何か』じゃないな。あれは例の魂か。

 

「随分と人の形をしていますね」

 俺が言うよりも先に舞奈がそう口にする。

 するとそれに対し、

「消えかけていた魂をどうにか繋ぎ止めたら、急にあの場所の術式が反応したのです。そして、こういう形になり始めたのです」

「特に邪な感じはしなかったから放っておいたんだけど、ここまで変化した所で止まってしまったんだ」

 と、そんな風に説明してくる悠花と涼太。

 

「あの術式は、あの人形に取り込まれていた魂を復元するものだったのでしょうか?」

「でも、そうだとしたら離れすぎているような気がするわ」

 紡の言葉を聞いたかりんが、腕を組みながらそう返す。

 それに対して紡は、顎に手を当てながら、

「たしかにそうですね……。それに、異空間から通常空間へと移動していますし……」

 と言って考え込む。

 

「そうだな。色々と良く分からない事が多すぎる。その魂を会話が可能なように出来れば、諸々の情報が得られそうだが……」

「ここまで悠花ちゃんたちと一緒に移動してきているという事は、意思の疎通は出来るという事なんですか?」

 俺の発言に続き、舞奈がそんなもっともな疑問を口にした。

 

「なんとも言い難いのです」

「トッララー。こちらの動きに合わせて、ついてくる感じだったでありますトォラァ」

 悠花とオトラサマーがそんな風に言ってくる。

 

「うーん……。こちらの意思は伝わるが、こちらに何かを伝えるのは難しい……と言った所でしょうか。まあ、それでもこちらに何かを伝えようとしていそうだという事は分かりますが」

「そうなると、どうやって伝えさせるか……よね。またホムンクルスの出番かしら?」

 舞奈に続いてかりんがそんな風に言う。

 

「そうなるな……。まあ、元の姿が良く分からないから、仮の姿になってしまいそうではあるが……」

 俺がそう返すと、魂がこちらに近づいてきた。

 それでも問題はないという事を伝えたいのだろうか?

 

「なら、一度ゲートを開いて話を付けてくるか。まあ、こっちの探索もあとは地下を少し調べて一旦引き上げるつもりではあるけどな」

 そんな風に言うと、魂が離れていった。……ん?

 

「どうやら、話を付けるのは地下を調べた後でも問題ないと言いたいようですね」

 舞奈がそんな推測を口にすると、魂は舞奈の方へ少しだけ移動した。

 なるほど、そういう意味か。うーん……

「なら、このまま先に地下――階段の先を調べに行くとしよう」

 俺はそんな風に皆に告げた。

長かった探索も、ようやくあと地下のみとなりました……


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、4月19日(土)の想定です!

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