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第144話 人形と壁

「……まあ、こういう時は桜満に頼るしかないな」

 あまり頼りまくるのも気が引けるが、ここは仕方がないので、ため息混じりにそんな風に呟く。

 するとそれに対し、

「そ、そうですね……。この数を私たちだけでどうにかするのはさすがに……」

 と、そんな風に言って首を横に振る紡。

 

「あとで回収して貰うとして……正面の棚にある市松人形はどうしましょう?」

「まあ、とりあえず端に置いておくしかないんじゃないか?」

 舞奈の問いかけに対して俺がそう答えると、

「じゃあ、ささっと移動させちゃおうー」

 と言って、早速人形を移動させ始めるセラ。

 

「ブッルブッルー。ブルルンも移動させるブッルよー」

 セラに続くようにしてブルルンも念動で移動させ始め、そこに無言でかりんと紡も続く。当然、俺もだ。

 

「そ、そうですね。では、そーっと……」

 舞奈はそんな事を呟きながら、人形をそっと持ち上げてゆっくりと移動させていく。

 ただし、人形の方を見ないようにしながら。

 

 ……余程、髪の毛が伸びるのが恐ろしかったんだろうか?

 

 なんて事を思いながら、人形を移動していき……

 全ての人形を棚から移動し終え、ついでに棚もどかした所で、

「棚もどかしてみたけれど、壁の下の方に何かあったりはしないわね」

「壁は一見すると脆そうですが、まあ……異空間ですし、さっき言った通り簡単には壊せそうにないですね。……あ、でも、一応試してみましょうか。異空間でも『壊せるものはありました』し」

 なんて事を言うかりんと舞奈。

 

 あー……そう言えばそうだな。さっきは物理的に壊せないと思ったが……

「――言われてみると、たしかに壊せるものもあるにはあるな。地下の昇降機とか床とかは壊せたし。全てが物理的に破壊出来ないというわけじゃない……のか?」

 俺がそんな風に言うと、舞奈はそれに対して顎に手を当てながら、

「なんとなくですが……建物の外と中を隔てる壁――通常空間と異空間とを隔てている壁や重なる位置にある壁、それから扉や魔法の力が働いている壁などは壊せないですが、通常空間と重なる位置にない壁や、そもそも通常空間と重なりようがない領域の壁は壊せそうな気がするんですよね」

 と、そう返してくる。

 

「なるほど……。通常空間と重なりようがない……か。たしかに地下なんかは、通常空間には存在しないと考えて良さそうな気がするな。……地下にあった更に下へと続く階段が『通常空間』と『異空間』を切り替える階段じゃなければ、だが」

「そうねぇ……。昇降機の所にあった地上への階段の方は、通常空間へ出るためのもののような気がするけれど、下へ続いていたあの階段はたしかに良く分からないわね……。2階と3階を繋ぐ階段のように、普通の階段とは違う『何か』によって、切り替えから除外されている可能性もあるし……」

 俺の発言に続くようにして、腕を組みながらそんな風に言ってくるかりん。

 

「まあ、舞奈がそう思うのであれば、『その通り』な気もするけどねー」

 セラが口にしたその言葉に『たしかに』とばかりに皆が頷く。

 すると舞奈は、少し顔を赤らめて、

「いえ、その……まだ『なんとなく』の段階なので、違う可能性もあるというか……。と、とにかく壊せるか試してみますねっ!」

 と、言って壁へと移動。

「せぇいっ!」

 なんていう掛け声と共に壁を勢いよく蹴りつけた。

 

 直後、ドンッという重い衝撃音が響いたものの、壁は壊れなかった。

 

「ブルゥ。壊れないブルねー」

「うん、壊れないねー」

 ブルルンとセラがそんな風に言うと、

「……分析と推測が間違っていたようですね」

 と、そう言ってくる舞奈。

 

「いえ、そうでもないようですよ」

 紡がそんな風に言うと、舞奈はその言葉の意味が分からず、首を傾げながら問いかける。

「え? どういう事ですか?」

 

「舞奈さんの足元、良く見ると少しだけ『欠けて』います。先程の一撃で生じたものかと」

「あ、本当です!」

 紡の指摘に舞奈が足元の所を確認すると、たしかに壁が僅かに欠けていた。

 

「でも、結構な強さで蹴ったつもりなんですが……これだけというのは……」

「……かなり頑丈な壁のようね」

 舞奈に対してそう言って肩をすくめてみせるかりん。

 

「昇降機の時みたいに、紡さんの障壁をぶつけたら壊れたりしませんかね……?」

「さすがにこれは無理だと思います……」

 舞奈の疑問に対し、紡がそんなもっともな返事をする。

 そしてそう返された舞奈は、

「だとすると……」

 と言いながら、俺の方を見てきた。

 

「――小規模の爆発を起こす魔法とかでもいいが、まずは斬れるか試してみるか」

 そんな風に言いながら俺は壁――舞奈の横へと歩み寄りながら、魔法剣を生成する。

 そして、そのまま魔法剣を突き入れた。

 

 すると魔法剣は何の抵抗もなく、するりと、そして深々と突き刺さった。

 

「……簡単に突き抜けたな……」

 俺はそんな風に呟きながら、そのまま魔法剣をスライドさせてみる。

 すると、それもまた同じように何の抵抗もなく動いた。

 そこで、

「さっすがぁぁー!」

 と、セラがそんな風に褒めてくる。

 ……その言い回し、気に入ったんだろうか?

 

「そのまま円形か四角形かに斬ってしまえばよさそうですね。最後に蹴るのは任せてください!」

 そんな風に言ってくる舞奈に対して、ちょっとだけやれやれと思いつつ、

「……ああ、うん、そうだな……」

 とだけ答える俺。

 

 円形だと通り抜けづらいので、四角形――正確に言うと少し長方形――に斬り、最後は舞奈に蹴り飛ばして貰……おうと思ったが、そこまで分厚い壁ではなかったからなんなのか、魔法剣で壁に切れ込みを入れ終えた瞬間、切れ込みの内側が、ガラガラと音と立てながら自然崩壊した。

 

「ブルルゥー。硬いんだか脆いんだか良く分からない壁ブルねー」

「そうね。こうもあっさりと崩れるとは思わなかったわ」

 ブルルンとかりんが、そんな風に言ってくる。

 そしてそれに続くようにして、

「……ぐむぅ。まさかこんなに硬くて脆いとは……。残念です……」

 などと、少し悔しそうな表情で呟く舞奈。

 

 いや、硬くて脆いって……

 というか、残念ってなんだ……。そんなに蹴りたかったのか……?

壁の向こうについてまで書く想定だったのですが、思ったよりも長くなってしまったので、一旦ここで区切りました……


とまあ、そんなこんなでまた次回!

そして、その次回の更新なのですが……すいません、諸々の都合により前回記載した通り、2日程いつもより遅くなりまして……3月31日(月)の予定となります。

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