表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
489/503

第142話 術式と呪符と灰と

 舞奈の発言に対してやれやれと思っていると、「それで……」と言いながら俺の方を見てくる舞奈。

 そしてそのまま、

「ギリギリあの市松人形が倒れない程度に抑えたのは、隷属されている魂をどうにかするつもりだからですか?」

 と、そんな風に問いかけてきた。

 ああ、さすがに威力を抑えた事はわかっていたか。

 

「どうにか出来るかどうかはやってみないとわからないが、今までこういうのは何度もやってきているからな。多分大丈夫だろう」

「たしかにこれが初めてというわけではないですね、もう」

 俺の返答に頷きながらそう舞奈が言うと、それに続くようにして、

「ブッル。魂とか霊体とかを拘束から解放するのはもう慣れたものブルよー」

 と、ブルルンもそんな事を言ってきた。

 

「ま、そういう事だ」

 俺はそう口にしつつ、人形の方を向く。

 そしてそのまま、

「というわけで……ブルルン、やってみるとしよう」

 と言いながら人形を中心として魔法陣を展開する。

 

「ブッルルー。丁度良さそうな術式を展開するブッルねー」

 ブルルンはそんな風に言うと、クルクルッとその場で回転して言い放つ。

「ブッルブッルゥ! こんな感じブッルルー!」

 

 文字と図形が複数描かれている七角形の『紋章』が魔法陣の上に展開され、それが少しずつ左回転しながら、上昇しつつ分裂していく。

 

 幾重にも折り重なった七角形の紋章の中に人形が取り込まれ――

「な……こ……っ!?」

 なにやら人形が言葉を発するが、ほとんど言葉になっておらず良く分からない。

 

 そうこうしている内に分裂が止まり、

「ブッルブルー。ご主人ー、上を閉じるブッルー」

 と、ブルルンが言ってきた。

 それに対して俺は、

「なるほど、こういう構造か」

 と返しつつ、一番上の七角形の紋章のさらに上に魔法陣を展開する。

 

 直後、ふたつの魔法陣に挟まれる形となった七角形の紋章群が淡い紫色の光を発し、それと同時に、紋章同士がその淡い紫色の光の帯によって連結され始める。

 

「ブッルブルー。ご主人ー、このまま術式を構築していってもいいブルけど、かりんの呪符を使った方が早いブッルよねー?」

 ブルルンが身体の上半分を横に倒しながら問いかけてくる。

 ちなみに、問いかけてきているのは俺だが、顔はかりんの方を向いていたりする。

 そんなブルルンに対し、

「そうだな。例によってかりんの出番だな」

 と返事をしつつ、俺もかりんの方を見る。

 

「例によってって……。まあそうね。いつもの事ね……」

 ため息混じりにそう言って、やれやれと首を横に振るかりん。

 そしてそのまま、

「で、何をすればいいのかしら? ……いえ、言わなくても分かったわ。呪符を連ねて剣にして斬ればいいのね?」

 と言いながら、呪符を宙に浮かせて連結していくかりん。

 まあ、あからさまに淡い紫色の光の帯が縦方向に一直線に伸びているしな……

 

「ブッルー。さっすがー、かりん様は話がわかるーブルッ!」

「どこかで聞いたわね、それ……」

 唐突なブルルンの一言に首を傾げるかりん。

 するとそれに対し、

「なんだっけ? 島が舞台のタクティクス系のSLGじゃなかったっけ? この間、舞奈がやってたよねー?」

 と、そんな風に返すセラ。

 

「あ、ああー……」

 という舞奈の納得に続いて、

「ああなるほど……。それでそのセリフがブルルンから飛び出したってわけね」

 同じく納得したらしいかりんがそう口にする。

 そしてそれに対して、

「ブルルゥー。なんだか面白いやり取りだったブルッ!」

 なんて答えるブルルン。

 

 するとそこで再びセラが、

「まあ、あのセリフの意味というかー、あのシーンのやり取りがどういう描写なのか良くわからないんだけどねー」

 なんて事を言った。

 それに対して、

「あー……、あれはですね……まあ、その……描写の意味はまだ知らなくていいと思います。はい」

「ま、まあ、セリフだけならどうとでも取れるので……」

 そう紡と舞奈がちょっと困惑気味に言うと、セラはふたりのその反応も良くわからなかったようで、首を傾げた。

 

 ……ああ、なんとなく理解したぞ。

 別の世界にある大きな島での民族紛争を描いたなかなか生々しい描写の多いあれか……

 

 ……そう言えば向こうの世界でも、魔王の軍勢に対抗しないといけないって時に、人間同士で権利を主張し合って、似たような事やってたよなぁ……

 まあ、そいつらは魔王の軍勢に飲まれて消えたけどな。当たり前だとしか言いようがないけど。

 

 なんて事を考えている間に、おなじみの呪符の剣――と言っても、使われている呪符は違うらしい――が完成し、

「はいはい、それじゃ魂を冒涜したネクロマンサー……じゃなくて、人形を滅するわよ」

 なんて事を言って剣を構えるかりん。

 

「中身はネクロマンサーな気もしますけどね」

「たしかにそう……ねっ!」

 かりんが舞奈に対して、そう返答しながら呪符の剣を振り下ろす。

 

 赤黒い斬撃が縦一文字に煌めき、そのまま人形を一刀両断。

 と、その直後、音もなく灰に変わっていく人形。

 

「灰に……なった?」

 そんな事を口にしてきたかりんに、

「どうやら既に半分以上、人形とは別の何かになりかけていたみたいだな。いや、あるいは最初からそうだったのか……?」

 と、そう答える俺。

 するとさらにそれに続くようにして、

「ブッルブルゥー。そこは良くわからないブッルけど、とりあえず拘束していた魂は解放されたみたいブルよー」

 なんて言いながら、前足をビシッと突き出した。

 

 すると、つい先程まで人形が浮いていた場所から、上の魔法陣に向かって伸びる淡い青色の光柱があった。

 そして、その光柱の中を『何か』が昇っていくのを感じた。

 

 いや……『何か』じゃないな。ブルルンが言った通り、これは『魂』か。

 

 そう思った所で、『魂』の昇っていくのは感じ取れていないらしい舞奈が、

「いまいち良くわかりませんが、この光柱は上手くいった……という事でいいのですか?」

 という、ある意味もっともな疑問を投げかけてくる。

 それに対して俺は、

「ああ。上手くいったようだ。もっとも……全て『昇天』してしまいそうな感じではあるけど……な」

 と、そんな風に返事をした――

かりんの呪符の剣、「いつもの」と言ってますが、なにげに結構ひさしぶりな気がしますね……


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、3月22日(土)の想定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ