表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
488/503

第141話 余裕ありまくりな面々

「捧血の呪印が砕けている女以外は、捧血の呪印を刻めるようなものではない、か。その肉体を滅し、魂を隷属させるしか使い道はなさそうだ。このようにな」

 人形がそんな事を言った直後、人形ではなくマネキンが動き出した。

 

 マネキンはいつの間にか斧や槍を手にしており、それを構えながらジリジリとこちらへと近づいてくる。

 

「……動きがまるで人間そのものね。つまり――」

「――誰かの人間の魂を束縛して行使している……というわけだな。ある意味、リビングアーマーに近い存在だな。まあ……あっちは『憑依』であって、魂を束縛して込めているわけではないが」

 かりんの言葉を引き継ぐようにしてそう言葉を紡ぐ俺。

 

「魂を束縛というと、ミイちゃんを思い出しますね」

「石杜姉妹もそんな感じよね」

 そんな風に言ってくる紡とかりん。

 それに対して俺は、

「……根幹は同じ術式なのかもしれないな。なんせ、『全て』同じ術者が関わっていそうな感じだし」

 と返事をし、肩をすくめてみせる。

 

「随分と余裕ではないか」

 などと人形が言ってくるが、実際余裕だったりするわけで……

 

「はい。余裕です」

 なんて事をわざわざ言いながら、話をしている間にしれっとマネキンの後方へと回り込んでいた舞奈が、マネキンを蹴り飛ばして粉砕する。

 と、そこで同時にマネキンから何かが抜け出て人形に戻っていくような、そんな『流れ』を感じた。

 

 うん? なんだ……?

 

 と思っていると、

「ブッルゥ。霊的な塊……圧縮された霊体……ブル? ブルルンにはちょっと表現が難しいものが霊的な鎖に引っ張られて飛んでいったブルゥ」

 そう告げてくるブルルン。

 

「……それはおそらく『隷属された魂』だろう。隷属というだけあって、何度でも行使出来るというわけか。屍霊術よりもタチが悪いな」

「も、もしかして、壊さない方が良かったんですかね……?」

 俺の発言に続くようにして、そう問いかけてくる舞奈。

 それに対して俺は、

「いや、全部壊して構わないぞ。むしろ『こういう形』ならば、壊してしまった方がいい」

 と答える。

 

「では、このまま続けて!」

 なんて言いながら、舞奈が次のマネキンに向かって接近する。

 

 マネキンはそれに反応し、舞奈に対して槍を突き出す。

 が、舞奈は急加速でそれを回避し、一瞬にしてマネキンの後ろへと回り込んだ。

 そして「遅いです」と一言。

 

「こういう場面で、これを言ってみたかったんですよねぇ」

 なんて事を続けて言いながら、その場から離れる舞奈。

 直後、マネキンが爆発して砕け散った。

 

「……今の、なんで爆発するのぉ?」

 という、もっともな疑問をセラが呟くように口にすると、

「爆発する呪符を貼り付けたみたいね。ほら、この間作ったアレよ」

 と答えるかりん。

 

「ああー、なんか舞奈がもっと派手な呪符が欲しいですとか言って、爆発する呪符を作ったんだっけー?」

「ええ、その通りよ」

 かりんがセラに対して頷きながらそう返す。

 

「……ああ、そう言えばそんな事していたな。舞奈に対してゲームじゃないんだから……とか返していた気がするが、結局上手くいったのか?」

「……発火系の呪符と電光系の呪符の術式を、舞奈が『分析』して、その分析からの推測で組み合わせたら出来てしまったのよ」

 俺の問いかけに対し、かりんはそんな風に答えて肩をすくめてみせた。

 

「ああ……なるほど……」

 まあ、あれだ。舞奈、恐るべし……としか言いようがないという話だな、うん。

 

「――ともあれ、あんな感じで楽勝なわけだ」

 人形の方を向いてそんな風に告げると、

「ぐぬぬ……。舐めた真似を……っ!」

 と、怒りの声を発する人形。

 それを見てセラが、

「ぐぬぬって始めて聞いたー。しかも顔もそれっぽいー」

 なんて事を言った。

 

 『顔もそれっぽい』とは一体どういう事だ……と思ったが、なんとなくそれを聞くのはやめておいた方が良さそうな気がしてきたので、やめておく。

 

「ええいっ、ならばこうだ!」

 人形がそう言い放った直後、今までカタカタと揺れているだけだった全ての人形が一斉に宙に浮かび上がった。

 

 それを見て、

「あ、なんだか危険そうです」

 と言いながら、俺たちの方へと素早く戻ってくる舞奈。

 

 そしてその直後、針やら鋏やらナイフやら、色々な『凶器』がこれまた一斉に飛んできた。

 だが、その程度では無意味すぎる。

 

 俺たちを囲むように展開された障壁に激突し、全て床に落ちていく。

 髪の毛を硬化させて鞭のように振るってきた人形もいたが、それも弾き返された。

 

「このくらいなら問題ありませんね」

 と、そんな風に言う紡。

 

「ああそうだな。このくらいなら問題ないな」

 俺は敢えてそう返しつつ、手のひらの上に出現させた魔法球を握り潰す。

 刹那、手のひらを起点に障壁の外へと向かって青い電撃が放たれ――

 

「ぐがああぁぁぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁっっ!?」

 青い電撃が部屋全体に広がるようにしてほとばしり、苦悶の叫びを発する人形。

 そして、

「え? ええっ!? な、なんですかっ!? これっ!」

 同時に舞奈の方も驚きの叫びを発した。

 そしてそれに、

「さっすがぁーっ!」

「ブルッ。セラの『さっすがー』が、今までで一番大きいブッルねー」

 なんて感じで、セラとブルルンが続く。

 まあ、こっちは驚きではないが。

 

 目の前の喋る人形を除いて、全ての人形が床に落下し、残っていたマネキンも全てその場に倒れて動かなくなったのを確認しつつ、

「ブルルンが『部屋自体が霊力で出来た蜘蛛の巣みたいになっている』と言っていただろう? せっかくそんな『良い感じのものがあるのなら、それを使わない手はない』からな。その『蜘蛛の巣』に電撃を流したんだ」

 と、説明する俺。

 するとそれに対して、

「サラッととんでもない事を言いますね!? 何をどうやったらそんな事が出来るんですかっ!?」

「ま、まあ、さすがは透真さんという感じでもありますが……。術式の構成が最早想像もつきませんね……」

 更に驚く舞奈と、頬を掻きながら若干呆れ気味の紡。

 

「でもまあ、この程度でどうこう出来ると思っている方がおかしいのよね。こちらの力量を判断出来ていなさすぎというものよ。……まあ、人形に憑依した何かにそれを求めるのもあれだろうけれど」

「たしかにその通りですね。最初は驚かされましたけど、動いて喋ってきたのが、あの市松人形1体だけだった時点で、脅威度は低いと分析出来ましたし、あれこれ喋ってきた時点で更に脅威度は下がりましたからね。脅威度はゴブリン未満です。ゴブリン未満」

 かりんに対してそんな風に返しながら、まだかろうじて浮いている人形へと視線を向ける舞奈。

 

 いや、ゴブリン未満って……。さすがにそこまでではないぞ……

 少なくともゴブリンよりは強いし、奴らの王――ゴブリンキングよりも強……いや、そこまででもないか。

 なにしろ、向こうの世界でゴブリンキングを倒した時に使った魔法よりも、威力を弱めているしなぁ……今回。


 舞奈の発言を聞きながら、そんな事を考える俺だった――

ゴブリンにも強い奴もいますからね……。群れていないタイプのゴブリンとかもいますし。


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、3月19日(水)の想定です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ