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第136話 見えざるものは触れられざるもの

「どうやら、何かが目に見えない状態で置かれているみたいだな」

 俺がそこにあるであろう透明な何かへと視線を向けながらそう口にすると、かりんがそれに続くようにして、

「目に見えない……ねぇ。なんというか、もうこれは幻術というよりは『隠形』ね」

 なんて事を言ってきた。

 

「たしかにそうですね。ここまで来ると、最早古都のあれこれとここが無関係だと言う方が難しいですね」

 かりんに頷きつつ、そんな事を呟くように言う舞奈。

 それに対してかりんが、

「まったくもってその通りねぇ。とりあえず、ここにある何かを暴いてみましょうか。これで解除出来るかどうか、ちょっと怪しいけれど」

 と言って呪符を取り出す。

 

 そして、呪符を見えない何かに貼り付け……

「……?」

 ようとして、首を傾げるかりん。

 

「どうかしたんですか?」

 という舞奈の問いかけに、

「……何もないんだけど」

 と、返しながらセラがぶつかったあたりに手を伸ばすかりん。

 

「あれぇ?」

 セラもまた、わけがわからないといった表情で小首を傾げる。

 そして、かりんと同じく手を伸ばしながら――

「さっきはここにあった……って、触れるよ?」

 と言った。

 

 かりんの手は何も触れておらず、セラの手は何かに触れている。

 そんな感じだ。

 

「どうなっているんでしょう?」

「わからん……。ちょっと試してみるか」

 不思議そうに言う紡に対してそう返し、俺もまた見えない何かがあるらしい場所に手を伸ばす。

 すると、かりんと同じくすり抜けた。

「……何もないな」

 

「ええー? ブルルーン!」

「ブルッ。触れてみればいいブルね?」

 セラがブルルンを呼ぶと、ブルルンは言われずとも分かっているとばかりにそう返して、何かあるらしい場所に前足を伸ば……いや、ブルルンの足は伸びないから伸ばすというのはおかしいな。前足をピトッと接触させる。

 ……って、接触した!?

 

「ブッルー。ブルルンも触れるブルー」

 ブルルンのそんな言葉に、舞奈と紡もやってきて見えない何かに手を伸ばす。

 しかし、結局触れられたのはセラとブルルンだけだった。

 

「これ……普通でしたら、ここに何かある事自体、気づかれませんね……」

「そうだな。セラがぶつからなければ俺たちも存在ごと気づかなかったな」

 紡に対してそう俺が返した所で、

「触れるのが私とブルルンだけなら、そのおふだ、私が貼るよー」

 と、言いながらかりんに向かって手を伸ばすセラ。

 

「そうね、お願いするわ」

「任せてー」

 かりんから呪符を受け取ったセラが見えない何かに呪符を貼る。

 触れられない俺たちからすると、まるで浮いているかのようだ。

 

 と、そんな事を思った直後、呪符の中心に黒い染みのようなものが現れた。

 ……うん?

 

「え?」

 想定外だったらしいかりんの声と共に、黒い染みは呪符全体へと一気に広がり始め、そして完全に真っ黒くなった直後、呪符はまるで溶けていくかの如くボロボロになって消えていった。

 

「ブッルゥ。邪悪な魔力が透明な何かから呪符へと侵食したみたいだったブルー」

「邪悪な魔力、侵食……。どうやら、呪返し……のようなものが纏われているようね、これ。明らかに幻術の類――例のすり抜ける壁とは一線を画す代物だわ」

 ブルルンの言葉を聞いたかりんがそんな風に言うと、

「呪返し、ですか。ここまでそのようなものはなかった気がします」

 と、顎に手を当てながら言う紡。

 

「つまり、すり抜ける壁のように簡単に暴かれたくない何かが、ここにはあるという事ですね」

「そういう事になるな」

 舞奈に対してそう返事をした後、俺は思考を巡らせながら言葉を続ける。

「しかし、ブルルンの発言からすると、セラとブルルンにだけ触れられる何かは『術式としては二重層……あるいは、三重層になっているようだな」

 

「二重層、あるいは三重層……ですか?」

「セラが呪符を貼った場所よりさらに内側から邪悪な魔力――呪符を破壊する呪いが放たれたのだろう。となると、セラが呪符を貼ったのはその外側の面だ。しかし、その前に俺たちには触れられず、セラとブルルンだけが触れられる『さらに外側の面』があるだろ? 内側、外側、さらにその外側で合計三層だ。あるいは、一番内側にある『モノ』の外殻――フレームやカバーのようなものと、それを守る壁の二層だな」

 首を傾げる紡に対してそんな風に説明する俺。

 ……今ので伝わっただろうか? と思っていると、

「なるほど……。セラちゃんが呪符を貼った所は二層目、あるいはふたつの術式の間にあるフレームやカバーのようなところだった……という事ですね」

 と、そんな風に紡が言ってきた。どうやら伝わったようだ。

 

「ああ、その通りだ。そしてその一番外側さえ破れば、ここに何があるのかわかるはずだ」

「でも、どうやって破ればいいのでしょう……?」

 そう返してくる紡に対して俺は微笑しつつ、

「そこで紡の障壁の出番だ」

 と、告げる。

 

「え? 私の障壁ですか?」

「ああ。昇降機を破壊したあれだ。この触れられなくしている何かも、セラとブルルンが突破出来たことを考えると、一種の障壁なのだろう。障壁同士が激突すれば、弱い方の障壁は砕け散る」

「ここにある障壁の方が強かったら押し負ける可能性がありますが……」

「紡の障壁なら押し負ける事はまずないと思うが、もし押し負けたらその時はその時だ。少々強力な魔法で破壊する」

「そっちの方が確実なのでは?」

「いや、強引すぎて逆に『全て』壊しかねない」

 自信なさげな紡に対して、肩をすくめながらそう返す俺。

 

 ……確実性で言ったら、正直、紡の障壁で破壊する方が確実だ。

 なにしろあんな手段、向こうの世界の障壁使いにも出来ないからな。

 障壁の強度が足りないなどという事は、まずありえない。

 

 そんな風に心の中で呟いていると、

「わかりました。とりあえずやるだけやってみます」

 と言って、障壁を展開し始める紡。

 そして、「はっ!」という掛け声と共に障壁を放った。

 

 するとすぐに、バチィッ! というスパーク音と共に障壁が『何か』に激突した。

 

「っ! ぶつかりました! このまま押し込みます!」

 紡がそう言って手を伸ばす。

 すると、パキィィィンッ! という甲高い破砕音と共に障壁――正確に言うなら、普通の人間には触れられなくなる術式――が砕け散った。

 

「あ、あれ?」

 想定外だったのか、そんな声を発する紡。

 それに対して「随分とあっさりですね」と舞奈。

 

「ちょっと力を込めただけなんですが……。思ったよりも脆かったですね……」

 などと紡は言うが、単純に紡の障壁の強度が高すぎただけだったりする。

 

 と、それはそれとして……だ。

 厄介な術式によって隠されていたものはというと――

すいません……

急な用事で途中までしか出来ていなかった為、更新が遅くなりました……

急いで残りを書き上げて、どうにか日が変わる前に更新する事は出来ましたが……


とまあ、そんな所でまた次回!

次も予定通りとなります、3月1日(土)の想定です!


……想定です。

今度こそいつもの時間に更新したいと思います……

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