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第134話 箱と鍵と廊下と

 舞奈に対してやれやれと思っている間に、紡はパズルを解き終わり、箱の蓋に手をかける所だった。

 そしてそのまま蓋をあけ――

「あ、鍵が入っていました!」

 と、そう告げてくる。

 

「なんというかこう……大きさも見た目も、いかにも『扉の鍵』って感じですね」

 なんて事を舞奈が口にした通り、紡が箱から取り出した鍵は、紋章のような装飾のついた金の鍵だった。

 まあ、金と言っても銀や銅の類が含まれているらしく、黒ずんでおり、金らしい輝きは失われているが。

 

 しかし……向こうの世界では良く見る形状の鍵だが、こっちでは最早アンティークと化していて、普通に見る事はまずないよなぁ……

 と、そんな事を思いつつ木製の扉へと歩み寄り、

「とりあえず、それでこいつが開くか試してみるか」

 と言いながら扉をノックする。

 もし開かなかったら、探し直さないといけないしな……

 

「はい。早速、試してみます」

 紡はそう言うと、箱を持ってこちらへと歩み寄ってくる。

 いや、その箱はもういらないと思うが……

 

「ブッルブッルゥ。箱はもういらないと思うブルよー。というのも、もう箱からは力を感じなくなったブッル。正確には紡が蓋を開けた時点で消滅したブッルル」

 ブルルンがそんな風に告げると、紡は、

「そ、そうなんですね」

 と言って箱を近くの作業台に置き、鍵だけ取り出した。

 するとそこで、

「では、この箱は壊しておきますね」

 なんて事を紡と一緒にやってきた舞奈が言う。

 

「ブル? 壊す必要まではないブッルよ?」

「パズル、怖い、壊す」

 身体の上半分を傾けながら問うブルルンに対し、そんなカタコトな返事をする舞奈。

 ……むしろ、舞奈の顔の方が怖い気がするが、そこは口にしない。

 

「パズルは怖くないよー?」」

 というセラの言葉に続くようにして、かりんが、

「あのゲームがトラウマみたいねぇ……」

 などとため息混じりに返しながら、箱をサッと横から回収。

 そのまま、

「なにかで必要になるかもしれないし、蓋は開けたままで元の場所に戻しておくわよ」

 という言葉を続けて紡いだ。

 

 その一連の動きを見ていた紡が、ハッとなって、

「え、えーっと……。とりあえず鍵を挿し込みますね?」

 と、頬を人差し指で掻きながらそう口にした。

 

「おっと、そうだな、頼む」

 そう俺が返事をすると、紡はドアノブの下にある鍵穴へと鍵を挿し込んだ。

 そして、その鍵は引っかかる事なく奥まで入り――

「あ、いけそうですね」

 紡がそう言いながら鍵を回した直後、カチャンという音が響いた。

 

「開いたー!」

「これで先へ進めるわね」

 セラは笑みを、かりんは安堵の表情をそれぞれ浮かべながら、そう言ってくる。

 

 そして、その声を聞きながら紡がドアを開けると、そこは廊下になっていた。

 ……だが、何やら妙な魔力を感じるな。

 2階の廊下に似ているが、より凶悪というかなんというか……

 

 いや、考えるよりも試した方が早いか。

 俺はそう判断し、球体状にした魔力の塊を廊下に向かって放り投げてみる。

 

 ……しかし、特に何も起きる事なく、球体状の魔力の塊は飛び続けていく。

 とはいえ、これで何もないと判断するのは危険だ。

 

「舞奈、2階にあった鉄球を持ったままだったよな? ちょっと貸してくれ」

「え? あ、はい」

 唐突に言われたからか、一瞬理解が追いつかなかったようだが、すぐに理解し、俺に鉄球を手渡してくる舞奈。

 俺は礼を述べつつそれを受け取ると、早速、転がしてみる。

 

 鉄球はゴロゴロと廊下を転がっていき――

 ――少し進んだ所で、小さな魔法陣が出現した。

 しかも魔法陣はひとつではなく複数……いや、多数設置されているらしく、鉄球が転がっていく度に次々と出現していく。

 

 一体どういう魔法だ? と思ったその直後、キュィィンッ! という甲高い音が次々に鳴り響き、魔法陣から天井に向かって、魔法の矢……いや、魔法の短槍が放たれていった。

 ……なるほど、こういう代物か。

 

「なんか、急に遺跡にありそうな仕掛けが出てきたな……」

「たしかに……。しかも転移のトラップと違って、殺意を感じます」

 俺の呟きに対し、舞奈がそんな風に返してくる。

 そしてそのまま転がっていく鉄球へと視線を向けつつ、

「まあ、あの鉄球が転がる速度と同じ速度で走り続ければ大丈夫そうですが」

 と、言った。

 

「鉄球の転がる速度で走り続けるって簡単に言うけど、なかなか厳しいわよ……。あれ、結構早いし……」

「というか、障壁を展開してその上を歩いていけばいいだけでは……。どうやら床に触れない限りは発動しないようですし」

 鉄球の方を見ながら呆れ気味に言うかりんと、それに続いて堅実な別案を口にする紡。

 

「たしかにそれでもいいと思うが、それだと手間だし大変だから、ここは再び飛翔魔法を使って移動してしまおう。その上で障壁を周囲に展開しておけば、他にトラップがあっても安心だ」

「目に見える範囲の罠は『下』――床だけですが、この先には『横』……つまり、壁にも罠があるかもしれませんしね。いえ、下手したら『上』にもあるかもしれません」

 俺に続いて舞奈がそう告げると、

「なるほど、たしかにそうですね。では、周囲に障壁を展開します」

 と返しつつ、ドア付近に集まっている俺たち全員を包み込むような障壁を展開する紡。

 

「こんな感じでしょうか? こちらの移動に合わせて障壁も動くようにしているので、若干薄いですが……」

 という紡の問いに対し、俺は周囲……というか障壁を見回し、「ああ、十分だ」と答えた。

 

 ……紡は『若干薄い』と言ったが、今さっき見た魔法の短槍が1000本飛んできても破られないぞ、これ……

 

 なんて事を考えながら飛翔魔法を発動し、

「それじゃ、ササッと移動してしまうとするか」

 と告げる俺。

 するとその直後、紡が、

「鍵はどうしましょうか?」

 という問いの言葉を投げかけてきた。

 

 あー……鍵か……

「そうだな……。鍵は念の為、持っていくとするか」

「わかりました」

 俺の返答に頷き、鍵をそのまま服のボタン付きポケットへとしまい込む紡。

 

 なるほど、そこなら落とす事もないな。

 なんて事を思いつつ、改めて「それじゃ行くぞ」と皆に告げ、飛翔魔法で廊下を飛んでいく事しばし……

 ふたつの甲高い音が響き渡った。

 

 ひとつは魔法の短槍が打ち出される音。

 もうひとつは、障壁にそれが当たって弾け飛ぶ音。

 

 そう……。舞奈が言った通り、横――壁に仕掛けられていた魔法陣から、魔法の短槍が飛んできたのだ。

 

「ホントに横にもトラップ魔法陣があったー」

「障壁を展開しておいて正解だったわね」

 セラとかりんがそんな風に言い、それに続くようにして、

「まあ、この程度なら1000本は余裕で防げそうです。……けど、あれは何に反応して発動しているのでしょう?」

 なんて事を口にする紡。

 

「ブッルルー。魔法とは違う、目に見えない細い光線が無数に張り巡らされているブル。これに触れると発動するみたいブッルね」

「あ、なるほど。スパイ映画とかに出てくるゴーグルを装着しないと見えないアレですね」

 ブルルンの説明に対して、納得の表情でそう返す紡。

 どうやら、ブルルンの視覚では光線が見えるようだ。

 

「赤外線レーザーのようなものまで捉えられるなんて便利ですね」

「魔法の眼はそういうものも認識出来るみたいだ。俺も初めて知ったな」

 舞奈の問いかけに対し、そう答える俺。

 なんせ、向こうの世界に赤外線レーザーなんてものはなかったからな。

 

「でも、どうやってそのようなものを継続させているんでしょう……?」

「すり抜ける壁とかと同じなんじゃないかとは思うが……俺にも良く分からんな」

 ある意味、もっともな疑問を口にした紡に、俺はそんな風に答える。

 

 ――とまあ、そんな感じの会話をしている内に、強い力を感じられる場所の近くへと到達。

 そこにあった扉へとかりんが顔を向けながら、

「この扉の向こうから、霊力がどこからともなく集まってくるのを感じるわね」

 と、そんな事を言ってきた。

 

「そうだな。開けてみるとしよう」

 俺は扉付近にトラップ魔法陣がない事を確認すると、飛翔状態を解除。

 そのままドアノブに手をかけ、回してみる。

 すると、鍵などは特にかかっておらず、すんなりと扉が開いた。

 

「って、これは……」

 開いた扉の先にあった物……それは、天井から垂れる幾つもの鎖に繋がれ、浮かされている『石碑』だった。

申し訳ありません、投稿設定が1週間先になっていた事に気づきました……

というわけで、かなり遅くなってしまいましたが、手動で投稿しました。

更新設定ミスには十分気をつけたいと思います……


さて、そんなところでまた次回!

次の更新は、2月22日(土)の想定です!

……次回はいつもの時間に出したいと思います。

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