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第131話 昇降機とその上

「まあ……使う事もないし、壊してしまっていいかもしれないな」

 少し考えてから、俺はそんな風に言った。

 すると、

「そうしましょうそうしましょう。扉とかカギを探してくる暇があったら壊せばいいんです。特に木製の扉なんて蹴り飛ばせば壊れるんです。なんでカギが必要なんですか」

 なんて事を言ってくる舞奈。

 唐突に何を言い出してるんだ……? いや、なんとなくわかるけど。

 

「この間、カギを探して行ったり来たりグルグルしてたからねー」

「ブッル。パズルを解かないといけない場所にカギが隠されていたりしたブルねー」

 セラとブルルンがそんな風に言い、

「まったくです。あんなもの壊せば一瞬ではないですか」

 と、そう返す舞奈。

 ……いやまあ、それはその通りなんだが、そこに突っ込んではいけない気がするぞ……

 

「なんらかの力で扉が障壁みたいになっているのではないですか? まあ、もしそうだとしたら、カギですんなり解除されるのが今度は謎になりますが」

「紡も律儀に理由を考えて返さなくてもいいわよ……」

 紡の発言に対し、かりんが腰に手を当てながらため息混じりにそう返す。

 

「……まあ、とりあえずそっちの話は置いといて、あれを壊してしまおう」

 俺はそう言いながら、昇降機の真下へと移動する。

 するとそこで、

「普通に壊すだけだと破片が落下してきますよね? あるいは、あれが丸ごと。障壁を展開して破壊しますか?」

 と、そんな風に言ってくる紡。

 

「いや、完全に消し飛ばしてしまえば問題はないが……って、障壁で破壊?」

「はい。私も初めてやるのですが……まずこうして障壁を展開しまして……」

 首を傾げる俺に対してそう返しつつ、頭上に昇降機と同じくらいの大きさの障壁を展開する紡。

 そしてそのまま、「これを真上に……」と口にしつつ、手を障壁の方へと突き出す。

 

 すると次の瞬間、頭上に先に展開されていた障壁が一気に真上へと上昇。

 上で止まったままの昇降機――正確にはその台座――に激突。

 バキィッという破砕音と共に何かが引き千切れるような音がした。

 

「レールと連結されていた所が壊れたようですね。これで大丈夫でしょう」

 と言いながら、昇降機の台座を障壁の上に乗せたまま、引き戻し始める紡。

 

 それを見ていた舞奈が、

「い、いつの間にそんな使い方を覚えたんですか……?」

 などと、驚きながら問いかける。

 まあ、俺も舞奈と同じ気持ちだが。

 というかこれ、壊す――というか、圧壊するだけじゃなくて、何かを運ぶのにも使えるよな。

 

「覚えたというか……少し前に急に『出来そうな気』がしたんですよ。それで、どこかで『本当に出来るのか』試してみたかったんです。まあ、結果は『本当に出来た』ですね」

 そんな風に説明してくる紡。

 それに対して舞奈が、

「急に……ですか。レベルアップみたいなものなんですかね?」

 という問いの言葉を、誰にともなく投げかけた。

 

「うーん……。たしかに近いかもしれませんね」

 紡が顎に手を当てて呟いた所で、壊れた台座が乗っかった状態の障壁が降下してくる。

 そして、それを見て「……? 何か台座の上にありますね……」と、呟いた。

 

 台座の上……? と思っていると、

「あれって石っぽくないー? 変な形だけどー」

「ブルゥ。たしかに石ブルね。円形の平たい石と四角錐の石ブッル」

 セラに続いてブルルンがそんな風に言ってくる。

 

 ……たしかに、円形の平たい石と四角錐の石が台座の上に並べられているな……

 しかも、それぞれ結構な数だ。

 

「これ、見た事があります……よね?」

 そう言いながら腕を組み、小首を傾げる舞奈。

 その舞奈に対して、

「……そうだな。例の幽霊宿をあの場所に封じていた術式の根源――祠で見たな」

「台座の方は、前に行った温泉の近くの島でも見たわね」

 と、返す俺とかりん。

 

「ブッルルー。わずかに上の石碑に似た力を感じるブルけど、大した事はないブッル。多分、最初からこの石自体が持つ力だと思うブッルー」

「まあ、龍脈に働きかける力を持っているわけだし、そうでしょうね」

 ブルルンの言葉に対して、かりんがそんな風に言う。

 たしかにこの石には、そういう性質があるな。

 

「そうなると、あの石碑も龍脈の力を利用しているのでしょうか?」

「ブッル。あれからはそういうものは感じなかったブルー」

「そうだな。俺も何も感じなかった。涼太も悠花もオトラサマーも何も言わなかったし、あれは龍脈には繋がっていないと断言していいと思う」

 紡のもっともな疑問に対し、そう返すブルルンと俺。

 

「なるほど……。龍脈に働きかける力を持つ石を使っているのに、龍脈の力を利用しないというのは、少し妙な感じがするというか……使い方がもったいない気がしますね」

「これ単体でも霊力をそこそこ宿しているから、媒介として使ったんじゃないかしら? 今さっきブルルンが、『石碑に似た力を感じる』と言ったでしょ? 逆を言えば、あの石碑に、この石の霊力をベースにした術式が使われている……という事でもあるわけだし」

 かりんがそんな風に紡に答えた所で、俺はふと気づき、それを呟くように口にする。

「だが、この石……あの祠で感じた力よりも少し弱いな……」

 

「そうね……。なんというか、量産の為に一部を削って劣化させたかのような、そんな感じはするわね」

 かりんが石をじっと見つめながらそう言うと、

「要するに、量産型マジックストーン……ですか?」

 と、舞奈。

 

「ある意味、そういう事ね。というか……もしかしたら、普通の石に呪術を付与して作り出していたのかもしれないわね」

「あ、なるほどー。あれを使ったってわけだねー」

 かりんの言葉を聞いたセラが、納得した表情で俺たちが通ってきた通路の方へと視線を向ける。

 

「ついでに言えば……だけれど、血塗れの建材は、あれでコピーされたものなのかもしれないわねぇ……」

「たしかに建材はコピーすれば、大量の血はいりませんね。そしてその分の血を、術式を描くのに回す事が出来そうです」

 かりんのさらなる言葉に、今度は紡が得心がいったと言わんばかりの表情でそう返す。

 

「便利……というか、なかなかとんでもない代物ですね。本物の劣化コピーになるという点は少し微妙ですが。私なら完全コピー出来ますし」

「どうしてそんな所で張り合うのよ……。そもそも、こういうのは劣化コピーじゃなくて、デチューンとか言うんじゃなかったかしら」

 かりんは舞奈のドヤった顔での発言に対し、肩をすくめながら呆れた声でそう返す。

 そしてそのまま俺の方へと顔を向け直し、

「って、それはそれとして……。どうするの? 上へ行ってみる?」

 と、問いかけてきた。

 

「ま、昇降機を壊してまで道を作ったんだし、行かないという選択肢はないな」

 俺はそんな風に返事をしつつ、即座に飛翔魔法を発動。全員を浮遊させた。

 そして、

「というわけで、このまま上に行くぞ」

 と告げ、そのまま上昇していく。

 

 大した高さでもないので、あっという間に上へと到着。

 ……相変わらず暗いが、ダークゾーンほどの暗さはないな。

 展開しっぱなしの光球で十分見える。

 

「ここって……1階ー?」

 周囲を見回して、首を傾げながら問いかけてくるセラ。

 それに対し、

「……になると思うが、少し雰囲気が違うというか……広さがどう考えても1階じゃないな」

 と返事をしつつ、俺も周囲を見回す。

 

「ブッル。どう考えてもこれは異空間ブルねー」

 そんな風に言ってきたブルルンに続き、

「つまり、1階の『裏側』に出た……という事ですか?」

 などと、裏側の所を強調しつつ問いかけてくる舞奈。

 

「裏側という言い回しが適切かはさておき、そんな感じだと考えていい気がするな」

 俺はそう返事をしつつ思う。

 随分と妙な繋がり方をしているなぁ……と。

ちょっと変な所があったので調整していたら、更新が平時より少し遅くなってしまいました……

そして、調整した結果……何故か2割くらい長くなりました……

ま、まあ、なにはともあれ、次回は平時通りの時間に更新したいと思います。


と、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、2月12日(水)の想定です!

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