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第128話 血と術式

「あちこちに血の術式がありますけど、どこからこんなに血を確保しているのでしょう? 死んだ人間から得たくらいでは全然足りないですよね?」

 紡が俺と同じ疑問をそのまま口にする。

 

「人工的に作られたか、造血しながら出血させ続けた……とかが考えられますが、前者は科学的には可能だとは言われていますけれど、現在はまだ出来ていなかったと思います」

「だとしたら、当然『この施設が作られた頃にはなかった』という事になるわね」

「――後者の『造血』……つまり、血を増やすっていうのは、魔法ならば治癒系……要するに回復魔法の一種として存在しているな」

 舞奈とかりんの発言に続くようにしてそう告げると、

「血を増やす魔法って回復魔法なのー?」

 という疑問を口にしてくるセラ。

 

「回復魔法の中で出血を伴う傷に有効なのは、再生、止血、鎮痛……といった効果を持つものが主になるんだが、それらの魔法では身体の外に流れ出してしまった血までは補えないからな」

「なるほどー、ドバッて外に出てビシャって飛び散っちゃった血は、傷を塞いでも戻せないってわけだねー」

 セラが俺の説明に対してそう返してくる。

 明らかに出血量がおかしい表現だが……そこには突っ込むまい。

「う、うんまあ……そういう事だな」

 

「つまり、後者はやろうと思えば出来るわけですね。……エグいですけど」

「……出血させられ続けるのを身を以て経験した事があるので、個人的には今更な感じですが……」

 舞奈の言葉に対し、そんな風に返す紡。

 

「あ、あー……。言われてみると、例の異空間はたしかにそうでしたね……」

 ちょっとだけ申し訳無さそうな表情で、頬を人差し指で掻きながらそう口にする舞奈。

 それに続くようにして、

「まあ……そう考えると、後者の方がありそうな気がするわね」

 と、かりん。

 

「たしかに、そういう外道な術式――外術を当たり前のように使っていそうなイメージがあるな。この施設を作った何者かは」

 俺がかりんに対してそんな風に言うと、それを聞いたセラが、

「じゃあ、この術式も外術ー?」

 なんて言って、ブルルンへと顔を向けた。

 

「ブッルルー。さっきの話の通り、加工――というか『何か』を付与する術式ブルねー」

「何かって曖昧すぎー。コレからグチャグチャだけどスッキリもしているような、そんなわけのわからない気持ち悪さを感じるのにー」

 ブルルンの返答に不満だったらしいセラは、そう言うとブルルンを捕まえてギュッと抱きしめる。

 すると、

「ブルギュゥッ!? も、もうちょっと弱く抱きしめて欲しいブルゥゥゥー!」

 なんていう声を発するブルルン。

 

 ……まあ、たしかに随分と強く抱きしめてるな。

 ちょっと細長くなってるし……

 

「このくらいしないと伝わらないでしょー」

「ブッルゥー。理解したブルー。アレブッルねぇ……」

 セラの発言にブルルンがそう返事をする。

 ああ、例の互いの力を得つつ増す奴か……

 

「そうそうセラブル合体!」

「え、ええっと……その名称はなんだか少し危険な気がしますね……。逆にしたら特に」

 セラに対してそんな突っ込みめいた言葉を返す紡。


「えー? そーう? んー……それじゃあ、セーラールーン合体!」

「駄目です。危険です。そもそも、どうして伸ばすんですか」

 今度は舞奈がそんな突っ込みを入れた。

 それにセラは、

「なんでー!? じゃあもうセラルンズ合体でいいよ!」

 と、少しヤケ気味に言い放つ。

 

「ブルッブルゥ。そもそも合体と言っていいブルか怪しいブッルけど、まあ、そこはスルーするブルゥ……」

 なんて事を呟くブルルンに、

「そんな事より、見て! 感じて! 考えて!」

 などと返しつつ、ブルルンをさらにギュッとするセラ。

「ブルッギュゥ!? 駄目ブルゥ! そんなにギュッとしたらダックスフンドになってしまうブルー!」

 

 いや、ダックスフンドって……

 まあたしかにセラがギュッとしすぎて、ブルルンがさらに細長くなっているが……

 ……というか、どうしてあんな風に伸びるんだ?

 あそこまで伸縮するようにした覚えはないんだが、これもセラの影響……なのか?

 

 と、そんな事を考えていると、

「ブ、ブルゥ……。大体わかったブルゥ」

「これ、混ざってるんじゃなくて、別々ー?」

「ブッルブルゥ。そうブッルね。ひとつの大きな術式……ではなくて、複数の魔法――というか、呪術と言う方が良さそうブルね――が連結していて、別々に発動させられる仕組みになっているブッルルー」

「要するにこれひとつで、複数の呪術を選んで使えるって感じだねー。RPGの魔法とか技とかのコマンドみたいだねー」

 という会話を始めるブルルンとセラ。

 

 そして――

「複数の呪術を選んで使える……ですか。だから、さっきブルルンちゃんは『何か』を付与と言ったんですね」

「なるほどね……。たしかに『何か』を選んで付与出来るわね」

 舞奈とかりんのその言葉を聞き、俺も納得する。

 

「これひとつで色々な加工――呪術の付与を施せるようにしている……か。つまり、転移魔法の『ゲート』に近い仕組みって事でもあるな。よく生み出したもんだ」

「こうした方が色々出来る……というのは理解も納得も出来ます。ただ、最近魔法についてあれこれ学んでいるからわかるのですが、この仕組みを実現するのは結構大変ですよね」

「そうだな……。ゲートも生み出すのは大変だったと云われているしなぁ……」

 俺と舞奈がそう話していると、

「高度な術式というのは私も気になるので、調べてみたい所ですが、動作していないと調べようがありませんよね……」

 と、そんな風に言ってくる紡。

 

「ブッルゥ……。そうブルねぇ……」

「たしかに気にはなる代物だけど、ここはいったん後回しでいいんじゃないかしら?」

 ブルルンに続くようにしてそう言って俺と紡を交互に見てくるかりん。

 

「ま、現状では調べようもないしな。見た感じ、すぐに自然消滅してしまう……という事もなさそうだし」

 腕を組みながらそんな風に俺が言うと、

「ブッル。何もしなくても、少なくともあと200年くらいは、このままの状態で残っていそうな気がするブルー」

 なんて事をブルルンが言ってきた。

 

 どこからも維持のための力が供給されていない状態なのに、思ったよりも保つな……

 力を供給してやったら、すぐにでも使えるようになるかもしれないな……これは。

 

 などと考えていると、

「でしたら、今は一度引き返しましょうか。まだ反対側は全然見ていませんし」

 と、そう言ってくる舞奈。

 俺はそれに対して、

「ああ。早速、引き返すとしよう」

 と答えると、そのままブルルンの方を見て告げる。

「ブルルン、とりあえずオトラサマーにここの事を伝えておくだけ伝えておいてくれないか?」

 

「ブッルルー。了解ブッルよー」

 というブルルンの返事を聞きながら、俺は来た道を引き返す。

 さて、反対側にはなにがあるのやら……だ。

今回は思った以上に長くなりました。主にアレな会話のせいではあるのですが……


ま、まあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、2月1日(土)の想定です!

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