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第123話 天球儀とくろなんとか

「上にあった天球儀と大きさも見た目もまったく同じですね。『完全に一致』というものです」

 セラたちが組み上げた天球儀を見ながら、紡がそんな風に言ってくる。

 それに対し、

「その表現、何かが微妙に違う気がしないでもないけれど……まあ、それはそれとして、あの異空間にあった物とも大きさ以外は同じという事よね? あの異空間にあった天球儀をわざわざ再現した……のかしら?」

 という疑問を口にするかりん。

 

「それだと、あの異空間に取り込まれている時に天球儀を確認して解析、再現する為の設計図のようなものを作って、更にパーツまで作ってるって事になるし、違うんじゃないか?」

 そう俺が答えると、それに続くようにして舞奈が、

「そうですね。むしろ、あの異空間の天球儀もこれも、『大元が同じ』であると考えた方が良いのではないか思います」

 と、頷きながら言った。

 

「大元が同じ……です? それはつまり、例の幽霊宿の一件で名前が出てきた『くろなんとか』が、この天球儀の設計図のようなものを生み出し、それをもとにその異空間の天球儀も、この上にある天球儀も、この目の前にある天球儀も作られた……という事です?」

 そんな風に問いかける悠花に、

「はい、私はそんな風に推測しました。まあ、正確に言うのなら、その『くろなんとか』自身とは限りませんが。単純に『くろなんとか』の意志や思想、技術などを継承している者の可能性もありますし」

 と、そう返事をする舞奈。

 それに対し、

「複数作られている事を考えると、『くろなんとか』自身が全て作っているようには思えないわね。その天球儀の組み立てる前の状態――要するに『パーツの数の多さ』を考えると」

 なんて口にして肩をすくめるかりん。

 

「まあたしかに、これだけのパーツをひとりで全て組み立てるのは、ちょっと……いや、かなり大変だね」

「ブッルゥ、そもそもこれだけのパーツを作る時点で、結構な手間隙(てまひま)がかかるブルゥー」

 涼太とブルルンがそんな風に言ってくる。

 

「――『くろなんとか』が基礎となる術式やパーツの構成などを生み出して、それを設計図化、その設計図をもとに、『くろなんとか』の技術を持つ人間が作成や改変を行った……と考えるのが一番妥当な気がするな」

「そうね。たしかにそれが一番現実的な気がするわ。……まあ、こんなものを生み出す時点で『現実的』というのもあれだけど」

 かりんが俺の発言に同意しつつ、そう言ってため息混じりに首を横に振ってみせる。

 

「トッラー。たしかにその通りでありますトーラねー。その『くろなんとか』がとんでもない人間だというのは、よく分かるでありますトラーラ」

「まったくなのです。もっとも、幽霊宿の時点で既にとんでもなさは感じていたですが」

 悠花がオトラサマーに対して頷きながらそう言うと、

「でも、『くろなんとか』って何者なんだろうねー?」

 という至極もっともな疑問を口にするセラ。

 それに対し舞奈が、

「現時点では、あの『憑依』を使う者が一番怪しいですが、『間違いない』と確定させられるだけの『情報』がないので、違う可能性も大いにありますね」

 と、顎に手を当てながらそんな風に答える。

 

「その情報……。本当に出て来なさすぎなのです……」

 悠花がため息混じりにそう呟くと、それに涼太とかりんが続く。

「2階に残されていた資料は結構見たけど、『くろなんとか』の名前が記されているのはひとつもなかったしね」

「まあ、あまりにも『黒』のつく名前が記されていなさすぎて、逆に隠蔽されてるんじゃないかって気もちょっとしてはいるけれど、ね」

 

「隠蔽……か。たしかにありそうだな」

 俺がそんな風に言うと、「そうですね」と頷いて同意してくる紡。

 そしてそのまま、

「――ところで、この天球儀は何か力を持っていたりするんですか? それとも、あちらの挽き臼のようなものと同じで、からっぽな感じなのですか?」

 なんていう疑問を口にした。

 

「ブッルルー。術式そのものは刻まれているみたいブルねー。ただまったく動作していないブッル」

「つまり……マリオネットと違って、組み立てただけでは起動しないというわけですか」

 ブルルンの返答に対し、紡がそんな風に言うと、

「ブッルブッルー。そういう事になるブルねー。でも、どうやったら動作するのかは、さっぱりブルゥ……」

 と返して耳と尻尾をへニャっとさせるブルルン。

 

「ブルルンがそう言うとなると、案外『鍵』のようなものが別途必要なタイプなのかもしれないな。それこそ例の異空間の天球儀なんかは、ミイを取り込んで拘束する事で動作していたし」

「ブッルー。たしかにそれはありそうブルねー」

 俺の推測にブルルンがそう返してくる。

 それに対し、

「だとしたら、この施設のどこかに『それ』もありそうな気がしますね」

 と紡。

 

「そうですね。もしあるとしたら、この地下のどこかな気もします」

 頷きながらそう告げてくる舞奈に続き、

「それなら、まだ全然調べてないし、他の所にも行ってみないー?」

 なんて言ってくるセラ。

 

「ま、たしかにここだけ調べていても仕方がないってのはあるな」

 俺がセラに同意するようにそう口にすると、

「でも、まだ結構色々なものが置かれているわよね、ここ」

 と言って周囲を見回すかりん。

 

 たしかに奥の本棚とか気になるな……。だとしたら――

「そうだな……。ここに残ってもう少し調べるのと、先へ進むので分かれるか」

 と、そんな風に俺が言うと、悠花が、

「それなら悠花は残って調べるのです! ここなら罠はないのです!」

 などと即座に、なおかつ力強く返事をしてくる。

 

 それはまあ……うん。たしかにその通りではあるな……

今回は本来の想定している1話の長さなのですが、なんだか短く感じますね……


とまあそんなこんなでまた次回! 

次の更新は予定(平時)通りとなります、1月11日(土)の想定です!

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