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第122話 組み立てられたモノ

「見た事のあるものというと……透真さんが前に、カフェの倉庫で遭遇したというマリオネットですね?」

「そう、その通りだ。なんとなくあれに似ている気がするんだよ。組み立て終わった後のもの――姿形を想像すると」

 舞奈の問いかけに頷きながら俺がそう答えると、

「もし、同じようなものになったとしたら、この施設もあの一件と繋がりがあるという事になるわね」

 なんて事を言いながら、かりんがやってくる。

 

「まあ、既に繋がりがありそうな感じはしていますけどね」

「そうだな。古都での一件に廃墟での一件、そしてこの施設……。どれも同じ術者、あるいはそれを継承する者が関わっていそうだしな」

 舞奈の言葉に同意しつつそんな風に言う俺。

 

「……幽霊宿に使われていた術式が基礎になっていると考えると、ある程度共通点があったりするのはたしかね」

 と、顎に手を当てて考えながら言うかりん。

 そしてそのまま、

「――マリオネットも実は『憑依』だった……という可能性もあるわね」

 なんて事を言ってきた。

 

「憑依だった……か。たしかにそれは十分にあり得る話だな……」

 俺がそんな風に呟くように言った所で、今度は紡がやってきて、

「例の憑依を行使する人物は、人間以外にも憑依出来る……と、そういう事ですか?」

 という問いの言葉を投げかけてきた。

 

「ああ。普通に考えたら、無機物へ憑依出来たとしても、肉体と違うから自由に動かせるとは思えないが……もしマリオネットが『憑依を前提として作られたもの』――要するにホムンクルスの劣化版のような感じで、魂を込める事で動けるようにしたもの――だったとしたら、ある程度自由に動けてもおかしくはないからな」

 俺はそんな風に返事をしつつ、組み立てを続けていく。

 

 ……そして、程なくして組み立て終わったそれはというと――

「これは……まさにあのカフェの倉庫で、俺が遭遇したマリオネットそのものだな」

 そう俺が口にした通り、マリオネットはあの時のものと完全に同じだった。

 そして、そのまま人形を見ながら、

「……まさか、ここまで同じだとはな……。しかも、いつの間にかマリオネットから強い魔力を感じるようになっているし」

 と、そんな風に言葉を続ける。

 

 パーツ状態だった時には感じなかったものを感じるようになったという事は、組み合わされて始めて力を持つように仕組まれている……という事になる。

 つまりそれは――

「人形のパーツが、術式のパーツでもあった……という事なのでしょうか?」

 と、俺の思った事をそのまま口にする紡。

 

 大体こういう時は舞奈が即座に言ってくるものだが、今回は紡の方が早かったようだ。

 なんて思いながら、俺は紡に対して頷き、

「ああ、もっと詳しく調べてみないと結論は出せないが、そうである可能性が高いんじゃないかと俺は思う。……が、何故こんな仕組みにしているのかは良く分からないな」

 と返事をする。

 

「一番考えられるのは、誰かにバレないようにする為、あるいは運びやすくする為……といった所ではないかと」

 そう言ってくる舞奈に、

「なるほどね。たしかにどちらもあり得ると言えばあり得るわね」

 と、かりんが返す。

 そして、それに続くようにして、俺も同意しつつ言葉を紡ぐ。

「そうだな。バラバラにすれば持ち運びやすい上に、見つかっても『術式』が組み込まれているとは思われない。実際こうして組み立て終わるまでは、分からなかったしな」

 

「術式を感知出来る場所や人物をすり抜けるのに有用というわけですね」

「ああ。これでカフェでの一件も、バラバラにして持ち込む事で、俺やかりんの張り巡らせた感知をすり抜けた……という可能性も新たに浮上してきたな」

 紡の言葉に対し、そんな風に俺が返すと、

「そうね。あの一件は状況的に『隠形鬼』の方が関係するものだとばかり思っていたけど、この仕組みであれば、『憑依』の方が関係していてもおかしくなくなったわね」

 と、かりんが腕を組みながら言ってくる。

 そしてそこに舞奈が、

「というか、隠形鬼も憑依も『同じ人物の仕業』である可能性すら出てきましたね」

 なんて事を告げてくる。

 

「隠形鬼としての行動をしながら憑依もしている……。あるいは憑依した上で隠形鬼としても行動している……というわけですか。たしかにありそうな感じですね」

「ああ。普通に考えたらかなり無茶苦茶だが、複数の地点に憑依対象がいれば、不可能というものでもないからな。まさに黒野沢や黒志田がやっていた『ホムンクルスの乗り換え』のように」

 俺が紡の言葉に同意するように頷き、そんな風に言う。

 それに対し、

「そうですね。あの手段も『憑依』をもとに生み出されたと考えられますしね」

 と言ってくる舞奈。

 

「そうなってくると、根幹にあるのはあの幽霊宿――宿の霊体を呪縛する大掛かりな術式を構築した昔の術者……くろなんとかが、全ての元凶だと言えるわね」

 そう言って肩をすくめてみせるかりんに、

「まあ、現時点での仮説の上ではそうですね」

「そして、その仮説が真実であるかどうかも、くろなんとかが何者なのか判明すればわかるというものだ」

 と、そんな風に返す舞奈と俺。

 

「もっとも、くろなんとかが何者なのかに関しては、今の所、情報が皆無に等しいけどな……」

「そうなんですよねぇ……」

 俺と舞奈がそう口にした所で、

「出来たー!」

「出来たのです!」

 というセラと悠花の声が響く。

 

 ん? あのガラクタの山を組み立て終わったのか? と思いながらそちらへと顔を向けると、そこには『天球儀』があった。

 

 まさか、あのガラクタの山が本当に天球儀になるとはなぁ……

 というか、なんでこんな所にバラバラにした状態で置かれていたのか――それとも、捨てられていたと言うべきなのだろうか――だな。

新年明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

……SCROLL3(第3章)が1年以上の超長丁場になってしまっているので、今年の早い内に決着まで進めたいと思っています。


とまあそんな所でまた次回!

次回の更新は平時通り……だと、再び2日空いてしまうので、平時より1日早くなりまして、1月7日(月)の想定です!

(なお、その次の更新は平時通りの予定です(次回が前倒しなので1日間が空きますが……)

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