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第120話 地下を進みて

「たしかに暗いですが、懐中電灯で問題ないのです」

 地下へと下りてきた悠花が、懐中電灯で正面を照らしながらそんな風に言うと、涼太がそれに続くようにして、

「ダークゾーン化していたのは2階だけって事になるね」

 と口にした。

 

「結局、どうして2階だけあんな風にしていたのかは謎のままって感じー?」

「そうですね。今の所そこの謎に繋がりそうな情報は見つかっていませんね」

 ふたりに続いて地下へと下りてきたセラの問いかけに対し、俺と同じく先に下で待っていた舞奈がそう答える。

 

「ま、2階が一番『術式が残存していた』だけで、実は全体的に術式が張り巡らされていた可能性はゼロじゃないけどな」

「それってつまり、1階と3階は『術式の大半が失われている』だけかもしれないって事よね?」

 俺の発言を聞いたかりんが、そんなもっともな問いの言葉を投げかけてくる。

 それに対して俺は頷きながら、

「ああ。あくまでも可能性ではあるが……3階は既に機能していない術式が多かったからな。1階も同様だとしたら、その可能性の方が信憑性が出てくるというものだ」

 と、返事をした。

 

「ブッルルー。1階はそもそも術式が存在していた形跡すらほとんどないブルねー」

「トッラトッラー。たしかにその通りでありますトォーラー。ただ、代わりに『建物の外』には形跡がありますトラー」

 ブルルンとオトラサマーがそんな風に言うと、それに続くようにして、

「建物の外も1階相当だと考えると、透真さんの仰る通り、2階以外は『術式の大半が失われている』というのも頷けますね」

「まあ、1階の事をグランドフロアとか地上階とか言ったりするしねー」

 なんて事を口にする紡とセラ。

 

「なるほど……。たしかにそういう風に考えると、1階も地上も同等だと言えなくもないですね」

 顎に手を当てて、何かを思案しながらそんな風に言う舞奈。

 そしてそれに続いて、

「となると、この『地下』がどうなっているのかが少し気になるね」

 と、涼太が言ってくる。

 

「ブッルブッルゥ。先行して調べた感じでは、術式はあまりなさそうだったブッルゥー。と言っても、2階みたいに探知では引っかからない状態になっている可能性は否定出来ないブルけどねー」

「なるほどです。それで奥の方にトラップがあるかないかわからないと、かりんお姉さんが言ったですね」

 ブルルンの話を聞いた悠花が、納得の表情でそんな風に言うと、それに対してかりんは頷きながら、「ええ、そういう事よ」と肯定した。

 そして、悠花の方を見たまま、

「というわけで、慎重に進むようにね」

 と、そんな風に言葉を続ける。

 

「え、ええっと……。ゆ、悠花は一番後ろからついていくのです……」

 と言いながら後退する悠花。

 

 まあ……たしかに先頭を進まなければ、トラップには引っかかりづらいかもしれないな。

 なんて事を思いながら、

「とりあえず先頭は俺が行くから大丈夫だ。ブルルン、後ろに続いてくれ」

 と告げて、そのまま奥へと続く狭い通路へ足を踏み入れる俺。

 

「ブッルブルー。任せるブルー。ブルルンがしっかり探知するブッルー」

「あ、待ってー。それなら私もー」

「ムギュブルゥ!?」

 俺に続こうとしたブルルンを捕まえてギュッと抱きかかえながら俺に続くセラ。

 

 なんというか……ある意味、ブルルンの定位置となりつつあるな……

 ま、俺のすぐ後ろなら問題ないだろう。

 

「狭いから並んで進むしかない感じよね……」

 と言いながらその後ろに続くかりん。

 そこに更に、

「そうですね。というか……こうして一列に並ぶと、どことなるRPGのパーティっぽい雰囲気がありますね」

「まあ……たしかに舞奈さんの言いたい事もわからなくはないですね」

 なんて事を言いつつ、舞奈と紡が続く。

 

 悠花は宣言した通り最後尾で、その前がオトラサマー、更にその前が涼太という順番だ。

 

 そして、舞奈が口にした『RPGのパーティ』のように一列に並んだまま進んでいく事しばし……

 

「あ、なんだか部屋みたいな所に出たねー」

 と、そうセラが言った通り、部屋のようになっている少し開けた場所へと出た。

 もっとも、ただそれだけであり、何も置かれてはいないのだが……

 

「見事なまでに何もないわねぇ……」

 肩をすくめながら、そう口にしたかりんに続き、

「ですが、以前は何かが置かれていた感じがありますね。こことかそことか、それっぽい『跡』がありますし」

 と言って、床を指差していく舞奈。

 

 たしかに舞奈の言う通り、その場所には何か重いものが置かれていた痕跡があった。

 正確には『置かれていた何かを引き摺った痕跡』と言うべきか。

 

「ここに置かれていた物は撤去された……という事なのでしょうか?」

 痕跡に向けていた視線を周囲へと移しながらそんなもっともな疑問を呟く紡。

 まあたしかに、ここだけ見ればそういう事になるが……

 

「建物内は結構そのまま残されているのに、ここだけ撤去したというのも、ちょっと不思議な感じだね」

「そうだな。ここにあった物を撤去する必要が――というか、何らかの理由で『動かす』必要があった……のか?」

 涼太の言葉に頷いてそう返しつつ、紡と同じく周囲を見回してみる俺。

 すると――

「……うん?」

 痕跡のひとつが、壁の所で途切れているような形になっている事に気づいた。

 しかも、良く見ると壁に切れ込みのようなものがあるような……

 

 と、そこで、

「この『跡』……。何故か壁の方へ向かっているですね?」

 なんて事を言いながら、まさにその壁へと手を伸ばす悠花。

 

「トッラァ、壁に触れると危険な気がするでありますトーラー」

 横にいるオトラサマーの忠告に対し、悠花が「え?」と口にしたその直後、壁がクルッと回転。

「わひゃぁっ!?」

「トットラァァッ!?」

 そんな驚きの声と共に、悠花とオトラサマーがその回転に巻き込まれ、『壁の裏側』へと一瞬で消えた。

 

 しかしすぐに、「ひぐぅっ!?」という悠花の悲鳴と、

「トーララァ……。床があって良かったでありますトラァ……」

 というオトラサマーの安堵の声が続いた。

 

 ……どうやら『落とし穴』ではなかったようだ。

 ここは、一安心だと言うべきなのだろうか……?

 

「……いきなり引っかかってるし……」

「ブルゥ? どうしてこうも『引き当てる』のか不思議ブルねぇ……」

「ま、まあ、その……今回はトラップというわけではありませんし……」

 呆れ気味に言うセラと、心底不思議そうに言うブルルンに対し、頬を掻きながらそんな風に言う紡。

 でも、たしかに悠花は妙に『引き当てる』な……

 

 なんとなく気にならなくもないが、まあそこは一旦置いておくとして――

「……とりあえず、俺たちも行ってみるとするか」

 肩をすくめながら俺はそう口にして、壁を回転させるのだった。

今度は落とし穴ではありませんでしたが……


とまあ、そんな所でまた次回!

次は平時より1日だけ多く間が空きまして、12月29日(日)の想定です!


※追記

誤字を修正しました。

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