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第115話 異空間と通常空間と術式

 俺はふと思いついた可能性について、皆に話してみる。

 すると、それを聞いた舞奈が、

「なるほど。たしかにそう考えるのが、状況的には妥当な推測ですね」

 なんていう、ちょっと妙な言い回しで返事をしてきた。

 

 しかし、それはつまり――

「要するに、異空間側に何かあるのが確定って事ね」

 かりんが俺の言いたい事を、先に口にする。

 

「あ、あの、私が言っておいてなんですけど、無条件で確定するのは――」

 おずおずとそんな事を舞奈が口にするも、それを途中で遮り、

「え? 違う可能性あるの?」

 なんていう問いの言葉を投げかけるかりん。

 

「いえ、まあ、今の状態を考えたらないと思いますが……」

「ブッルルー。さっきブルルンは『発生した魔力がすぐにどこかに吸い込まれて消えていく』と言ったブッルブッルゥ。それは『異空間側へ吸い込まれている』と考えると合点がいくブルよー。だから、舞奈の推測は当たっているとブルルンも思うブッルねー」

 舞奈の返答に続くようにして、ブルルンがそんな風に言う。

 それに対して舞奈は、

「それなら、えっと……はい。無条件で確定しても大丈夫だと思います……」

 などと言ってきた。何故かちょっと脱力しながら。

 

「ここから異空間側へ入り込む事が出来れば、必ず何かが見つかる……というのはわかりましたが、どうやって入るのか……ですよね」

「そうね。どうやったら入れるのかがさっぱり分からないのよね」

 紡に対してそんな風にかりんが返した通り、どうやって異空間側に入るのかというのが謎なんだよなぁ……

 

「異空間と通常空間が切り替わる所は、おそらく『階段』――ただし、上から降ろすタイプのではなく、普通に常に存在する階段――だというのは推測出来るのですが、逆を言うと、それしか推測出来ない状態ですね……」

 顎に手を当てながら舞奈がそう告げてくる。

 それに対し、

「ブッル? どうして階段だと判断したブル?」

 という問いの言葉を、身体の上半分を傾けながら投げかけるブルルン。

 

「1階から2階へと続く階段の上がった所から、ダークゾーン……つまり、異空間になりましたし、ここも、隠し階段を下りてきた所から、通常空間になりました。なので、階段で切り替わっていると考えるのが妥当です。それと……2階と3階を繋ぐ『常に存在する階段』がなかった――正確に言うと、上から降ろす事で、一時的に階段を作る仕組みになっていた――のは、おそらく『切り替え』を防ぐ為だったのではないかと」

「なるほどな。ここと同じ魔法陣がより大規模に構築されているあの大部屋で、2階と3階とを繋ぐ階段がなかったのは、『そういう事』だと考えると納得出来るな」

 舞奈の説明に納得の表情でそう返すと、舞奈はそれに頷き、

「はい。梯子であれば、常に存在していたとしても、『切り替え』として認識されないんだと思います」

 と、そう言ってきた。

 

「階段によって自動的に切り替わる術式……ですか。時間によって自動的に切り替わる術式になっていたあの幽霊宿とは少し違いますね」

「そうだな。もっとも……なんらかの条件を持たせて、それをトリガーとする事で自動的に切り替えている、という点では同じだが」

「あ、たしかにそうですね。となると、根幹的には同じ術式という事なのでしょうか?」

「そう考えていいかもしれないな」

 紡と俺がそんな風に話をしていると、かりんが顎に手を当てながら、

「なるほどね。設定している条件だけが異なっているってわけね」

 などと、呟くように言ってくる。

 

「ブッルルー。そうなると、どこかにある術式の根幹を壊せば『こちらから異空間に行かなくても、向こうから通常空間に出現する』かもしれないブルねー。あの幽霊宿のようにブッル」

「そう言われてみると、たしかにその通りね。舞奈、どこに術式の根幹があるか推測出来たりしない?」

 ブルルンの言葉に納得したらしいかりんが、そう口にしつつ舞奈の方へと顔を向ける。

 

「う、うーん……。さすがにそこまでは……。上の天球儀が一瞬怪しいと思いましたが、あんな場所に無造作に設置されているものが術式の根幹だというのはありえませんし」

「まあ、あれからは幽霊宿の結界――もうちょっと正確に言うなら、通常空間と異空間を隔てる事で内側の存在を閉じ込める為のもの――を生成していた術式のようなものは、何も感じなかったし、根幹ではないだろうな。とはいえ、一応ちゃんと調べておくか」

 舞奈の発言に対し、俺はそんな風に返すとブルルンの方を見て、

「ブルルン、一旦上に行って詳しく調べるからついてきてくれ」

 と告げた。

 

「ブッルブッルー。了解ブルー」

 右手……じゃなくて右前足をビシッと伸ばしながらそう返事をしてきたブルルンと共に階段を上がって例の天球儀のある部屋へと移動する俺。

 ……というか、俺たち。

 

 そして、天球儀の前まで辿り着いた所で、

「ブッルー。とりあえず調べてみるブルよー」

 と言って、早速天球儀を調べ始めるブルルン。

 

 それを眺めながら俺が、

「別に全員で来なくても良かったと思うが……」

 と、そんな風に言うと、

「あの天球儀については、色々と気になりますからね。調べてどういう結果が出るのか知りたいと思いまして」

「そうね。私も霊力というか魔力というか、そういったものの流れが気になっているのよね。あの辺り、なんだか妙な感じだし」

 なんていう返答を舞奈とかりんがしてきた。

 なるほど……

 

 そしてそのふたりに続くようにして、

「……え、えっと、その……あそこにひとりで残されるのは、さすがにちょっと怖いものがあるといいますか……」

 と言ってくる紡。

 うんまあ……たしかにそれはあるな……

 

「さすがにゾンビとかはもう出て来ないとは思いますが、色々と物騒で不気味ですからね……。血塗られた床だのなんだのと」

「まあ、たしかにそうね」

 舞奈に対し、そんな同意の言葉を口にしながら、首を縦に振るかりん。

 

「あっ、それはそうと……」

 舞奈が唐突に何か思い出したかのようにそう言うと、俺の方を見て、

「今さっきかりんが言った件――霊力や魔力の流れが気になっているという発言――ですけど、あれって、例の円柱群の所で透真さんが言っていた『流れが変えられている』からなのでは?」

 なんていう言葉を投げかけてきた。

 

「あー……なるほど、たしかにそれはありそうだな」

「……どういう事?」

 当然のように首を傾げてくるかりんに、俺と舞奈は円柱についての話をする。

 するとそれを聞いたかりんは、

「――あの良く分からない代物、そんな感じだったのね。で、あれを動かしていた力の流れが変化している……と」

 と言いながら、顎に手を当てた。

 

「この天球儀の為にそうしたのでしょうか?」

 そんなもっともな疑問を口にしてきた紡に、

「そう考えるのが一見すると妥当だが……俺的には違う気がするんだよなぁ……」

 と俺が返した所で、

「ブッルルー。たしかにそうじゃないみたいブッルねー。この天球儀へと流れ込んできている力は何もないブルー」

 なんて事をブルルンが言ってきた。

 

「だとすると、この天球儀はどういう役目を?」

「ブッルー。これは反対側の棟にあった『本』と同じで、あの異空間への連結を担っていた代物みたいブルー」

 首を傾げた紡にそう答えるブルルン。

 

「ああなるほど……。こっちに本がまったく見当たらないと思ったら、これがその代わりだったってわけか……」

 納得しつつ、そんな事に呟くように口にした俺に続くようにして、

「となると、これは術式の根幹とはやはり無関係という事ですか?」

 と、そんな風に問いかける舞奈。

 

「ブッルブッルー。そう思って間違いないブッルよー」

 そのブルルンの返答に、俺はやれやれと首を横に振りながら、

「だとしたら、やはり下に何かあるわけか……」

 と口にする。

 

「でも、相変わらず妙な力を感じるわねぇ……」

「ブッルゥ。床を伝っている力の事ブッルル? たしかに途中で流れが消えてしまっている感じブッルね。でも、ここら辺からなんとなくこう……地面に染み込む水のように、階段から下へ向かって染み込んでいっているような気がするブル」

 かりんに対してそんな風に返事をするブルルン。

 それを聞いた俺は、

「それも下か……。うーん……先にもう少し下の階を調べるべきだったな」

 と呟くように言った。

 

「これはこれで、術式の根幹と無関係である事を確定出来たので良いのではないかと」

「そうね。力の流れも下へ向かっている事が判明したし」

 なんて事を言ってくる舞奈とかりんに対し、俺は顎に手を当てて少し考える。

 ……そう言われてしまったら、否定するのもあれだな……。ここはよしとしておく方がいいか。

「ま、たしかにそうだな。一応得られるものはあった……と言うべきか」

 と返すのだった。

いまいち良く分からないサブタイトルに……


ま、まあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、12月7日(土)の想定です!


なお、その次から年末進行的な都合により、更新タイミングが若干変わるかもしれません……

(あまり空きすぎてしまわないように調整するつもりなので、最初はいつもどおりかもしれません)


※追記

力の流れについてのブルルンとかりんの会話がまるっと抜けてしまっていたので追加しました。

(その影響による前後の会話の不自然な箇所も調整しました)

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