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第114話 魔法陣と魔方陣

「これは……血で描かれた魔法陣……でしょうか? 円形ではないですけど、なんとなくそんな感じがします」

 まさに俺が思った通りの事を呟いた紡に対し、

「そうねぇ。方陣型……とでも言えばいいのかしらね? 方円型とは異なる魔法陣だと思うけど、使った試薬だけだと一部分しか浮かび上がってきていないせいで、どういう代物なのか良くわからないわね」

 と、顎に手を当てながら返すかりん。

 

「そうだな。光を発している部分だけだと『何かの魔法陣』だとしか言えないな」

「はい。もうちょっと広い範囲に撒かないと駄目そうです。4人で一気に撒いてしまいましょうか」

 舞奈が俺に対して頷きつつそう言ってきたので、俺は、

「ああ、そうしよう」

 と返事をし、試薬を3人に手渡した。

 そして、4人で分担する形で、それを部屋全体に撒いていく。

 

 全員が試薬を撒き終えた所で、魔法陣の全容が姿を現す。

 それは、四角形の魔法陣を3つずつ3列並べたようなものだった。

 各魔法陣は複雑な模様――というか、いくつもの紋様を重ね合わせたもの――が、それぞれ描かれている。

 

 これ、全体の形状は数学の3×3の『魔方陣』とまったく同じだな……

 おそらくこの形状そのものにも、術式としての何らかの意味があるんだろう。

 どういう意味があるのかまでは、分からないが……

 

 なんて事を考えていると、かりんがその魔法陣を眺めながら呟く。

「――なんだか、曼荼羅っぽいわね。これ」

 

「でも、あれは魔法的なものではないと思いますが……」

 そんな風にかりんの方を見て口にした紡に対し、

「そうね。だから『見た目が似ているだけの魔法陣』なんだと思うわ」

 と、かりんが頷きながら返す。

 

「それで言うと、数学の『魔方陣』の方にも、形状自体は似ていません?」

「ああ、それは俺も思った」

 俺に対して言ってきた舞奈に対し、頷きながらそう返事をする。

 

「この魔法陣が何かを隠しているんですかね? 見た感じ、今でも動作しているっぽいですし」

「だろうなぁ。壊せば隠されているものが出てきそうだが、下手に壊すと危険そうな感じもするし、しっかり解析しないと駄目だな」

 俺は舞奈に再び返事をすると、ブルルンに呼びかけてみる。

 

『ブルルン、ちょっとこっちに来られたりするか? というか、そっちはどんな感じだ?』

『ブッルルー。こっちは例の薬品は撒き終えて、姿を現した魔法陣みたいなものを調べている所ブッルゥ。妙な魔法陣ブッルけど、術式的な部分を解析するのは、オトラサマーでも問題ないから、ブルルンはそっちに行っても大丈夫ブルよー』

『そっちも魔法陣が現れたのか……。こっちもちょっと特殊な魔法陣が現れてな。解析しようと思うんだ』

『ブッルゥ。なるほどブッル。こっちの皆に話をしたら、すぐにそっちに行くブルー』

 ブルルンが俺にそう伝えてきたその十数秒後――

「ブッルブッルー! ご主人、やってきたブッルよー!」

 という声と共にブルルンが転移してくる。

 

「あ、ブルルンちゃんを喚んだんですね」

「ま、この手の解析に関しては、ブルルンがやる方が精度が段違いに良いからな」

 俺は舞奈に対してそんな風に答えると、ブルルンの方を向き、

「解析したいのは、向こうと同じように試薬によって姿を現したもの……。あれだ」

 と告げつつ魔法陣を視線で指し示した。

 

「ブッルゥ? あれブル?」

 ブルルンがそう口にしつつ身体の上半分を横に傾けて、首を傾げるかのような仕草をする。

 そして、

「ブッルー。あれ、向こうで姿を現した魔法陣みたいなものとそっくりブルー。まあ、あっちはこの3倍――9×9ブルけどー」

 なんて事を言ってきた。……ん? 3倍?

 

「ブルルンちゃん、それは3倍ではなくて実質9倍だと思います……」

「ブルゥ!? ……ブ、ブルルルゥ……たしかにそうだったブッルゥ」

 紡の突っ込みに対してブルルンがそんな風に返すと同時に、その耳がへニャっと倒れた。

 

「まあ……なんだ? 計算ミスくらい誰でもするから気にするな。ともあれ、解析を頼む」

 そう俺が頬を掻きながら言うと、

「ブッルルゥ! 任せるブル! バッチリシッカリクッキリ解析するブッルよー!」

 と、へニャっとしていた耳をシャキっと立たせながら、力強く返事をしてくるブルルン。

 

 何故だか良く分からないが、妙にやる気だな……

 なんて事を思いつつも、「ああ、任せた」と返事をして解析を始めさせる俺。

 

「ブルルルルル……むむむむむ……ブッルルル……」

 そんな声を発しながら解析する事しばし……

「ブッルゥ。この魔法陣から発生した魔力が、発生した瞬間に消えているブルね」

 などと言ってくるブルルン。

 

「発生した瞬間に消える? 形作る前に霧散しているって事?」

 俺よりも先に、かりんがそんな問いの言葉を投げかける。

 

「ブッルルー。そうじゃないブッル。発生すると同時に『何かに吸い込まれて消えていく』ような感じブルよー。こう……スポンジや砂に向かって水をかけているような感じブルゥ」

 

「スポンジや砂に向かって水をかけるような感じ……? 吸い込まれて消えていく……?」

 顎に手を当てて首を傾げながら呟く俺。

 そして、一体どういう事だ? と、あれこれ思考を巡らせる。

 

 ……ここにある、目に見えず触れる事も出来ない『何か』に魔力が流れていってるのか? 

 だとしたら、それはどうやってそのような現象を発生させているんだ?

 というか、何故そのような現象を発生させる必要が?

 

「そう言えば、この場所ですけど……『異空間』なのでしょうか? それとも『通常空間』なのでしょうか?」

 紡がそんな疑問を口にする。

 それに対して、

「俺と舞奈が外から確認した感じだと異空間だったから、多分異空間だと思うが……」

 と返事をする俺。

 

 するとその直後、

「それなら、これでたしかめてみましょうか」

 と言いながら、鉄球をポケットから取り出し、勢いよく壁に向かって投げつける舞奈。

 

 というか、まだ手持ちがあったのか……その鉄球。

 

 なんて事を思っている間に、鉄球は壁に激突。

 ズドンという音と共に、壁にヒビが入った。

 

「普通にヒビが入ったので、通常空間だと思います」

 と告げてくる舞奈。

 それに対してかりんが、呆れた表情と声で、

「そんな力任せにやらずとも、もうちょっと他に調べる方法あるでしょうに……」

 と、舞奈に向かって呟くように言った。

 そして、そのまま続けて疑問の言葉を口にする。

「ま、それはともかくとして……ふたりが調べた場所は異空間だったのよね? という事は、ここだけ通常空間になっている……という事なのかしら?」

 

「そういう事になると思いますが、どうしてそんな構造になっているのかに関しては、現時点では情報不足すぎて推測も立てられませんね」

 舞奈がそう返しつつ、お手上げだと言わんばかりに首を左右に振った。

 

 ……異空間ではなく通常空間にしている理由……か。

 そう言えば、似たような構造の『例の幽霊宿』は、時間帯によって通常空間と異空間が切り替わるという仕組みだったな。

 それと同じような仕組みで、通常空間と異空間を自由に切り替えられるとしたら……

 

 そんな感じで思考をしばらく巡らせていると、ふとひとつの可能性を思いついた。

 

 もしかしてこれ、異空間側に『何か』を隠していたりするんじゃないか……?

微調整していたら、予定よりも更新が少し遅くなってしまいました……


ま、まあ、そんなところでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、12月4日(水)の想定です!

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