第45話 破壊の化身、その魂の欠片
「なーに、魂の欠片を分離すればいいだけだ。そして……欠片1つ程度ならばすぐに片がつく」
俺は舞奈に対して安心させるべくそう告げると、璃紗に向かって一気に接近する。
俺の接近を認識した璃紗が、異形と化した腕を振るってくるが、そんなものに当たりはしない。
軽く回避して間合いを詰める。
もう片方の腕で掴みかかってくるも、それは障壁魔法で防ぎ、そのまま璃紗の腹部目掛けて魔法を直接叩き込む。
と、その直後、禍々しいオーラを纏った楕円体――奴の魂の欠片が璃紗から飛び出す。
そう……。今、璃紗に叩き込んだ魔法は、奴の魂の欠片を分離する魔法――
こっちの世界に来てから生み出した新しい魔法のひとつだ。
ちなみに、叩き込んだ対象には何もダメージを与えない。
なので、璃紗には傷一つ付けていない。
が、奴の魂の欠片のせいで精神へのダメージはかなり蓄積していたのか、璃紗はそのまま糸の切れた操り人形のように、前のめりに倒れ込む。
否。倒れ込む寸前に抱きかかえ、駆け寄ってきた舞奈に託す。
奴の魂の欠片へと視線を向けると、弾き出された事に混乱しているのかフラフラしているだけだった。
俺は逃げられる前にとっとと始末するべく、魔法剣を生み出しつつ跳躍。
「砕け散れ!」
と、そう言い放ちながら無造作に奴の魂の欠片めがけて魔法剣を振るった。
奴の魂の欠片は、それだけであっさりと両断。
真っ二つになった奴の魂の欠片は、獣の咆哮――あるいは断末魔――を発しながら霧散していった。
「……え? も、もう終わったんですか?」
璃紗を介抱しつつ、そう声をかけてくる舞奈に対し、
「ああ終わりだ。言っただろう? 欠片1つ程度ならばすぐに片がつくって」
と、告げる俺。
そして、一呼吸置いてから、
「それにしても、普通に身体強化の魔法を使っているが……いつの間に使えるようになったんだ? 朝の時点ではまだ使えなかったはずだが……。まさか授業中に練習した……のか?」
と、問う俺。
「いえ、鈴花が突き落とされたその直後、階段の下へと落下していく鈴花をなんとか助けないと……と、そう思った瞬間、魔法が使える気がしてきまして……」
「それで本当に使えた、と?」
「はい。とにかく速さが欲しいと思い、アクロア――加速魔法を使ってみた所……発動しました。そして、そのお陰で簡単に鈴花の下へと回り込む事が出来、どうにか抱きとめる事が出来ましたよ……」
その一瞬で加速魔法を発動? つまり……いきなり詠唱破棄で発動させた、という事か……?
たしかに詠唱破棄での発動方法も教えはしたが……そんな簡単に使えるようになるものではないはずなんだよなぁ……。これも分析した結果……なのか?
いやでも、それにしては……
などと、舞奈の言動に驚き、俺はあれこれ思案を巡らせる事になった――
瞬殺です。
そして、ここでようやく魔法の名称登場です。
透真はいつも、(名前を口にする必要性があまりないので)、加速魔法とか隠蔽魔法とか効果でしか言っていませんでしたが、一応全部、固有の名称があります。
(舞奈は初心者なので、名前を含めて全部言っている……という感じですね)
といった所で、また明日も更新しますので、よろしくお願いいたします!




