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第111話 構造の謎と円柱の謎

 上の階へ移動した所で、待っていた舞奈が、

「それにしても、どうしてここだけ梯子なんでしょうね? ここも階段にするとかでは駄目だったのでしょうか? 十分、階段を作るスペースはありそうですが」

 なんて事を、部屋を見回しながら言ってきた。

 

 それはまあたしかに……と思いつつ、俺も部屋を見回し、

「うーんそうだなぁ……。もしかしたら、階段を作ろうにも作れなかったのかもしれないな。例えば……階段を作ると術式の一部を潰してしまうとか」

 と、そんな推測を口にした。

 それに対して舞奈が納得の表情で、

「あぁーなるほど。術式を潰さない為に、梯子にするのが精一杯だった……というわけですか。それは大いにありえそうですね」

 と、返してくる。

 俺はそれを聞きながら梯子を眺め、新たにふと気づく。

 

 良く見るとこれ、欄干の一部を切り取って、強引に梯子を増設したかのようにも感じるな……

 という事に。

 

「もしかしたら、最初は梯子もなかったのかもしれないな。なんというか……ここの所にも最初は欄干があったような、そんな感じがするし」

 梯子のある場所――元々は欄干があったように思える部分を手で指し示しながら俺が言うと、

「むむっ、言われてみるとたしかに……。だとしたら……ここは下の階とは分断されていた?」

 と口にしつつ、何かを考えるような仕草をする舞奈。

 

 そして、

「この場所、立って演説とかするのにちょうど良さそうな感じですよね?」

 なんて事を言ってきた。

 

 その言葉に対して俺は、梯子と梯子の間あたりに立って下の階を見回してみる。

 うーん、なるほど……

 

「たしかにこの感じだと、最初は『そういう用途』で使われていたとしても、なんら不思議ではないな……」

「ですよね? まあ、それがわかったからと言って何かあるわけじゃないんですが……」

 俺の返答に、舞奈がそんな風に言ってくる。

 

「ま、そういう『気づき』っていうのは大事だと思うぞ。特にこういう探索ではな」

 俺はそう告げつつ、廊下の方へと向き直り、

「さて、それじゃ行くか」

 と、言葉を続けた。

 

 そしてそのまま、かりんと紡がいるであろう方へ向かって3階の廊下を進んでいく俺と舞奈。

 こちらの廊下も、反対側とほぼ同じような感じだったが――

「あれ? こんな所に隠し階段がありますね。向こう側に比べてかなり手前では?」

 と、そんな風に舞奈が口にした通り、2階への隠し階段が早い段階でその姿を現した。

 

「そうだな。しかも向こう側と違って壁際にあるし」

 舞奈に対してそう返しつつ、階段の下に複数の光球を放り込みながら覗いてみる俺。

 するとそこは、例の拷問器具が置かれていた部屋だった。

 

「うーん、なるほど……。こっちはここに出るんですね」

 と、俺の横から下を覗きながら呟く舞奈。

 そしてそのまま階段を下りると、周囲を見回してから、

「かりんと紡さんの姿はなさそうです。かりんが武器生成魔法と符術を応用して、光球を作れるはずなので、もし近くにいれば、その光が見えるはずですし」

 と言ってきた。

 

 武器生成魔法と符術でそんな事まで出来るとは……

 符術というのは、作るのに手間がかかる触媒が必要だという難点こそあれど、かなり万能だな……

 いや……その手間がかかる触媒が必要だからこその万能さ――柔軟性の高さ……なのか?

 

 っと、それはともかく――

「まあ、下は既に調べ終わっているしな。もっと奥にいるんだろう」

「そうなりますね。では戻ります」

「ああ待った。その前に外の廊下の床――正確に言うなら、テレポーターが仕掛けてある辺りに、ちょっとこいつを撒いて、どういう感じなのか確認しておこう」

 階段を上ってこようとしていた舞奈に箱を見せながら制止し、俺も下の部屋へと移動する。

 

 紡の障壁魔法がないので、光球を複数展開しても暗い事に変わりはないが、とりあえず見えるので問題はない。


「あ、そうですね。廊下のテレポーターも血が使われている可能性が高い以上、しっかりと確認しておいた方がいいですね」

 そう返事をしてきた舞奈と共に俺は2階の廊下へと出ると、涼太から受け取った箱を開け、そこから試薬を数本取り出した。

 そして、それを半分舞奈に渡すと、一緒にそれを床に撒いてみる。

 

 最初の1本目は俺も舞奈も何も反応しなかったが、2本目で反応があった。

 

「これは……血の痕が『魔法陣の形』になっていますね……」

 と舞奈が言う通り、六芒星の形をした青い光が床から発せられていた。

 

「どうやら、トラップの方を血で作ったみたいだな。強制転移させるだけの仕組みだし、おそらくこれだけで、十分な期間維持する事が出来ると考えたんだろう」

「実際、維持出来ていますしね」

「ああ。随分と緻密な計算の出来る奴がいるようだ」

 舞奈に対して俺は頷きながらそう返すと、

「ま、とりあえずテレポーターについては理解した。上に戻って奥へ進むとしよう」

 と、そんな風に舞奈に告げる。

 

「そうですね。戻りましょうか」

 そう返してきた舞奈と共に3階へと戻ると、更に奥へと向かって廊下を進んでいく。

 

 すると程なくして廊下の左右に、俺の身長の半分程度の高さがある、木製の円柱が並んで置かれているのが見えてきた。

 

「これ、良く見ると真ん中辺りに切れ込みが入っているような……。もしかして、回ったりするんでしょうか?」

 なんて言いながら両手で円柱に触れ――

「あ、動きました。……でも、下は動きませんね。上だけです」

 と、そんな事を円柱の上半分を回転させながら告げてきた。

 

 上だけ動く……か。

 まるで挽き臼みたいだな……

 

 などと思いながら、

「回転する事に何か意味があると考えるのが妥当だろうが……」

 と呟く俺。

 それに対して舞奈は、「そりゃーっ!」とか叫びながらさらに円柱を回転させ始める。

 

 ……いや、そんなに勢いよくグルグル回さなくてもいいと思うが……

 なんて思っていると、

「はぁ……はぁ……。駄目……ですね……。これと言って……何も……起きません……」

 などと、息を切らしながら言ってきた。

 

「うんまあ……その、なんだ? そこまで力を込めてグルグル回さなくても、魔力の類がまったく生じていない時点で、何も起きないってのはわかったけどな……」

 円柱をじっと見つめて、そんな風にちょっと呆れ気味に俺が言うと、

「い、言われてみると、たしかにそうですね……。そ、その、魔力というのがいまいち良く把握出来ないもので……」

 なんて頬を掻きながら言った後、

「でも、何も起きないのはあれですかね? ここって例のゾンビ製造部屋の上あたりになりますよね? あそこの術式も動作していなかったから……とかなんでしょうか?」

 という疑問の言葉を投げかけてくる舞奈。

 俺はそれに、いや……そのネーミングはどうかと思うが……と心の中で呟きつつ、

「ああ、たしかにそれはありそうだな」

 そう頷きながら答える。

 そしてそこで、文字の刻まれた壁の事が脳裏に浮かぶ俺。

「……というか、もしかしてこれにも何か文字が刻まれている……のか?」

 

 俺の呟きを聞いた舞奈は、顎に手を当て、

「なるほど……。たしかにそれは十分ありえる話ですね」

 と、納得の表情で言葉を紡ぐ。

 そしてそのまま俺の方へと顔を向け、

「でしたら、それをたしかめる為に、あの時コピーしたものを、もう一度作りましょうか?」

 という問いの言葉を投げかけてくる。

 

 『あの時コピーしたもの』というのは、ブルルンやオトラサマーでなければ見えない文字を可視化する術式に使う『形代』の事だろう。

 たしかにあれがあれば、文字が刻まれているかどうかたしかめる事が可能だな。

 

 俺が「ああ、頼む」と短く返事をすると、舞奈はそれに頷いてみせ、形代……のコピーを生成し始めた――

サブタイトルで『謎』と書いていますが、謎という程のものでもなかった気がします……


ま、まあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、11月23日(土)の想定です!


※追記

誤字を修正しました。

また、アップした時にカットしていたギャグ風味の会話を復活させました。

なんというか……ギャグ風味ではあるものの、カットした流れだと円柱の現状について強調出来ていない気がしたもので……

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