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第109話 3階の謎と金属の謎

「うーん……。床ではなく、祭壇上の板の方が血塗られているだなんてね」

「おそらく、床の方は血の必要がなかったって事なんだろうな」

 肩をすくめる涼太に対して俺がそう返した所で、

「ところでー、この燭台の配置、なんでこんな感じなのかなー?」

 という、もっともな疑問を口にするセラ。

 

「本がある意味、終点でもあるね」

「ブッルルー。そうブッルねー。でも、本は終点というよりかは起点のような気がするブルよー。こう……本から燭台の並んでいるその先――あっちの壁に向かって魔力を飛ばしていたんじゃないかと、ブルルンはそう思うブルゥー」

 涼太の発言に対して同意しつつ、そんな風に言い、前足でビシッと壁を指し示す。

 

 なるほど……。たしかにそれはあり得そうな感じだな。

 

 俺がそう思った所で、涼太が、

「なら、あの辺りにも……」

 などと呟くように口にしつつ、俺の視線の先にある壁へ向かって試薬を振りかけた。

 

 すると、即座に四角形と菱形を幾つも連ねたような、妙な紋様が浮かび上がってくる。

 ……いや、紋様は紋様でも、魔法陣に近い代物だな……これ。

 

 そんな風に考えていると、

「本、燭台、謎の紋様……。見事に一直線ですね」

 なんて事を舞奈が、部屋の左奥から壁に浮かび上がる紋様の方を見ながら言ってきた。

 

「ああ。やはりこれは、魔力をこちらの方へと飛ばす――流す為の術式だと考えていいだろう。さすがに透視や遠見は出来ないから、ここからでは確認のしようもないが……おそらくこの直線を伸ばしていった先に、あの石碑があるんだろう」

 腕を組みながら俺がそう口にすると、

「だとすると、ちょうど反対側――あのゾンビなどを生み出したと思われる、文字だらけの術式が刻まれていた部屋が並んでいる辺りにも、同じようなものがありそうですよね……」

 と、思考を巡らせるような仕草をしつつ、問いかけてくる舞奈。

 

「そうだな。あの真上あたりに、これと同じ部屋があってもおかしくはないな。向こう側へ行く通路もある感じか?」

「はい、2階と同じ所でしっかり分岐していました。こちら側と同じくトラップなどはなさそうだったので、かりんと紡さんが調べに行きましたよ」

 俺の問いかけに対し、そんな風に答える舞奈。

 

「という事は……ウチの悠花とオトラサマーは、例の大部屋にいるのかな?」

 今度は涼太がそう問いかけ、それにセラが返事をする。

「うん、そうだよー。あそこでふたりが戻ってくるのを待ちながら、もうちょっと調べておくって言ってたー」

 

「なら、まずはそっちへ行くか」

 俺はそう告げると部屋を出て、3階の廊下を使って例の大部屋へと向かう。

 

 3階の廊下は、右側に小部屋が並んでおり、左側には特に何もないただの壁という構造だった。

 2階と違って、ある意味正しい構造だな……

 

「3階は個室のような狭い部屋が連なっているんだね」

 廊下を歩きつつ、そんな風に呟くように言う涼太。

 それに対し、

「本当に狭い部屋だけどねー」

「そうですね。奥行きはありますが横幅はふたりでギリギリな感じです」

 と、そう答えるセラと舞奈。

 

「なるほど……たしかに横幅が異様に狭くて奥行きが少しあるつくりだな。一応ベッドを置いたり、布団を広げたり出来そうなくらいの広さはある……といった所か」

 俺は小部屋のひとつを覗き込みながら、そんな風に言う。

 

 そして、向こうの世界の砦にあった兵士宿舎みたいだな……

 なんて事を思っていると舞奈が、

「そうですね。もっとも、実際に個室として使われていたかどうかまでは、ちょっと分かりませんが……。なにしろ、どの部屋も何もないもので……」

 と、ため息をつきながら口にして、首を横に振ってみせた。

 

 うーん……。さすがの舞奈でも、何もなければ推測のしようがないか……と、考えていると、

「ブッルルー。ちなみにその狭い部屋の中の幾つかには、壁や床に血の痕があったブルよー。例えば……この部屋ブッル!」

 などと言いつつ、今いる場所から3つ先の小部屋の入口まで飛んで行き、小部屋の中を前足でビシッと指し示すブルルン。

 

「血痕……か」

 そう呟き、そのブルルンが指し示した小部屋へと歩み寄る俺。

 そして中を覗いてみると、たしかに俺でも『そうである』と気づくような、赤黒い染み――血痕があった。

 

「試薬の必要はなさそうだけど……」

 と言いながら、試薬を振り撒く涼太。

 

 程なくして青い光を発し始めるも、涼太の言った通り、それは目視出来た血痕とまったく同じ形状だった。

 

「見た目どおりって事みたいだねー」

「そうだね。それにしても、この狭さで血痕……かぁ。うーん、ここも実は牢屋だった……とか?」

 セラの返事をしつつそんな推測を口にしてくる涼太。

 それに対して俺は、腕を組みながら返事をする。

「うーん……。そうだとすると、血痕があったりなかったりするのが妙だな」

 

 するとそこでブルルンが、

「ブッル。むしろ血痕がある所の方が圧倒的に少ないブルよ」

 なんて事を言ってきた。

 

 なるほど少ないのか……。だとすると牢屋というのはおかしい気がするな……

 などと考えていると、舞奈が顎に手を当てながら呟いてくる。

「そうなんですよね……。なので、なおさら良く分からないんですよね。この小部屋の用途が……」

 

「まー、この施設自体がそもそも謎だらけだからねー。もうちょっと何か手がかりになりそうなものが残ってればいいのにー」

「そうですね。例の異空間にわざと取り込ませた可能性が高いという事と、ゾンビなどを生み出していたと思しき事……。その2点は判明しましたが、それも何の為なのかと言われると、さっぱり分かりませんし……」

 舞奈はセラの発言に頷きつつそう返すと、そのまま視線を涼太の鞄へと向け、

「ですが、血が染み込まされている建材というのが、もしかしたら大きな手がかりとなってくれるかもしれませんね」

 なんて言った。

 

「そうであってくれるといいんだけどね」

 そんな風に肩をすくめながら涼太が返した所で、例の大部屋へと出る俺たち。

 すると、梯子の所にいたオトラサマーがこちらに気づき、

「トラットラー。戻ってきたでありますね。悠花ー、こっちから来たでありますトーラよー」

 と、そんな風に声を大にして言ってきた。

 

 こっちから来た? 

 ……そう言えば悠花はどこにいるんだ? 

 と、そう思って大部屋を見回した直後、

「あ、本当なのです。まさかそっちから来るとは思わなかったのです」

 という声と共に、悠花が真下から姿を現す。

 ああ、大扉の所にいたのか。

 

「扉を調べてたのー? なにか気になるものでもあったー?」

 セラがそんな風に問いかけると、

「はいです。ちょっと気になったというか……この扉は金属製――正確に言うと、鉄製だと思われるですが、『まったく錆びていない』ので、どうしてなのかと不思議に思ったのです」

 なんて返答をしてくる悠花。

 

 俺はその悠花の言葉に――

 

 そう言えば、扉の材質まではちゃんと確認していなかったな……

 しかも、鉄のように見える金属で、錆びていない……か。

 さっきの祭壇もそんな感じの代物だったが、もしかして同じ金属が使われていたりするのだろうか?

 

 ――と、そんな事を思うのだった。

少し長くなりましたが、途中で区切るのも微妙だったので、悠花と合流する所まで進めました……


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、11月16日(土)の想定です!


※追記

誤字を修正しました。

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