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第107話 床と壁と転移魔法

「廊下に仕掛けられていたテレポーターやダークゾーンと同じで、先程のもの――文字とは別のものを用いた術式があるのでしょうか?」

 舞奈が部屋を見回しながらそんな風に言ってくる。

 それに対して、

「たしかにその可能性は高いような気がするのです。なにしろここは、『ダークゾーンの中』のままなのです」

「そうね。さっきの場所は『ダークゾーンの外』だったわ。でも、この部屋は『ダークゾーンの中』……。別の術式が使われていると考えて良いと私も思うわ」

 と、悠花とかりんが同意を示す。

 

「そもそも……あのテレポーターやダークゾーンは、一体何を用いて作られていたんでしょうね?」

 舞奈のもっともな疑問に対して、

「そう言えば、そこまでしっかり調べてはいなかったな。ただ……魔法陣の類は存在していなかった」

 と、そう返事をしつつブルルンの方を見る俺。

 

「ブッルルゥゥ……そうブッルねぇ……。むむむぅ……あれはこう……建物と融合している……というより……ブルルゥ……。こう……ブルル……建材そのものが魔導具や呪物であるかのような、そんな感じだったブルよー」

 ブルルンが首をひね……じゃなくて、身体の上半分をひねって考え込みながらそんな風に言うと、オトラサマーがそれに対して首を縦に振り、

「トッラトッラー。たしかに自分もそう感じたでありますトォーラァ。なんというか、呪いが床や壁に染み込んでいるような感じでありましたトットラー」

 という同意の言葉を口にした。

 

「建材そのものが、魔導具や呪物……? 呪いが床や壁に染み込んでいるような感じ……ですか」

 そんな事を呟きながら床や壁を見る紡。

 

 その紡に続くようにして、俺たちも床や壁を見る。

 ううーん……言われてみると、たしかに少し妙な邪悪さを感じるような気もしなくはないが……

 この建物全体が色々とヤバいからなぁ……

 

 というか、床や壁に使われている木材が結構黒ずんでいるな。

 ま、あの亜空間に、長い間手入れもせずに放置されていたわけだし、当然と言えば当然か。

 

 と、俺がそこまで思考を巡らせた所で、

「それにしても……この建物って、なんとなくですが、学校っぽさを感じません?」

「あ、たしかにそれは悠花も思ったのです。外側はコンクリートでも、内側は木の板やタイルなどが多く使われているからだったりするですかね?」

「まあ……外観はともかく、内装までコンクリート剥き出しじゃ、さすがにちょっと見た目が良くないしね。一応、人が暮らしていた場所ではあるし」

 なんて事を口にしてくる舞奈、悠花、涼太の3人。

 

 うーん……なるほど。

 まあ、向こうの世界でも、外壁はレンガでも内壁は木材ってのは普通にあったしな。

 って、そう言えば……石より木の方が温かみを感じるだとかなんとか、そんな事をコウイチが言っていたような気がするなぁ……

 

「ブッルゥ。でも、この建物、そこかしこから血の匂いがするブルし、あまり住みたい場所ではないブッルねー」

「それはまあ……多くの人が死んでいる……いえ、殺されている場所ですからね」

「というか、血の匂いなんてするー?」

 ブルルンに対して、紡とセラがそんな風に返す。

 

「ブルルンの嗅覚は、普通の犬と同じくらいあるからなぁ……。元になっているぬいぐるみが、フレンチブルドッグだ……から?」

 俺はそこまで口にした所で、ふと引っかかりを覚えた。

 

 ……犬の嗅覚で血の匂いを感じる?

 ……内装が木とタイル?

 

「「「っ!?」」」

 俺、舞奈、涼太の3人が同時に気づく。

 そして涼太が、

「ちょっと取ってきたいものがあるんだけど、ここって……転移魔法、使える?」

 と、そんな風に俺に言ってきた。

 

「……あの異空間から戻ってきた直後だからなのか、空間が安定していなくて無理だな」

「うーん……残念。手持ちがひとつしかないから試すだけになってしまうけど、ま、とりあえず……」

 俺の返答に対してそんな風に言いつつ、蓋のされた試験管を懐から取り出す涼太。

 それを見て、「もしやそれは……」と呟く舞奈。

 

 試験管の中には何かの液体が入っているようだが……一体、なんだ?

 舞奈は何か心当たりがあるようだが……

 

 なんて事を試験管を見ながら考えていると、涼太がその試験管の蓋を取り、中の液体を床に撒いた。

 そして俺の方を見て、

「明かりを一旦消してもらえるかな?」

 と言ってくる。

 

 俺はそれに「了解だ」と返しながら、光球を消す。

 すると、程なくして青い光を発する床が目に飛び込んできた。

 

「うわぁ、すごいー」

 感嘆の声を発するセラ。

 

 たしかに凄いな……

 今の液体によって生じている現象のようだが……

 

 その現象について問おうとした所で、かりんが、

「これは……? というか、今の液体は?」

 という問いの言葉を先に口にした。

 

「ルミノール試薬に霊的な処理を施したものだけど、まあ元がルミノール試薬だから、普通にこうして『血』を浮かび上がらせる事も出来るんだ」

 俺の問いかけに対して、そんな風に答える涼太。

 

 ああなるほど……。テレビでやってる刑事ドラマとかで、使われているのを見た事があるが、これがそうなのか。

 さすがに向こうの世界には存在していないから、この目で見るのは初めてだ。

 

 って、それはともかく……

「血……か。やはり、内装に使われている木材に血が染み込んでいた……ってわけか。しかも、変色しすぎない程度に」

 と、そんな風に言う俺。

 

「まさか……全ての木材に血が?」

「ブッルルー。匂いの強弱があるブッルから、おそらく全部ではないブルね」

 紡の呟きに対し、ブルルンがそう返す。

 まあ、さすがに全ての木材に血を染み込ませるのは難しいだろうしな……

 

「それでお兄ちゃんは、取ってきたいものがあると言ったですね? 家に戻れば、血を染み込ませた木材をどう使っているか調べられるくらいの試薬があるですし」

「うん、そういう事」

 納得の表情で問う悠花に、涼太が頷いて肯定する。

 

 なるほどな。それなら――

「少し手間だが、一度空間の安定している所まで戻ってゲートを開くか?」

 と、俺。

 

「あ、そうだね。血が染み込んでいる事が判明した以上、もう少し詳しく調べてみたいし、そうしてくれると助かるよ」

 涼太が俺の方を見て、そんな風に返事をしてくる。

 

「了解だ。それじゃ空間が安定している所まで戻るとしようか」

 俺が涼太に対してそう答えると、

「取ってくるだけなら、全員で戻らなくてもいいわよね?」

 と、そんな風にかりんが言ってくる。


「あー、たしかにそうだな。戻るのは俺と涼太だけで十分だし、かりんたちは、このまま他に何かないか調べておいてくれないか?」

 かりんの言葉にもっともな話だと納得した俺がそう告げると、それに対してかりんが「ええ、わかったわ」と頷きながら返事をしてきた。

 そして他の皆も、頷いてそれに肯定を示す。

 

「よし。涼太、改めて空間の安定している所まで戻るとしよう。おそらく、中庭に出れば大丈夫だ」

 俺は改めてそんな風に言いながら思う。

 

 しかし、血を染み込ませた木材を使った術式……か。

 よくもまあ、こんなとんでもない――というか、エグい――手段を考えたものだ……


 と。

なんだかちょっと微妙なサブタイトルですが、他に思いつかなかったもので……


ま、まあ、それはそれとしてまた次回!

次の更新も予定通りとなります、11月9日(土)の想定です!


※追記

誤字を修正しました。

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