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第95話 光と闇と障壁

「魔法の光でようやくこの明るさというのは、なかなかですね……」

 舞奈のそんな風に感想に対し、「たしかにな」と返しつつ2階を見回していると、徐々に暗くなっていくのを感じる。

 

 するとそこでかりんが、

「って、光が徐々に弱まっていってるわね……」

 と、そんな風に言ってきた。

 やっぱりそうなったか……と思いながら光球へと視線を向ける。

 すると、明らかに光球が小さくなっていた。

 

「……やはりというべきなのだろうな。闇に少しずつ侵食されているようだ」

「といいますと?」

 俺の呟きに、紡が首を傾げながらそう問いかけてくる。

 

「闇は後ろにバネがある衝立みたいなもんだからな。光という力を加えて押すと一時的に下げる事は出来るが、少しでもその力が弱まるか、闇――バネの方の力が強まると、押し戻されてしまうような、そんな感じだと思えばいい」

「あ、なるほど……。光球によって闇を押し出したものの、押し出された闇が強さを取り戻して押し返しているわけですか」

 俺の説明に納得の表情で紡がそんな風に言うと、

「まあ、光と闇では闇の方が根本的には力が強いですからね。光に照らされた場所でも闇である影は必ず存在しますが、闇に包まれた場所では光があるとは限りませんし」

 なんて事を補足するかのように言う舞奈。

 

「はいです。あくまでも光は闇を減らしているだけにすぎないのです。だからこそ闇が蔓延らないように、光を絶やすわけにはいかないのです」

 悠花が頷きながらそんな風に言う。

 

 まさに、常日頃から闇の存在を追い払っている者らしい言葉だと言えるな。

 なにしろ一度蔓延ってしまった闇は、打ち払うのに苦労するし……。かの魔王の軍勢のように。

 

 と、俺が向こうの世界での事を思い出しながらそんな事を思っていると、

「少なくとも懐中電灯の光程度では押し出す事すら出来ないのは分かったけど、そうなると魔法――光球のうっすらとした明かりに頼って進むしかない感じかしらね……」

 なんて事を言いながら、かりんが消滅寸前の光球を見る。

 

「なに、ひとつで薄っすらならば、明るくなるまで光球を生み出せばいいのさ」

 俺はそう言いながら10を超える光球を生み出し、闇の中へと放り込む。

 

「トッラー! 凄いでありますトラー! しっかり先が見えるでありますトォラァー!」

 なんてオトラサマーが言う通り、光球の束はしっかりと闇を照らし、通路の先までも通せる状態にした。

 ……まあ、それでもなお闇が強すぎるせいで下の階ほどは見通せなかったりする。

 あくまでも進む分には問題ないくらいの視界が確保出来た……というのが正しいだろうか。

 

「まさか物量とは思わなかったのです……」

「ブッルー、ご主人の魔力の成せる技ブルねー」

「さっすがー!」

 悠花、ブルルン、セラがそれぞれそんな風に言ってくる。

 そしてそれに続くように、

「かなり力押しな方法だけど、その力押しが出来てしまうってのがまず凄いよね」

 と涼太。

 

「これなら問題なく進めそうですね」

「そうね。とりあえず進んでみましょうか」

 かりんが2階を見ながら舞奈にそう返事をしたので、俺はそれに続くようにして、「ああ」と言いながら頷き、そのまま2階へと足を踏み入れる。

 そして、2階の廊下を進んで間もなく廊下脇にドアが見えてきた。

 

「この感じ……どうやら2階も1階と同じような構造みたいですね」

「だな。もっとも……1階と大きく構造が違っていても、それはそれで困るが」

 俺は舞奈に対して頷きながらそう返すと、そのドアへと近づき、そっと開けてみる。

 

 部屋の中は当然真っ暗なので、光球をいくつか室内へと動かして照らしてみた。

 すると、部屋の中にもドアがあるのが見えた。

 

「これは……1階と違って部屋の中からしか行けない場所があるという事でしょうか?」

「かもしれないし、単に隣の部屋と繋がっているだけかもしれない。まあ、開けてみるとしよう」

 紡のもっともな疑問に対してそう返しつつ俺は部屋の中に入ると、そのまま見えていたドアを開ける。

 すると、そこには同じようなつくりの部屋があった。

 

「廊下の方に出られそうなドアはなさそうだねー」

「ブッル。でも、さらに隣の部屋があるっぽいブルよー」

 俺の横にやってきたセラとブルルンがそんな風に言う。

 

 セラの言うように、廊下側は完全に壁になっていてドアの類はない。

 だが、ブルルンの言うように正面にはドアがあり、さらに隣の部屋と繋がっていた。

 

「廊下側のドアを減らして、その代わり中で複数の部屋をドアで繋いでいる……という事なのかしら?」

「これはこれで妙な構造ですね」

 かりんと舞奈がそんな風に言ってくる。

 

「何か色々ありそうな感じだけど、これを手分けして調べるには光球が足りないか……。もう少しだけなら増やせなくもないが……」

 俺がそんな風に言った所で、

「いっそ、咲彩さんを連れてきますか? 光属性の資質があるわけですし、同じように光球を多数生み出せるはずですよね」

 なんていう提案を口にする舞奈。

 

「それはまあたしかにその通りだし、良い手だと言えば良い手ではあるが……」

 俺がそう返事をすると、

「あ、その前に少し試してみたい事があるので、ちょっとそれを試してみますね」

 なんて事を、思考を巡らせる仕草で言ってくる紡。

 

「ブッル? 試したい事とは、一体何ブル?」

 ブルルンがもっともな疑問を口にしつつ、身体の上半分を横に倒してみせる。

 

「あ、はい。光球をガードしたらどうなるかと思いまして……」

 紡はブルルンに対してそう答えると、即座に障壁魔法を発動させ、障壁で光球を覆ってみせた。

 

 すると――

「トッララー! 障壁で覆った光球だけ、他よりも明るいでありますトラー!」

 と、そんな風に驚き気味に声を発するオトラサマー。

 

「まさか、闇の侵食を障壁で防ぐ事で光量が増すとはな……」

「障壁って、こういう事も出来るんだね。凄いなぁ」

 俺と涼太がそう呟くように言うと、

「い、いえ、動かす事は出来ないのでそこまで凄くは……。どうしても、要所要所に配置していく感じになりますし……」

 なんて事を照れながら返してくる紡。

 

「でも、透真さんの生み出した光球の数なら、複数の部屋を完全に明るくする事が出来そうですよね……。これ」

「ああそうだな。これならたしかに手分けして調べる事も容易に出来そうだ」

 俺は舞奈に対して頷きながらそんな風に言う。

 

 そしてそれと同時に――

 

 先刻の階段型障壁といいこれといい、紡は障壁魔法の使い方が上手いというか、かなりテクニカルだな……

 ここまでの事が出来る障壁魔法の使い手なんて、向こうの世界にもいなかったぞ……

 

 と、そんな事を思うのだった。

長くなりかけたので、一旦ここで区切りました……


ま、まあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、9月28日(土)の想定です!

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