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第94話 異空間とダークゾーン

 再び建物内へと戻り、階段に向かって歩いていく途中で、

「そう言えば、この辺りの部屋は調べた感じなのか?」

 と、かりんに問いかけてみる俺。

 

「もちろんよ。と言っても、完全な空き部屋と大した物のない部屋ばかりだったから収穫はなしね」

「つまり、手前と同じような感じだったって事か」

「ええそうね。一部屋だけ例の倉庫と同じ邪気を感じたけど……開けずに封印しておいたわ。多分、同じようなものがあるだけだと思うし、わざわざ開けて確認するよりも最初から封印してしまった方が手っ取り早そうだったから」

「なるほどな。ま、他の部屋が手前と同じような感じだった事を踏まえると、そこもあの倉庫と同じだと考えていいと俺も思うぞ。実際に確かめてみるのは、後でも十分出来るし」

「そうね。逆にそっちは何かわかったの? 舞奈の蹴り壊す話だの大岩を投げつける話だのですっかり聞きそびれてしまったけれど、舞奈の強化魔法全開の蹴りや、大岩をぶつけても壊せない窓や壁って普通じゃないわよね?」

「ああ、それなら――」

 俺はかりんに対してそう切り出しつつ、舞奈に対して行った説明と同じ説明を、再びかりんに――というか、その場にいる皆に対して行った。

 

 そして、俺の説明が終わった所で、

「へぇ、なるほどねぇ……。あの異空間に取り込まれるよりも前から、この建物にはそんなとんでもない術式が施されていたかもしれない……いえ、そうである可能性が高いってわけね」

 と、かりんが顎に手を当てながら言ってくる。

 

「空間を重ねる……ですか。たしかに古都の幽霊宿のようですね」

「そう言えばー、例のうにょーんが現れた時も、あの幽霊宿と似たような感覚があったかもー。まあ、幽霊宿の方は、うにょーんと違って『嫌な感じ』はしなかったけどねー」

 紡の言葉に続くようにして、そんな風にセラが言ってくる。

 それに対して、

「ブッルブッルゥ、例のうにょーんの方は、咲彩をあの異空間に再度取り込もうという邪悪な意思があったブルル。でも、幽霊宿の方にはそういったものはなかったブッル。だから『嫌な感じ』がしなかったんじゃないかと思うブルよー」

 と、そう告げるブルルン。

 

「まあ、幽霊宿の方は入り込んできた人間に害を与えようという意思はなかったしな。むしろ、もてなすくらいだったし」

「それに対して、異空間から逃げ出した人間を追いかけて、もう一度異空間に取り込もうとする、あのうにょーんはかなりの悪意ですよね」

「そうだな。というか、あそこまで執拗なのもなかなかないな」

 俺がそんな風に舞奈に返事をした所で、

「というか、あの異空間からどうやって抜け出したのかが、いまだに謎よね」

 と、かりん。

 

「たしかにそうですね。咲彩ちゃんだけどうしてあの場所から脱出する事が出来たのでしょう……? まあ、お陰で私たちも助かったわけですが」

 頬に手を当てながらそう口にする紡に対し、

「既に破壊してしまったから調べようもないが……もしかしたらあの空間のどこかに、今話した『多重空間の境界』があったのかもしれないな」

 という推測を返す俺。

 

 今までは綻びが生じて、そこから出てきたのではないかと考えていたが、案外こっちの方があり得そうな気がしてきたな。

 『建物や集落ごと取り込む』という現象も、まさに『宿を取り込んだ』あの術式に似ているし……

 もしそうであるならば……時系列からして、あの宿に使われた術式が根幹にあって、そこから幾度となく改良が施された結果、あの空間に使われた術式にまで発展した……と、そう考える事が出来るな。

 

 ――なんて事を考えている間に、階段の目の前まで辿り着いた。

 

「上、すっごーく暗そうなのです」

「トッラー。外から見えた感じだと、上も同じような外観だったでありますトラー。だから、窓から太陽の光が射し込んできていないとおかしいでありますトォラァ」

 悠花に続くようにして、オトラサマーがそんな風に言うと、

「まさにさっき透真が説明してくれた通りで、内側からは『窓のない廊下』になっているんだろうね」

 と、そう返す涼太。

 

「おそらくな。ま、確認すればわかる話さ。上へ行ってみるとしよう」

 俺は涼太に対して――というより、皆に対してそんな風に言いつつ、階段を上る。

 

 そして、踊り場からクルッと回って2階を見上げると、そこは漆黒の闇だった。

 ……って、なんだ? この暗さは……

 

「異常なまでに暗いわね……。まるで黒い壁なんじゃないかってくらい、何も見えないわ……」

「まさにダークゾーンといった感じですね……。テレポーターや落とし穴などの罠が仕掛けられていても気づきそうにありません」

「そんなものあるわけな……いとも言えないのが困りものね……。落とし穴は実際にあったし」

「そうですね。まあ、あれは単なる罠ではない可能性の方が高そうですが」

 かりんと舞奈がそんな風に言ってくる。

 

 たしかに強制転移の罠とか、向こうの世界では珍しいものでもなかったしなぁ……

 絶対に仕掛けられていないとは言い切れないな。

 

「ブッルゥ……。この闇……明らかに魔法や術の類ブルゥ……」

「まあそうですよね……。いくらなんでも暗すぎです。……というかこれ、懐中電灯で照らせるのでしょうか?」

 紡がブルルンの言葉に納得しつつも、新たな疑問が湧いてきてのか、そんな風に言う。

 

「あ、たしかにそれは気になるですね! 早速、照らしてみるのです!」

 と言って、小さな鞄から懐中電灯を取り出し、それを2階へと向ける悠花。

 

 懐中電灯のスイッチが入り、2階を照らし始めるが……

「……真っ暗なままだね。というか、まるで壁を照らしたみたいになってるし……」

 と、涼太が言った通り、懐中電灯の光で照らしているにも関わらず、2階はまったく照らされていなかった。

 

「光があそこで吸収されてしまっているのでしょうか……?」

 という紡の言葉に、

「それはたしかにありそうだな」

 と返しつつ、俺は光球を生成。

 

「なら、『魔法の光』であるこれならばどうだ……?」

 と呟きながら、光球を2階へ向かって放り投げるように飛ばす俺。

 

 光球は懐中電灯と違い、黒い壁のようなものを突き抜け、2階へと踏み込んでいった。

 そして……その光球によって、ほんの僅かにだが、2階が照らされる。

 

 うーん……。懐中電灯とは違って、しっかり照らす事自体は出来ているが……発せられる光が弱々しすぎて暗いな……

ダンジョンRPGに良くあるダークゾーン(のようなもの)が広がっていますが……?


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、9月25日(水)の想定です!


※追記

ダークゾーンに関する会話を追加しました。

(正確には、更新時にいらないと思ってカットしていたものを復活させた形です。

 一度カットしたものの、やっぱり入れておいた方が良さそうな気がしてきたもので……)

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