第43話 魔法と魂の欠片
急いで痕跡を追って3階まで来た所で、途端に痕跡が見えづらくなった。
「人の気配に紛れて痕跡が分かりづらいな……。仕方がない――」
「どうするの?」
「隠蔽魔法を解除して、痕跡を見る方に集中する。悪いが俺の前を歩いてぶつからないよう先導してくれないか?」
「ええ、わかったわ」
というわけで、俺は隠蔽魔法を解除し、かりんも普通に見える状態になった。
……なにやら、周囲からこちらに奇異な物を見るかの如き視線を向けられているような気がするが……ま、まあ、今は放っておくとしよう。そちらに意識を向けたら痕跡を辿れなくなりそうだし。
そう考え、視線をスルーしつつ痕跡を追って廊下を進んでいくと、教室のある棟の階段の所で、再び痕跡が上に向かっていた。
「ここからまた上だな……。屋上へ向かった……のか?」
そう呟くように口にした瞬間、上から悲鳴が聞こえてきた。
「「っ!?」」
俺とかりんは弾かれたように階段を駆け上がる。
すると、4階部分の所に座り込む鈴花の姿があった。
「どうした!?」
「あ……な、成伯君っ!」
俺に気づいてそう口にする鈴花。
「なにがあったの!?」
「き、急に下級生っぽい少女が、私を突き落とそうとして……舞奈がかばって……。でも、逃げた下級生を追いかけて……」
かりんの問いかけに対して鈴花がそんな風に答えるが、混乱しているせいなのか、いまいち要領を得ない。
だが、舞奈が『なにやら危険な少女』を追い、屋上へ行ったという事は理解した。
「破壊の化身――彼の魂の欠片が引き起こした可能性が高いな……。かりん、小井出の事を頼む!」
「え? あ、ちょ、ちょっと!?」
かりんが慌てて何かを言おうとしたが、その声を置き去りにして俺は自身に強化魔法を付与すると、速やかに上へと駆け上がる。
そして、屋上へ出た所で走る舞奈の姿を捉えた。
屋上に、他の生徒がいなかったのは幸いというべきか……
そう思いながら舞奈を追う俺の視線の先で、舞奈の前を走る女子生徒が、常識外の跳躍力で柵を飛び越え、隣の棟の屋上へ移動した。
しかし、舞奈もまた同じように大きく跳躍し、それを追いかける。
って! 待て待て! 普通にあんな高く飛べるわけないっ!
……ま、まさか、魔法を使っているのか!?
その状況に驚きつつ、俺もまたふたりを追って隣の棟へと移動する。
「一体、どうして鈴花を突き落とそうとしたんですかっ!?」
背を向けたまま立ち止まっている女子生徒に対し、舞奈が声を大にして問い詰めるのが聞こえて来た。
「月城!」
「成伯さん!?」
俺の声に、驚く舞奈。
「どうしてここに?」
「ちょうど下の階にいてな。悲鳴が聞こえたんだ。それよりあの女子は……」
「はい。急にやってきて鈴花を階段の上から突き落としたんです。あの子……千堂部長の妹――璃紗さんですよね?」
「ああ……遠目だと確証が持てなかったが、今ならはっきりとそうだと言えるな」
そして、同時に歪んだ魔力を感じた。
ああ、これは間違いなく、破壊の化身――奴の魂の欠片に魅入られたな。
次回の更新なのですが、明日……と言いたい所ではあるのですが、申し訳ありません……
ちょっと所用で更新に向けた調整が出来ない為、1日ほど間を空けまして、明後日の更新となります…… orz




