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第83話 異空間と浄化

「それ? それって何ー?」

 セラが首を傾げながら、舞奈に対してもっともな疑問を口にする。

 隣の紡も同様のようで、軽く小首を傾げた。

 

 そんなふたりに対して、

「紡や弥衣たちが囚われていた例の異空間に、朽ち果てた研究施設だか工場だかがあったと前に弥衣が言っていた。もしかしたらそれがあった場所がここだったんじゃないかって話だな」

 と、舞奈に代わって説明する俺。

 

「あ、なるほどー」

「たしかにあそこに引き込まれたとすると、土台だけ残して建物が『消えたしまった』かのようなこの状況も、納得が出来ますね」

 セラと紡が納得の表情でそんな風に言う。

 

「あの空間が崩壊した今もなおここに建物が存在していない状態なのは、あそこから未だに戻ってきていないからなのか、それとも消滅してしまったからのか……。うーん、どっちとも言えないな」

「そうですね。あそこにあった学園――旧校舎は時計塔を残して消滅してしまったと聞きましたし、ここにあった建物も、あの空間が崩壊した時に消滅してしまっていたとしても、なんら不思議ではありませんからね」

 俺の発言に肯定しつつ、舞奈がそう口にする。

 

「ああ。ただまあ、地下階があったのなら、そっちは残っているかもしれないな」

 俺が舞奈に対して頷きながらそう返すと、

「あ、たしかに土台よりも下であれば、あの空間に引き込まれる事なく、こちらに残ったままになっていてもおかしくはありませんね」

「それじゃ、ちょっと調べてみよー」

 と、そんな風に言って、早速あたりを調べ始める紡とセラ。

 

 俺と舞奈もそれに続くようにして、土台が残されている所を重点的に調べていく。

 

 ……だが、一通り確認しても、地下への入口のようなものは見当たらなかった。

 

「……何もなさそーう……」

「ですね……。地下のない構造だったんでしょうか? それとも地下ごと引き込まれたのでしょうか?」

 舞奈がセラに肯定しつつ顎に手を当て、疑問と共に小首を傾げる。

 

「こういった大きな建物で、地下が存在しないというのも逆に珍しい気がしますし、後者のような気もしますが、前者である可能性も否定は出来ませんね」

「そうだな。まあ……とりあえず現時点では、これ以上探索出来そうな場所はなさそうだ」

 紡に対して頷きながらそう結論を出した所で、

『ブッルブッルー! 浄化がもうすぐで終わるブルよー』

 というブルルンの声が頭に直接響いてきた。

 

 おっと、思ったよりも早いな。いや、むしろさすがと言うべきか。

 なんにせよ、それなら一度戻るとしよう。

 

 俺は皆にその旨を伝えると、踵を返して池へと向かって歩き出……そうとした直後、パチッという何かがスパークするような音が聞こえた。

 うん? なんだ?

 

「あれ? 今、なにかパチパチッて音がしなかったー?」

 俺と同じく音が聞こえたらしいセラが、そんな風に言ってくる。

 

「あ、はい。何か音がしましたね。静電気のような感じの」

「はい。私もそう感じました。一体なんだったのでしょう?」

 舞奈と紡もどうやら聞こえたらしく、それぞれそう返事をしてきた。

 それに続くようにして俺は、

「空間の振動……か? かりんたちがやっている浄化の影響がこっちにも及んでいるのかもしれないな」

 という推測を口にする。

 

「あー、ありそうー。じゃあ急いで戻ってみよー」

 そう言って池の方へと向かって早足で歩き出すセラ。

 

 ――池まで戻る道中、何度かパチパチッという音が響いたが、池が視界に入る頃にはまったく聞こえなくなっていた。

 ……って、もしかしてこれ、浄化の影響じゃなかった……のか?

 

 ふとそんな事を思った所で、

「すっごーい! 真っ黒かった池のお水が、とっても綺麗になってるー!」

 と、セラ。

 

 池の方へと顔を向けるとセラの言葉どおり、池の水は完全に透き通っていた。

 そして、セラの声によって俺たちに気づいたかりんとブルルンが、

「あ、戻ってきたみたいね。池の方は浄化したわよ」

「ブルッ! しっかりばっちりくっきりブル!」

 なんて告げてきた。

 

「これはなかなか凄いな。ここまで完璧に浄化されたのなら、池の底まで見えるんじゃないか?」

「はいです。覗いてみたら池の底に魔法陣があるのが見えたのです。それも複数なのです。まるで、サイコロの5みたいな形で配置されているのです」

 俺の問いかけに対し、頷きながらそう返してくる悠花。

 そこに更に、

「5つの魔法陣が組み合わさってひとつの術式になっている感じかな?」

「トッラトッラー。その通りでありますトーラー。そして、四隅の魔法陣から、呪いが放出されているでありますトラァ」

 なんて事を補足するように告げてくる涼太とオトラサマー。

 

「その魔法陣が呪いを発生させているのか?」

 と問いかけると、かりんがそれに対し、

「ええ。見た感じはそうだったわ」

 と、返してきた。

 

 なるほど……と思いながら、早速池を覗いてみる俺。

 すると、たしかに池の底に魔法陣が5つ描かれており、中央の魔法陣以外の4つの魔法陣の辺りは、墨汁のような黒い液体によって水が濁り始めていた。

 

 ……呪いを発生させる魔法陣……か。

 中央の魔法陣だけは違うようだが……

 

「四隅の魔法陣ですが、細部が違うもののあの異空間のプールにあったもののひとつに近いですね。そして中央の魔法陣は、あちらでも中央にあった魔法陣と全く同じです」

 舞奈に続くようにして、紡が魔法陣を見ながらそう告げてくる。

 

「となると……中央の魔法陣は『召喚用』か。これなら破壊してしまっても大丈夫そうだが……どうだ?」

 俺はそう言いながらブルルンの方へと顔を向ける。

 

「ブッルルー。若干、森の方へ流れている魔力があるブルけど、遮断しても問題はなさそうブッル」

 ブルルンがそう言いながら、俺たちが来た方向を前足で指し示す。

 

 魔力が流れている……?

 やはり、さっきのパチパチというスパークは、浄化の影響だったという事か?

 だが、流れている……というのが良くわからないな。

 

 まあ……とりあえず壊しても問題ないのなら、壊してしまうか。

 魔力の流れが遮断される事で、あそこに何か変化が生じるかもしれないしな。

 

 俺はそう考え、

「よし、なら一気に凍らせて、破壊してしまうとしよう」

 と告げると、そのまま湖の方を見て「メナコルザ――!」とそこまで呪文を口にした所で、

「あ、待ってください!」

 という紡の声が響く。

 

 ……うん? なんだ?

前の章でチラッと出てきた伏線を、ようやく回収出来ました……


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、8月10日(土)の想定です!


※追記

誤字と脱字を修正しました。

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