第42話 破壊の化身、魂の欠片
「で、一体どうしたってんだ?」
引っ張られた状態で走りながらそう問いかけると、かりんは、
「破壊の化身の欠片が学校内に突然出現したのだけど、一瞬で消えてしまって……だから、貴方にも探すのを協力して欲しいと思って呼びに来たのよ」
などと答えてきた。
「ああなるほど。しかし……そんな言い方をするって事は、かりんは破壊の化身の欠片が近くにある事を、ある程度感じ取れる……って事なのか?」
「ええ。封印されていた禍神……破壊の化身が放つ魂の波動……のようなものに私――正確に言うなら私の魂ね――が長い間、晒され続けていたせいなのか、なんとなく分かるようになったのよ。でも、今回みたいに現れたのにすぐ消える……みたいなのは初めてだわ」
「なるほどな。うーん……感じ取れるという件について、もう少し詳しく聞いてみたい所だが、まずは欠片をどうにかするのが先か」
「そうね。誰かがアレに魅入られてしまう前にね」
そんな事を話している間に、校舎の入口が見えてくる。
「っと、急いでいるとはいえ、さすがに校舎内をこのまま走るのはまずいな」
俺はそう呟いて隠蔽魔法を使う。
「よし、これでいい」
「それって朝も使ったわよね? 隠形だとしても、移動も出来て音も気配も消えるだなんて、ありえない程の性能だけど……なんなの?」
「ああ、これは隠蔽魔法だ。隠形と言えば隠形だな」
「魔法……。最近の魔術師――いえ、魔道士はそんなものまで使えるのね……」
なんて事を言ってくるかりん。
ちょっと勘違いしていそうだが……まあ、いいか。
さて、そんなかりんの姿だが……俺の隠蔽魔法に合わせるかのように、かなり薄い。
これなら霊感が強いか、俺のような見破る力でも持っていない限りは、見えないだろう。
生徒や教師を避けながら走っていき、階段を登る。
階段を登る。階段を登る。
そのまま防火扉をすり抜け――
「がふっ!?」
――られるわけもなく、思いっきり激突する俺。
引っ張られているせいで、避けようがなかったともいう。
「いっ痛ぅぅ……っ!」
即座に自身に鎮痛効果のある回復魔法を使い、痛みを取り除く。
とそこで、俺と手が離れた事に気付いたらしいかりんが、
「どうしたのよ?」
なんて事を言ってくる。
「俺は扉をすり抜けたりなんて出来ないっての!」
「あ、そういえばそうだったわ……ごめんなさい。一度戻って回り込みましょ」
防火扉をすり抜ける魔法なんて物はないので、一旦防火扉の開いている例の場所から回り込み、先程の場所――部室の並ぶ棟の4階へと到着。
「ここらへんに出現した感じだったんだけど……すぐに消えてしまったのよね」
かりんが周囲を見回しながらそう告げてくる。
「うーむ……。なるほど、わずかに奴の残滓が移動した痕跡があるな……。こっちだ」
「残滓なんて良く分かるわね……。私より凄いんじゃないかしら?」
「いや、俺は実際にこうやって間近にまで来ないと分からないから、かりん程じゃないさ」
そう答えながら残滓を辿っていく。
そして、防火扉の開いている階段まで戻って来た所で、
「ん? 下へ向かっている?」
という事に気づく俺。
「下って……。まずいわね……それって既に魅入られた者がいるって事じゃない?」
と言ってきたかりんに対し、俺は頷き、そして答える。
「ああ。魂の欠片が移動したのか、それともここに生徒が訪れたのか……どっちだかわからないが、既に生徒の誰かに接触済みの可能性が高いな。……このまま放っておくと大変な事になりかねない、急いで追うとしよう」
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