第82話 土台の謎
「この土台……コンクリートで出来ているようです」
「つまり、そこまで古いものではない……という事になりますね」
舞奈の発言に対して紡がそう返すと、
「そうですね。ただ……そうだとすると、ここに建っていたであろう建物の朽ち果てる速度が異常な気がしますが……」
と、頷きながら言う舞奈。
「ああ。もう少し廃墟的なものが残っていても良い感じがするな。自然に朽ち果てたんじゃなくて、建物だけ壊した感じなんだろうか……」
「もしそうだとすると今度は、こんな山奥にまでわざわざ建物を壊しに来る必要があったという事になり、そこまでする必要があったのはなんなのか……という疑問点が出て来ますね」
俺の発言に対し、舞奈がそう返してくる。
「たしかにそうだな。自然に朽ち果てたにしても、人の手で壊されたにしても、どちらにしても不自然すぎる状態だという事に変わりはない……か。まあ……逆を言えば、それはここが『怪しい場所』だと示しているようなものでもあるが」
「はい。もう少し詳しく調べてみた方が良い気がします」
舞奈が俺に頷きながらそう言うと、セラもそれに肯定するように、
「じゃあ、もうちょっと探してみよー」
と言ってきた。
まあもっとも……詳しく調べると言っても、土台しかない以上、調べられる所はそんなにないんだが……
……
…………
………………
「あれ? この土台……この先にもあったような感じがしますね……」
そう言いながら草むらを指差す紡。
すると、土台そのものが草むらの下――土に半ば埋もれたような状態で、僅かに顔を覗かせているのが見えた。
「うーん……。土台の上に土が覆いかぶさって、更にその土に草が生えた……というような感じですね、これは」
「わざわざ土台を土で隠したって事ー?」
呟くように推測を口にした舞奈に、セラがそう問いかける。
「そういう事になりますね。もしかしたら、こっちも以前は土で覆われていたのかもしれませんね」
舞奈がセラに対して頷きながら返答すると、今度は紡が、
「覆われていた土が何らかの理由で取り除かれた為に、下に埋もれていた土台が出てきた……というわけですか」
と、そんな風に言った。
「はい、その通りです。ただまあ……これは状況からの推測ではなく、あくまでも可能性のひとつですが」
「なんにせよ、この辺り一帯にもう少し土台が広がっていそうな感じだな。そしてそうなってくると、ここにはそれなりに大きな建物があったという事になるが……」
舞奈にそう返しつつ、俺は周囲を見回してみる。
うーん……。良く見てみると、この辺りは凄まじく成長した雑草が生い茂ってはいるものの、木はまったく生えていないな……
上から見た感じでは木々に覆われている感じだったし、自然にここだけ木が生えなかった……というのは、ちょっと考えられないな。確実に人の手が加わっていると見た方が良いだろう。
「まあ……とりあえず、周囲一帯の雑草を刈り取ってみるとするか」
俺はそう告げると、生い茂っている雑草を見据え、
「エアルマレードワイルッ!」
と、言い放った。
「た、竜巻!?」
なんていう驚きの声を発するセラ。
エアルマレードは『緑色に見える鎌鼬』を発生させる魔法だが、これは『緑色に見える鎌鼬の渦』を発生させる魔法なので、見た目としては、たしかに小さい竜巻そのものといった感じではある。
まあもっとも……見た目はどうあれ『鎌鼬』である事に変わりはないので、竜巻のように見えても、近くのものを吸引して吹き飛ばすような性質を持っておらず、あくまでも渦に触れたものを『切断する』という性質なんだけどな。
――という説明をすると、
「竜巻も恐ろしいですが、これはこれで恐ろしいですね……」
と言いながら、防御障壁を魔法の進路に配置する紡。
竜巻の如き鎌鼬は、その防御障壁を細切れにして消滅させ、そのまま草を刈り続ける。
「……い、一瞬で消されました……。凄まじい威力ですね……」
「まあ……言ってしまえば、あれって切れ味の鋭い刃を、物凄い速度で振り回してるようなものだからな。障壁だと一気に耐久力が削られやすいってのもあるな。障壁は性質上、強い攻撃に対してより多くの耐久力を消耗するだけじゃなく、1発は1発として耐久力を消耗する面もあるからな」
「威力の高い一撃には強くても、連続ヒットする攻撃には弱いというわけですか……」
「ま、そういう事だ。だから、強度はほどほどで発生させる数を多くする――壁をいくつも重ねた方が、ああいうものに対しては有効だな」
「なるほど……」
と、俺の説明に紡が納得した所で、
「ところでこれ、どうして緑色の光が見えるんですか? 風って透明ですよね……?」
というもっともな疑問を口にする舞奈。
「ああ、それは術式の中に『意図的に色をつける』というのが存在しているからだな。何故そうしているかというと、透明だと『どこにあるのか分からなくて危険』だからだな。目視出来る事で回避されやすくなるという問題はあるが、味方を攻撃する魔法と化すよりはマシって事でこうなっているんだ」
「た、たしかに見えないと、うっかり触れて切り刻まれてしまいかねませんね……」
――と、そんな事を話している間に、竜巻の如き鎌鼬は辺り一帯の雑草を一掃しており、『土台』の上に覆いかぶさっている土だけが周囲に広がっていた。
見回してみると、ところどころ土の合間から『土台』が露出していた。
「予想通りと言えば予想通りだが、結構な広さがありそうだな……」
「だねー。いったい何が建ってたんだろう?」
俺の呟きに、セラが同意しつつ小首を傾げる。
「それと、やはりという感じではありますが、これだけ広い――大きな建物が土台以外なにも残っていない……というのが不自然すぎですね」
周囲を見回しながらそんな風に舞奈が言った所で、
「はい。まるで、建物自体が『消えてしまった』かのようです」
と、紡。
……ん? 消えた?
「……あっ!」
「そ、それです!」
俺と舞奈は同時に『ある事』に気づき、そんな声を発した――
果たしてここにあったのは……?
とまあそんな所でまた次回!
次の更新も予定通りとなります、8月7日(水)の想定です!




