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第79話 フヨフヨうにょーん

「よし、早速ブルルンの探知が切れた所まで行くとしよう」

「どうやって行くです? 自転車で空を飛ぶです?」

 俺の発言に、悠花がそんな問いの言葉を投げかけてくる。

 

 俺がそれに対して『それでもいいし、普通に飛んでいってもいいし』という返事をするよりも早く、

「自転車で空を飛ぶって……。こっちはそんな移動の仕方してたのね……」

「ブッルゥ……。カゴがキツいから、自転車は勘弁ブルゥ」

 なんて事を言ってくるかりんとブルルン。

 

 自転車は微妙そうだな……と判断した俺は、

「まあ……普通に飛んでいくか」

 と告げて飛翔魔法を発動。

 その場にいる全員が飛行状態になっている事を確認すると、

「よし、ブルルン任せた」

 と言って、ブルルンに案内を促す。

 

「ブッルブッルー、任せるブル!」

 ブルルンはそう返事をすると、自前の飛行能力で俺の前を飛び始める。

 

「……尻尾。尻尾、気になる……」

 何故かセラがちょっとカタコトな感じでそんな事を呟く。

 するとそれに続いて、

「フヨフヨしているのです。オトラサマー、フヨフヨ出来ないです?」

 なんて事を口にする悠花。

 

「トッラー? フヨフヨでありますかトラァ? 良く分からないでありますが、飛行すればいいでありますトーラー? 飛行は普通に出来るでありますし、やってみるでありますトラーラよー」

 オラサマーはそんな風に言って、自前の飛行能力で悠花の正面、少し離れた所を飛び始める。

 

 すると……

「……尻尾。尻尾、気になる……です」

 などいうセラと同じ事を口にし始める悠花。

 

 いやまあ、たしかにブルルンもオトラサマーも、自前の飛行能力で空を飛んでる時は、こう……尻尾がフルフルと揺れ続けてるから、じっと見ていると気になってくるかもしれないな……

 

 なんていうどうでもいい事を考えながら、そのままフヨフヨと飛ぶブルルンを追って南下する事しばし……

 

「ブッルゥ。ご主人、この辺りで途切れたブルよー」

 と言いながら停止するブルルン。

 

「この辺りはたしか……昔、たたら製鉄が行われていた場所だったはず」

「はいです。そして去年、なんだか呪いを持っていそうな紫色のオーラを纏った、蜘蛛みたいな妖魔が出た場所でもあるのです」

 涼太と悠花が地上を見ながらそんな風に言ってくる。

 

 蜘蛛の妖魔――魔物というと、アラクネという奴が思い浮かぶが、この国では違うだろうなぁ、きっと。あいつは紫色のオーラなんて纏ってないし。

 

「まあたしかに、(もの)()の類が出て来そうな雰囲気というか、そっち系の霊的な力を感じるわね……」

「物の怪――と言えば、古都の方では物の怪というか、妖怪の偽物が出たんでしたよね?」

 かりんの言葉を聞いた紡が、そんな風に問いかける。

 

「そうね。『見た目』も『動き』も『重さ』も、私の知ってる妖怪そのものだったけど、倒したら掻き消えたから偽物――幻体の類だったわね」

「そこまで完全に似せた幻体って作れるものなのですか?」

 再び紡がそう問いかけると、

「舞奈の持つコピーの魔法と同等の魔法や術、あるいは弥衣の式神――正確には私の作った形代を、擬似的に使い魔化したものだけど――を使えば可能なんじゃないかしらね? 私たちはそう結論づけたし」

 なんて肩をすくめながら言って、舞奈の方を見るかりん。

 

「あ、なるほど。でも、私のコピーの魔法は『本物』がないと出来ないので、もし本当にコピーの魔法だったらどこかに本物――本体もいる事になりますね」

「ええ、そうなるわね。だからまあ……それを考えると、どちらかというと後者――式神の類に近かったんじゃないかしらね」

 舞奈の言葉に頷きつつそう返した所で、

「式神って、使い魔の魔法で作れるの?」

 という問いの言葉を口にする涼太。

 

「そうね。弥衣は問題なくやっていたから、形代さえあれば作れると思うわよ。もちろん、正規の方法で作れるのであれば、特にそこまでする必要はないと思うけど」

「なるほど……」

 かりんの言葉に涼太が上着のポケットから人の形をした紙――これが形代というものだったはず――の束を取り出し、使い魔の魔法を発動。

 と、その直後、束になっていた形代が拡散するように周囲に広がり、そして立ち上がった状態で宙に浮いた。

 

「なるほど、こういう事かぁ。うん、これは便利かも」

 なんて事を涼太が言うと、

「さすがなのです!」

「トッラー! さすがでありますトーラァ!」

 と、悠花とオトラサマー。

 

「自前で形代を用意出来るあたりが、弥衣とは違うわね……」

「弥衣さんもコピーの魔法が使えたら、自分で用意出来るのでしょうが……」

「うーん……。もし使えたとしても、舞奈くらいの高い資質で使える上位魔法じゃないと、おそらく同じ形のただの紙となってしまうだろうけどな」

 かりんと舞奈に続くようにして、俺が肩をすくめながらそう言った所で、

「んんんー? なんか急にあっちの方に『うにょーん』みたいな感じの、気持ち悪いのが出てきた気がするぅー」

 なんて事を口にしながら、地上の一点を指差すセラ。

 

 うにょーん……というと、咲彩を例の異空間に引き摺り込もうとしていた呪詛の手だな。

 あれと似たようなものの存在を感じ取ったようだが……一体なんだ?


 などとそんな風に思った所で、

「……言われてみると、何かの呪いの力らしきものを僅かに感じるのです」

 と、悠花が同意する。

 

「ブッル。魔力の類は感じないブルゥ」

「……という事は、魔力とは性質が大きく異なる呪いの力……か? もしかしたら俺たちが接近した事で、何かが反応――というか共鳴したのかもしれないな」

 ブルルンの言葉に、俺は推測をしつつそう告げる。

 

「共鳴……かぁ。まあたしかに、これだけ『霊的な力』を有する者が集まっていれば、そういう現象が発生してもおかしくはないね」

「ええ、そうね。それは大いにあり得るというものだわ」

 そんな風に涼太とかりんが同意してきた通り、俺たちという存在『そのもの』が、『何か』を刺激した可能性あるかもしれない……という事だ。

 

「そっちへ行ってみます?」

「そうだな、とりあえずそうするとしよう。他に手がかりらしいものもないし、あとは直接見て判断するしかないだろうからな」

 舞奈の問いかけに頷きながらそう返し、俺たちはセラの指し示した方へと向かって降下していくのだった。

サブタイトルが、これといって思いつかなかったので、なんとも言い難い感じに……


ま、まあ、そんな所でまた次回!

次の更新は7月27日(土)の予定となりまして、そこからは通常の予定に沿った更新日に戻ります!

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