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第78話 状況確認と術式の謎

 ――ブルルンに状況を聞いてみると、どうやら何の問題もなく進んでいて、もうすぐ魂を定着させる工程に入るところだと言われた。

 

 それを弥衣に対して伝えると、

「それなら良かった。そこまで行けば一安心。……日数がかかるけど……」

 と弥衣が言い、それに横にいるギネヴィアが続く。

「宿の方は桜満殿の配下の者が代わりに対応するのであったか? ……正直、誰も来ない気はするが」

 

「それはまあ……たしかにそう……ですね……」

 そう言いながら顎に手を当てる舞奈に続いて、

「なにか、あそこまで『宿泊客が訪れてくれる施策』は考えないと駄目かなぁとは思っているよ。宿泊客が常にいるような状態なら、宿の様子を伺っていた何者か――隠形の使い手と皆が言っている者――や、それ以外の悪意を持った者たちも手出ししづらくなるだろうからね」

 と、そんな風にいう桜満。

 

「いっそ、あそこまで車で行ける道を作るとかは出来ぬのだろうか?」

「そう簡単に作れたら苦労はしない」

 ギネヴィアの発言に対し、弥衣が肩をすくめながらそう返す。

 

「たしかに、車が通れる道を作るのは容易ではないね。だけど、道そのものはあるわけだし、整備してもう少し歩きやすくしてやれば……」

 桜満がそんな事を言いつつ、なにやら考え込み始める。

 そしてその直後、咲彩がやって来て、

「あ、いたいた。迎えに来たよ!」

 と言ってきた。

 

 ……まあ、宿の事はとりあえず桜満に任せておいて、俺たちはそれぞれの場所へ戻るとしよう。

 

 というわけで、咲彩のゲートで古都へ向かう弥衣と綾乃を見送った後、俺と舞奈とかりんは、一度研究施設の方へと戻り、セラたちの見学が終わるのを待った。

 

「そう言えば、盆子原(ぼんごばら)さんのお兄さん――涼太さんと、紡さんはどこにいるんでしょう?」

「紡と涼太なら、咲彩たちと一緒に隠形鬼の伝承について詳しく調べるってんで、施設内の書庫に行ったはずだ。そろそろ戻ってくるんじゃないか?」

 舞奈の疑問に対してそう返しつつ、しばらく待っていると、見学を終えたセラたちと一緒に紡と涼太も姿を見せた。

 なんでも、戻って来る途中で出会ったらしい。

 

「それで……隠形鬼の伝承について、何か新しい情報は得られたの?」

 かりんがそう問いかけると、

「一般的に出回っている情報がほとんどでしたね。ただ、四鬼に関する陰陽術の術式に関して記された書物があったので、術式をコピーしてきました」

 と言って、術式のプリントされた紙を差し出してくる紡。

 

 そこに、

「術式的には正しい手順で構成されているし、問題なく発動出来そうなんだけど、何故か上手くいかないんだよね」

 と、涼太が補足するように告げてくる。

 

「うーん……。陰陽術まではさすがに詳しくはないけど……符術や、巫術(ふじゅつ)――結界や方陣の一種として見るなら、たしかに問題はなさそうね」

 術式のプリントされた紙を見ながらそんな風に言うかりん。

 それに続いてブルルンも、かりんの横から覗き込みながら、

「ブッル。魔力的な回路として見ても問題はないブルね」

 と言ってきた。

 そしてそこにさらに、

「トッラートッラー。少なくとも、あの廃墟で見つけたデタラメな術式や無駄だらけの術式と違って、いたって普通の無駄のない正しい術式でありますトーラー」

 と、オトラサマー。

 

 そろってそう言う以上、術式自体に問題はないと考えていいだろう。

 となると……

「――『術式の発動を成立させる条件』を満たせていないんだろうな」

 

「術式の発動を成立させる条件……です?」

 小首を傾げながら問いかけてくる悠花に、

「ああ。例えば俺の転移魔法だな。これは事前に『印』をゲートの出口にしたい場所に刻んでおかないと、『ゲートを開く術式』だけでは発動させられないからな」

 と、そう答える俺。

 

「あ、なるほどなのです」

 悠花が納得して頷いてみせると、それに続いて、

「つまり……この術式にも前提となる何かが必要というわけですか」

「うーん……。書物には書かれていなかったから、さっぱりだね……」

 と、そんな風に言ってくる紡と涼太。

 

「その書物、不完全だったりしないんですか?」

「そうですね……。上中下、あるいは何巻のような分かりやすい表記はなかったのですが、前後に別の書物が存在している可能性は否定出来ませんね……」

 舞奈の問いかけに対し、そう答える紡。

 そして涼太も、

「言われてみると、書物の記述に少し妙な所……というか、『こういったものに関する知識がある事を前提』にしているような部分がいくつかあったなぁ……」

 なんて言ってきた。

 

「となると、その『前提として必要な知識』について書かれた書物があって、そこにこの術式で必要なものも書かれているかもしれませんね」

 舞奈がそう推測を口にすると、

「ですが、それっぽい書物は書庫にはありませんでしたね……」

 と返す紡。

 

「その書物が見つかった場所を探したら、出てきたりするのかなー?」

「あ、そうですね。たしかにそこは調べてみたい気がしますね」

 紡がセラの発言に同意し、そんな風に言う。

 するとそこで、

「その書物の名前をお教えいただければ、お調べしてご連絡いたしますよ」

 と、俺たちの会話を聞いていた研究員の女性――というか、セラたちの見学の案内役だった女性――が、言ってきた。

 

「あ、それはありがたいですね」

 涼太がそんな風に返し、書物の名前を告げる。

 

 女性はそれに対して、

「なるほど……あれですか。あれでしたら『良く知っている者』が手に入れた書物ですので、後ほどその者に聞いてみます」

 などと、『良く知っている者』の部分を強調しながら返事をしてきた。

 

 強調する意味は良く分からないが、まあ……とりあえず、任せておけばこの件は大丈夫そうだな。

 

 というわけで俺は――

「じゃ、そこは任せて、俺たちはそろそろ移動するか」

 と告げて、ゲートを開くのだった。

珍しく長くなりすぎずに区切りがつきました……

(といっても、若干長めではありますが……)


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新は所々諸々の都合により、少し間が空きまして……7月22日(月)の想定です!

(その次は7月27日の更新予定で、そこから先は通常どおりに戻る予定です)

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