表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
424/503

第77話 追跡術式と方針

 これ以上、石杜姉妹のところで話しているのもどうかという事で、俺たちは病室を出て、談話スペースのような場所へと移動する。

 

「これまでの話を聞いた感じだと……『憑依の異能、あるいは術式を使う者』を、どうにかして見つけ出す事が出来れば、色々な情報が得られそう……よね」

 一緒に病室を出た綾乃が、顎に手を当てながらそう言ってくる。

 それに対して桜満が、

「まあ、『見つけ出す事が出来れば』だけどねぇ……」

 と、ため息交じりに返して肩をすくめてみせた。

 

「どこの誰なのかさっぱりですからね。仮に怪しい人物を見つけたとしても『本人』ではない可能性もありますし」

「そうだな。また『憑依しているだけ』というのは、十分にありえる話だ」

 舞奈の発言に俺が頷きながらそう言うと、そこにかりんが続く。

「ホムンクルスも面倒な存在だけど、憑依はさらに面倒よね……」

 

「そう言えば、ブルルンちゃんに継続探知させていたと思いましたが、どうなっているんですか?」

 舞奈がもっともな疑問を口にしてくる。

 それに対して俺は、

「それなんだが、どうも南へ逃げた所で途切れているみたいなんだよなぁ……。探知に気づいたか、あるいは用心の為に何らかの隠蔽工作をされたか……だな」

 と、そう返す。

 なにしろ今朝、「ブッルゥ……。反応がなくなってしまったブルゥ……」って、耳をへニャっとさせながら言われたからな。

 

「そうだったのですか……。やはりというかなんというか、厄介で手強そうな相手ですね」

「まったくだ。もう少し隠蔽しづらい強固な追跡術式を作って、それをブルルンに使わせないと駄目そうな気がするな」

「強固な追跡術式……ですか?」

「ああ。『憑依によってどういう霊的な変化が生じているのか』という部分を詳細に解析してやれば、憑依解除時の魂の動きを、今よりも強固かつ詳細に追跡する事が可能になるはずだからな」

「なるほど……」

「ただ……それにはまず、再び『誰かに憑依している状態のあいつ』に遭遇しないと駄目だけどな。それと……霊的な変化を解析するのは少々厄介でな、1回の遭遇で解析しきれるかというと……ちょっと厳しそうだという問題もある」

 納得の表情をみせる舞奈に対して俺がそう告げると、

「あ、解析でしたら私も手伝います。色々な術式を『分析』して、ある程度は『構造』も分かるようになってきましたし、多分絶対出来ると思います」

 と、そんな風に返してくる舞奈。


 ……それは、『多分』と『絶対』のどっちなんだ……?

 

 なんて事を思っていると、そこに更にかりんが言葉を紡いでくる。

「霊的な変化という部分であれば、私もある程度分かるわね。3人がかりなら1回でもいけるんじゃないかしら」

 

 かりんはともかく、舞奈の習熟速度が凄まじいな……

 術式を分析する事で、魔法の構造そのものを把握していっているから……なのだろうか?

 

 などと思いつつ、

「たしかに……。3人で分担してやれば、1回で解析しきる事が出来そうな気もするな。まあ、そもそも遭遇しなければならないという問題は残るが」

 と、腕を組みながら返す俺。

 

「そうだね、そこが一番の問題だと思うよ。もしも先の一件で、こちらの事を警戒しているとしたら、そうそう簡単には憑依した状態で出てきてくれないかもしれないし」

 頷きつつそう言ってくる桜満に続くようにして、かりんが顎に手を当てながら疑問を口にする。

「そう言えば……例のアンティークショップの店主も、ホムンクルスを使っていたという意味では、黒野沢や黒志田と同じだけど、そっちとは無関係なのかしらね?」

 

「うーん……。現時点ではなんとも言い難い所だね……。なにしろ、店主が取引してきた相手に、黒野沢も黒志田もいなかったからね」

 思考を巡らせながらそう返事をする桜満。

 

「ならば、憑依の使い手……いや、無理か」

 ギネヴィアが何かを言おうとして、すぐに自己否定した。

 それに対して綾乃が、

「えっと……何を言おうとした……の?」

 という問いの言葉を、小首を傾げながら投げかける。

 

「ああいや……憑依の使い手が、あのアンティークショップで取引していたという記録はないのだろうか……と、問おうとしたのだ。が、そもそも憑依の使い手が何者なのかわからぬ現状では、まず『誰』なのかを特定せねば調べようがないなと思い直してな」

 綾乃に対してギネヴィアがそんな風に返答すると、そこに弥衣が付け加えるように、

「うん、たしかにその通り。それに……誰かに憑依した上で取引していたりしたら、特定するのは困難そう」

 と言った。

 

「まあ、取引した相手を全て洗っていけば、もしかしたら尻尾くらいは掴めるかもしれないけど、それにはまだまだ時間がかかるね」

 桜満がそう言うと、舞奈は顎に手を当て、

「となると、一旦ブルルンちゃんの探知が途切れた辺りを調べてみるのが良いかもしれませんね。もしかしたら、こう……残り香みたいなものがあるかもしれませんし」

 なんて事を言った。

 そしてそれに対してかりんが、

「残り香って言い回しはどうなのよ……」

 と呆れ気味に返しつつも、

「でもまあ、何かの痕跡は見つけられるかもしれないわね」

 という肯定の言葉を口にした。

 

「ん、なるほど。だとしたらこっち――古都側は、隠形鬼……というか隠形の使い手探し?」

「そうだな。それがいいと思う。……が、メンツはちょっと調整が必要だな。かりんを俺の方に入れる必要があるし」

 弥衣の発言に頷きつつも、そう返す俺。

 するとそこで綾乃が、

「――それなら、私が古都の方の隠形の使い手探しとやらを手伝う……わ」

 という申し出を口にした。


「ん? こっち――あのふたりの事はいいのか?」

 俺が首を傾げながらそう問いかけると、綾乃はちらっとふたりの病室がある方へと視線を向けてから、

「少し気にはなる……けど、もうほぼ大丈夫だと思う……し」

 と、そんな風に返してくる。

 

 それならまあ……という事で、咲彩にその旨をメッセージで伝えると、すぐに『了解!』『問題なし!』『迎えに行きます』という3つのスタンプが連続で返ってきた。

 

 ある意味、咲彩らしいというかなんというか……

 なんて事を思っていると、弥衣が俺の方を向き、

「ところで……ジェネレータールーム……だっけ? あっちはどうなってるの?」

 という疑問を投げかけてくる。

 

 あ、そう言えばどうなっているんだろう……?

 見学に行ったセラと一緒にいる――というか、半ば連れて行かれたブルルンに聞いてみるとするか。

なんというか、思ったよりも話が進みませんでした……


ま、まあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなりまして、7月17日(水)の想定です!


……が、来週は後半に少々連続して予定があります為、平時通りの更新が出来ません。

その為、その次の更新は、先月末~今月頭と同じ変則的な更新になりそうです……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ