第41話 昼休みに現れた少女
「しっかし、防火扉が開いているとはなぁ……」
「さすがに驚いたよね」
昼休み――雅樹と紘都が中庭でパンを食べながらそんな事を言ってくる。
「……ところで、紘都は小井出と一緒じゃなくていいのか?」
「あ、うん。なんか月城さんと話す事があるとかで、一緒に屋上で食べるってさ」
俺の疑問にそう答える紘都。
ああ、だから舞奈が昼休みになるなり教室から出ていったのか。
「なら、俺たちも屋上に行けば良かったんじゃないか?」
「うーん……ここの所、月城さんには遠慮させてしまっているからね。たまにはふたりにさせようかなって思ったんだよ」
「ああ、なるほど……」
「月城と言えば……昨日の放課後、ふたりで校舎内を回っていたみたいだな。ウチのクラスの奴が、ふたりで歩いているのを見たって言ってたぜ」
雅樹が俺の方を見て、そんな事を言ってくる。
「ああ。学校内――校舎を案内してもらっていたからな」
頷いてそう答える俺に続き、紘都が同意の言葉を紡ぐ。
「そうだね。それは僕も知っているよ。弓道場でとんでもない物を見せられたし」
「とんでもない物? また透真が何かやったのか?」
「なんで俺が何かやったという前提なんだ……?」
「月城がとんでもない事をするわけがないだろ?」
「それは……うん、まあ、そうだな……。だが、ちょっとばかし曲がる矢を連続で放った程度だぞ」
「曲がる矢ってなんだよ!? ……あ、いや……待てよ? 矢はそもそも弓なりに飛ぶから、縦にはある意味曲がる……と、言える……のか?」
なんて事を言う雅樹。それは曲がるとは言わないと思うが……
「いや、横に曲がる矢だ」
「横かよ!? いや、そんな気はしてたけどなっ!?」
「あはは。あれには驚いたよ。一体どうやってやってるの? あれ」
今まで俺と雅樹の会話を聞くのに徹していた紘都が、そんな問いかけをしてくる。
「んー、そうだな……言葉で上手く説明出来ないな。なんというか……直感でやっているというか……」
どう答えたものかと思いながら、とりあえずそんな事を口にする俺。
いっそ、魔法の事を説明する方が早いか? だがなぁ……
舞奈に話したのは、色々な意味でそうした方が良いという結論になったからだが……基本的に、おいそれと話す物ではないと桜満から言われているしなぁ……。うーん……
などと悩んでいると、
「あ! こんな所にいたのね!」
と、朝の霊体の少女が声をかけてきた。
「誰?」
もっともな疑問を口にする雅樹。
「ああ、朝出会った……。……すまん、そういえば名前を聞いてもいないし、名乗ってもいなかったな。――俺は、成伯透真だ」
「……そういえばそうね。私は『かりん』よ。……って! 悠長に自己紹介している場合じゃないわよ! 大変なのよ! ちょっと来てっ!」
霊体の少女――かりんは名乗るなり、俺の手を引っ張る。
「お、おい! なんなんだ急に!」
「いいから早く早く!」
更に力を込めて引っ張るかりん。
「悪い、雅樹、紘都。なんだか良くわからんが、ちょっと行ってくる」
ポカーンとしている雅樹と紘都に軽く謝ると、俺はかりんに引っ張られる形で走り出した。
なにか起きたようですが……
という所で、また次回! 明日更新予定です!




