第40話 霊体と封印と破壊の化身
「肉体を失った?」
「昔……何百年も前の話だけど、破壊の化身――太古から存在する妖異の根源とも言うべき存在……その『欠片』が、八百万ほど集まって禍神と化した事があったのよ。で、それを封印するために行った儀式の結果……といった所かしらね」
俺の問いかけに対し、霊体の少女がそう答えてくる。
……たしかに、桜満が昨日言っていたように、この辺には過去に邪悪な存在を封じたという伝説が残っている。
いるんだが、肝心な部分があやふやというか……昨日、舞奈の部屋から自室に戻った後、少しだけ調べたけど『邪悪な存在』というのがどういった存在であったのかは、さっぱり分からなかったんだよなぁ……
だが、どうやら『邪悪な存在』というのは、禍神……いや、もっと言えば破壊の化身だったようだ。
「なるほど……。封印の儀とやらがどういう物なのかは知らないが、大掛かりな儀式によって展開しなければならない程の術式が用いられたと考えれば、納得は出来るな」
「納得は出来る……ねぇ。そんな風に言うって事は……貴方、退魔師とか陰陽師とか魔術師とかそんなのだったりするのかしら?」
「その中だと魔術師が一番近いな。まあ、正確に言うと『魔道士』だ」
本当に正確に言うのであれば、大魔道士であると告げるべきなのかもしれないが、どうにも自分から『大』と付ける気にはならないので、魔道士とだけ告げた。
「魔道士……。貴方もあいつの欠片を滅した事が?」
「ある。一応、奴の魂の欠片を八十億ほど纏めて葬り去った事もあるぞ」
「……八十億って……。それは最早、貴方自身が化け物ね」
俺の説明に呆れた表情でそんな風に言ってくる霊体の少女。
「そんな事はないと思うが……。葬り去ったのも、奴の力を利用したようなもんだし」
なにしろ、俺がやった事といえば、奴を次元の狭間に放り込んだだけだしな。
「それでも桁が違いすぎるわよ。大体――」
霊体の少女が再び呆れた表情でそう言った所で、予鈴が鳴った。
おっと、これ以上ここで話をしていると遅刻になってしまうな……っ!
「すまん。朝のホームルームが始まりそうだ。話はまた後でな!」
俺はそう言い残し、隠蔽魔法を使って走り出す。
そんな俺の後方から、
「えっ!? ええっ!? き、消え……た!? ど、どういう……事? もしかして隠形? でも、あれはここまで完全に消えられるようなものじゃ――」
という、霊体の少女の驚愕と疑問の声が聞こえてくる。
ある意味、隠形で正解なのだが、それを説明している余裕はなかった。
なんだか、ようやく少しずつ『ローファンタジー』になってきた気がします……
(もうちょっと展開が早くても良かったかなと思いつつ……)
とまあそんなこんなで次回の更新ですが……無論、明日です!




