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第61話 幽霊宿と咲彩と透真

 ――咲彩――

 

「良いと思う……けど、かりんとかとも話をした方が良いと思う……よ」

 カナちゃんがそんな風に返してくる。

 そして、ミイちゃんがそれに続くようにして、

「うん。続きは明日にしよう」

 と、言ってきた。

 

 それに対してボクは「たしかにそうだね」と返事をしつつ、ふと疑問に思った事を口にする。

「そう言えば……なんだけど、ここって昼間はどうなってるの?」

 

「普通に存在しておるぞ。もっとも、現世からこちらへ来る事は出来なくなるがの。逆にこちらから現世へ行く事は、現世の人間に限られるものの可能じゃ」

「なるほどねぇ。まさに良くある幽霊宿の法則って感じだなぁ」

 ボクがそんな風に返すと、あやめが困惑と驚きの入り混じった表情で、

「……良くあるのかの?」

 なんて問いかけてくる。

 

 おおっと。あくまでも『オカルト』の話だって言わないと駄目だね。

 

「あ、うん、オカルトとしてはって話だけどね」

「オカルト……というのは良く分からぬが、まあ……とりあえず他にもあるという事は理解したわい」

 ボクの説明にそんな風に言ってくるあやめ。

 

 ……ちょっと勘違いされてしまった気がするけど……ま、まあ、他にも幽霊宿ってあるよね。多分。きっと。

 

「ま、なんにせよ明日出直すとしようか。部屋の前に印は刻み終わっているし、直接ここに来るのは簡単だしね」

 ボクがそんな風に言うと、あやめは、

「……また、なにやらとんでもない事を言っておるのぅ……」

 なんて事をため息混じりに呟いた後、やれやれと首を横に振ってみせる。

 そして、一呼吸置いてから、

「まあよいわ。明日の昼にまた来るのであれば、妾だけではなく、雪江や美夜子らも呼んでおく事にするぞい」

 と、腕を組みながら続けた。

 

                    ◆

 

 ――透真――

 

「――とまあ、そういう感じなんだよ」

 転移でやってきた咲彩が、昨晩の出来事……というか、幽霊宿の説明をそう言って締めくくる。

 

「ブッル! 霊泉というのに興味があるブルッ!」

「たしかにでありますトラー」

「え? 今の話を聞いて興味深い所そこなの? いやまあ、わからなくはないけど」

 ブルルンとオトラサマーの発言に対し、咲彩がそんな風に困惑と呆れの入り混じった表情でそう返す。

 それに対して俺は、一呼吸置いてから、

「まあ……なんだ? 霊水を含めた幽霊宿全体が興味深いな。あまり他に例がないというか……結構変わった感じだし」

 と、腕を組みながら口にする。

 

「ですです。悠花もあまり聞いた事がないのです」

 悠花がそんな風に言うと、それに続くようにして、

「たしかにちょっと特異な幽霊宿ですね。というか、そもそもそのような状況を作り出せる者が、かつていたというのも驚きですが……」

 と、頬に手を当てながら言う紡。

 

 俺はそれに「そうだな」と頷いてみせると、腕を組んで思考を巡らせながら、

「しかし、その空間を生み出しているのは術式ではなく、呪い……か。呪い自体も術式で生み出されているものもあるが、かりんが術式ではないと言ったのなら、それとは違うな。囚われている幽霊――魂が、自らを、あるいは宿を呪っている……のか?」

 という呟きを口にする。

 

「え? 自分や宿を呪う? そんな感じはなかったけど……」

「ああ、正確に言うのなら、知らず知らずの内に自らを呪縛している感じだな」

 首を傾げながら、ある意味もっともな疑問を抱く咲彩に対して俺がそう説明すると、

「知らず知らずの内に自らを呪縛……自らがなんであったのかを覚えていないタイプの幽霊とかがそんな感じだよね」

「あ、言われてみると、ずっとその場に佇んでいるだけの幽霊とかが、そういう感じだったりするのです」

「うんそうだね。そして、そうだとすると……その幽霊宿の『延々と続く日々をただただ繰り返しているだけの幽霊たち』が、その呪縛の源かな?」

 なんて事を言ってくる涼太と悠花。

 

 さすがと言うべきか、ふたりとも『似た事例』に、遭遇した経験があるみたいだな。

 などと思っていると、舞奈がこめかみに指を2本当てながら、

「なるほど……『ずっとその場に佇んでいる』のと同じで、延々と続く日々を繰り返している事それ自体が、呪縛を生み出している……と、そういうわけですか」

 と、そんな風に呟くように言ってきた。

 

「ま、そういう事だ。もっとも、そうなるように『仕向けている』別の呪いの存在もあるようだが」

「別の呪いって?」

 咲彩のもっともな問いかけに対し、俺は肩をすくめながら答える。

「残念ながら、現時点ではそこまでは分からん。ただ、そうでなければ『成り立たない』というだけの話だ」

 

「……もしかして、ボクらがここの所ずっと遭遇し続けてきた――というか、気配は感じるけど見つけられず、尻尾すら掴めないでいる何者かが関係していたり?」

「あるかもしれないし、ないかもしれないが……呪いの根幹が自然に生まれたものではなく、誰かが生み出したものである以上、何らかの繋がりがあると考えた方が良い気はするな」

 咲彩の推測に対し、俺はそう返事をする。

 そして更に思考を巡らせながら、

「……その幽霊宿がある辺りも、桜満から受け取った資料に記されている『対象』であった事を踏まえると、むしろ繋がりがある可能性の方のが高いようにも思える」

 と口にした。

 

「案外、こちらの一件とも繋がりがあったりするかもしれませんね」

「そうですね。現時点では情報が不足していて詳細な分析が出来ないので絶対とは言えませんが、諸々の状況から考えると、関係性があるのではないかと私は思います」

 舞奈が紡に対して頷きながら、そんな事を口にしてくる舞奈。

 

 絶対ではないとはいえ、舞奈がそう言うのであれば、やはり何らかの繋がりがあるのだろう。

 そもそもの話だが……黒志田の足取りを追った結果、離れた2ヶ所の地点で『足跡』が発見されたというのが、そもそも謎だったしな。

 

 例のアンティークショップの店主に黒志田……

 憑依能力を持つ敵に姿の視えない敵……

 そして、幽霊宿と呪い……か。

 

 一見すると何の繋がりもなさそうな感じだが、実際には、これらは全て繋がりがあるのかもしれないな……

ようやく、咲彩から透真に視点が戻る所に到達です。

なんというか、想定よりも大分咲彩視点が長くなりました……

ともあれ、ここからは完全に透真視点です。


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、5月18日(土)の想定です!

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