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第50話 ノートと雑誌の記事

「とりあえず、このジャマーに関しては桜満に任せるとしよう。さすがにこの手の機械に関しては、魔法でどうにか出来るものでもないし」

 そんな風に俺が言うと、

「ちなみになのですが、魔法で電波を妨害したり、妨害を打ち消したりは出来ないのです?」

 悠花がそんな問いの言葉を投げかけてくる。

 

「不可能とは言わないが、かなり面倒だな……。まず『それ』がどういう波動を持っているのかを調べて、そこから打ち消せる波動を生成する術式を構築する必要があるからな。正直、道具を使った方が早い」

「なるほどなのです。そういうものなのですね」

 俺の説明に納得の表情でそう返してくる悠花。

 そして、そんな悠花に対して、

「まあ、符術もそういう所あるしね。侵入者を感知して術者に知らせる護符とかあるけど、今の時代だとセンサーとか使った方が手っ取り早いし」

 と、肩をすくめながら言う涼太。

 

「あー、たしかにそうなのです。しかもあの護符は、範囲がイマイチなのです」

「トッララー、イマイチと言うと……でありますトラーが、ここの魔法陣も手間がかかる割には、効果がイマイチでありますトーラねー」

 更に納得の表情をする悠花の言葉を聞いたオトラサマーが、そんな風に言う。

 

「そうですね……。何がしたいのか良く分からないものばかりですし……」

 顎に手を当てながら舞奈がそう呟くように言うと、

「本に記されている術式を改良しようとしていた……かのような痕跡はありますね。この方眼紙に描かれている魔法陣、さっき見た本に限りなく近いものがありましたし」

 なんて事を口にしながら、バインダーに挟まっている方眼紙を手に取る紡。

 

「改良……か。まあたしかに無駄が多い構造になっているものや、明らかに間違っているものが多いからな。黒志田がそのままでは使い物にならないと考えて、改良しようとした可能性はないとは言い切れないな。紡や咲彩の通ってる学校で、俺の隠蔽を破ろうと試みてきたくらいの知識と技術はあるようだし」

 俺は、紡や咲彩の通っている学校に印を刻みに行った時の事を思い出しながら、そんな風に返事をする。

 

 結局破られはしなかったので大した事はないのだが、『あの本』の術式を作り出した――もっとも、あれもベースになった術式がある事が判明しているので、黒志田がゼロから構築したものではないが、それでもベースの術式から大きく改良されてはいる――くらいの知識や技術はあるわけで……

 ここに積まれている本に記されている術式程度であれば、内容を理解して、無駄な部分をなくしたり、より高性能なものへ改良したりといった事は十分可能だろう。

 

 まあ、そもそも奴が――いや、奴らが何をしようとしていたのかがさっぱりな現状では、その可能性があると分かった所で、如何ともし難い事に変わりはないのだが……

 

 俺は心の中でやれやれだと思いながら、机の上に置かれた本立てに纏めて立て掛けられているノートの中から1冊手に取り、それを開いてみる。

 するとそこには、魔法陣の構造や術式に関しての結果が手書きで記されていた。


 ……これは、黒志田が書いたもの……か?

 もしそうだとしたら、何か手がかりになりそうな事が書いてるかもしれないな……

 

 そんな事を思いながらページを捲っていくも、残念ながらそのノートに手がかりになりそうな事は何も書かれてなかった。

 だが、ノートはまだ5冊ある。一応、他のも確認してみるのが良さそうだな。

 

 そう考え、俺は別のノートを手に取ると、それを開……こうとした所で、

「ブッル。ご主人、何か落ちたブルよー」

 と、ブルルンがそんな風に言って、その『落ちたもの』を浮かせてくる。


 どうやら、ノートとノートの間に挟まっていた物のようだが……一体なんだ?

 なんて事を思いながら、俺はそれへと視線を向ける。

 すると、それはなにかの雑誌の切り抜きだった。

 

 ……山中の研究所がいつの間にか消えていたという『ミステリー』の真相を追う……という名目で、この雑誌の編集部が独自の調査をしたその記録のようだ。

 

 消えた研究所か……。少し気になるな……

 

 そんな事を思っていると、

「あ、それ、有名なオカルト雑誌のものですね」

 と、そんな風に言ってくる紡。

 

「ん? そうなのか? この切り抜きだけで良く分かるな」

「この雑誌は独特なレイアウトですからね。ずっと読んでいれば、大体見ただけで分かるようになります」

 俺の問いかけに、紡がそう返してくる。

 ……なるほど、紡が良く読んでいる雑誌というわけか。

 

「どんな内容なんですか?」

「まだ読んでいる最中だが……どうも、ここから南――人の手がほとんど入っていないような山間部に、80年くらい前にあった戦争の最中に、軍によって作られた頑丈な造りの研究施設があったらしい」

「なるほどそういう話ですか。ううーん……旧日本軍が秘密裏に何かを研究していた……みたいなのは定番と言いますか、オカルトでは割と良くある話なので、作り話も多いんですよねぇ……」

 俺の返答に対し、そんな風に言いながら横から記事を覗き込む紡。

 

「ええっと……『戦後は研究結果が全て破棄され、施設も放棄された事で廃墟と化していたものの、とある企業が買い取って再び研究所として使い始めた』……ですか」

 紡が記事の一部を読み上げた後、「うーん……」と唸る。

 そして、

「こういう書き方をしているのは、ちょっと珍しいですね。大体は旧日本軍が何かを研究していた……という所で終わりますし」

 と、そう言葉を続けてきた。

 

「それは逆に作り話ではない可能性がある……と?」

「そうですね。その後の流れまで調べている辺りは、ここの編集部にしては珍しい気がしますし、もしかしたら本当に真実を追っていたのかもしれませんね。……まあ、あくまでも『もしかしたら』ですが」

「なるほどな。しかし、真実かどうかは一旦置いて置くとしても、この『企業が買い取った』という記述が少し気になるな……」

「たしかにそうですね。この記事……私が読んだ記憶がないので、結構古い物だと思いますが……仮にその頃から透真さんや桜満さんから説明のあった『企業』が暗躍していたとしたら――」

「――その研究所を買った企業が、まさに『ソレ』であるかもしれないな……」

 俺は紡の言葉を引き継ぐようにして、そう呟くように言いつつ、桜満から渡されたリストを再度確認してみる。

 

 ……が、それらしい記述は見当たらなかった。

 もしや、桜満たちでも見つけられていないのだろうか……?

今回で大体探索(調査)は一区切りつく予定だったのですが……

思ったよりも長くなってしまったので一度区切りました……

次回で一区切りつく想定です!(多分ですが……)


ま、まあ、そんなこんなでまた次回!

次の更新も予定通りとなります、4月6日(土)の想定です!

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