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第49話 写本と電波妨害

「そ、それはそれとして、本を調べるわよ!」

 かりんの声真似のまま、そんな風に告げてくるかりん。

 ……じゃなくて、紡。

 

「そうだな。とりあえず本を調べるとしよう。声真似に関しては後回しだ」

 そんな風に俺が言うと、セラがそれに反応して、

「そうだねー。モノマネは後でじっくりやろー!」

 と言った。

 

 ……モノマネを後でじっくりやるという意味ではないんだが……まあいいか。

 

「――とはいえ、術式以外の本となると、あまり数は多くない感じだけどね」

 と、積まれた本をパラパラとめくって中を軽く確認しつつ、ふたつに分けて積み直しながら言ってくる涼太。

 

「まあたしかにな……」

 開いていた本――使い物にならない術式の書かれた本――を閉じながらそう返す俺に、

「それにしても……魔法陣とその構造が記された本が、こんなにあるとは思わなかったのです。一体どこにこれらの本は保管されていたですかね?」

「それはわからないが……もしかしたら、黒志田を殺害した奴の本体がいる場所だったりするかもな」

 悠花の疑問に対して俺がそう答えると、それに続くようにして、

「日本語だけではなく、アルファベットで書かれている本もありますし、『魔導書』と称される物――正確には、その写本か訳本だと思いますが、それを片っ端から集めて、そこに保管している……というのは、存外あり得るかもしれませんね」

 なんて事を言ってくる舞奈。

 

「なるほど。つまり、あいつがこの女性の身体を使って、これらの本をここに運んできたってわけだね」

 涼太が近くに寝かしてある女性へと顔を向けながらそう言うと、舞奈は、

「はい。黒志田が自分でここに運んできたとは思えませんし、そう考えるのが自然ではないかと……」

 と返し、同じく女性の方へと顔向けた。

 

「……この女性が、あいつと一切関係がないのかそれとも何らかの関係があるのか、それが割と重要かもしれないな」

 そう言いながら俺もまた女性の方へと顔を向けると、

「たしかにそうですね。というか、このまま放っておいて良いのですか?」

 と、紡が言ってくる。

 

「放っておくというか……桜満の部下の到着待ちって感じだ」

「あれ? ここって電波来てるです? 建物に入る前にスマホを確認したら、通信不可状態だったですが……」

 俺の返答に対し、今度は悠花がそんな疑問を口にしてきた。

 なので俺は、本をその場に置くとスマホをポケットから取り出し、待ち受け画面と呼ばれているものを見せながら告げる。

「ああ。たしかに俺のもそうなっていたが、今はこんな感じで問題なく使えるぞ」

 

 それを聞いた悠花はスマホを取り出し、

「あ、本当なのです! 普通に使えるのです! 圏外じゃなかったですね!」

 と、操作しながら言ってくる。

 

「あの洞窟から戻ってくる時に再度確認したら、普通に使えるようになっていたぞ。だから、桜満には既にここでの詳細を連絡済みだしな」

 そんな風に俺が説明すると、悠花のスマホの画面を眺めながら、

「トッラトッラー? 黒志田を隠蔽する結界のようなものに、電波妨害の効果もあったでありますトーラ?」

 という疑問の言葉を発するオトラサマー。

 

「いや、あの時点ではまだ使えなかったから……黒志田を殺害した奴がこの場からいなくなった事で、電波を遮断していた何か……例えば妨害装置の類とかが消えて、その結果、こうして復活したんじゃないか?」

 電波や通信といったものは科学技術の代物だし、むしろ妨害する為の装置とかも普通にあるんじゃないだろうかと思い、そんな風に俺が返すと、

「まあ、通信抑制装置――いわゆるジャマーは、手に入れようと思えば簡単に手に入れられるからねぇ」

 と言って、やれやれと首を横に振る涼太。

 

 やっぱりあるのか……。どこの世界でも、こういった諜報活動に便利な代物っていうのは、それに対する妨害手段が生み出されるものなんだな……

 向こうの世界でも、転移を阻害する障壁や魔法陣なんかがあったしなぁ……

 

 と、そんな事を思っていると、

「ブッルルゥ? でも、黒志田を殺した奴は、あくまでも憑依していただけブルよね? 憑依状態を解除したとしても、移動するのは魂だけで、そのジャマーという装置までは移動しない気がするブッルよ?」

 というもっともな疑問を口にしてくるブルルン。

 

「そうですね、そこが少し気になります」

 舞奈はそう返事をしつつ本を机の上に置くと、

「うーん……ちょっと気が引けますが、詳しく調べてみましょうか。ジャマーの類を持っているかもしれませんし」

 なんて言葉を続けて女性へと歩み寄り、ポケット『など』を確認し始める。

 

 まあ……なんだ? 俺や涼太が触れたらまずそうな所も調べていたりするが、敢えて何も言うまい。

 などと思いつつ、とりあえず積まれている本を調べながら待つ事しばし……

 

「こんなものが出てきました」

 と言って、棒が幾つも突き出している黒い箱のようなものを見せてくる舞奈。

 涼太は「ちょっと見せて貰っていいかな?」と言ってそれを受け取ると、あれこれいじってから、

「うん、これは思いっきりジャマーだね。壊れているっぽいけど」

 と、そんな風に言ってきた。

 

「つまり、壊れたから使えるようになったって事ー? というか、なんで壊れたのかなぁ?」

「どうして壊れたのかは良く分からないけれど、そうだね……憑依状態を解除した際に生じた、なんらかの霊的な力によって壊れた……というのが、もっともあり得るかな?」

 セラの疑問に対し、涼太は顎に手を当て、思考を巡らせながらそう返事をする。

 

「なるほどー」

 納得顔で首を縦に振りながら言うセラに続くようにして、

「たしかにこういった機器は、霊的な力に弱い事が多いのです」

 と、こちらも納得顔で言う悠花。

 

 霊的な力に弱い……か。

 電波を遮断していたのは、隠蔽する為ではないかと考えていたが、もしかしたら別の理由があるのかもしれないな……

 

 悠花の言葉に、俺はふとそんな事を思った。

まあ、電波は魔法の類を用いなくても妨害する事は出来るというものですからね……


といった所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、4月3日(水)の想定です!

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