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第46話 魔法陣と術式

「なるほど……。たしかにセラが言った通り、本が多いな。実験室というよりは錬金術師のアトリエって感じだ」

 俺が舞奈たちの発見した実験室を見回しながらそんな風に呟くと、舞奈と悠花が納得の表情で、

「あ、そう言われてみるとたしかにそうですね。ここに大釜があったら、まさにそんな感じです」

「ですです。素材を放り込んだら色々な食べ物や爆弾が出来そうなのですっ」

 なんて言葉を口にしてきた。

 

 ……なんとなく、ふたりとも俺とは違うもの――錬金術『師』ではなく、錬金術『士』の方をイメージしていそうな気しかしないが、まあ……とりあえずそこには触れないでおこう。うん。

 

 というわけでふたりの発言には返事をせず、近くの本を手に取って開いてみる。

 すると、そこには妙に複雑な術式が描かれていた。

 

 うーん……何かを変化させる魔法っぽいが、無駄な所が多すぎて逆に良く分からんな。

 一体『何を』『何に』変化させる魔法なんだ? これ。

 

「地下へ行く前に私も幾つか本を開いてみたのですが、どれもそういった術式が記されている本でした。残念ながら、私が見ても何がなんだかさっぱり分かりませんでしたが……」

 俺が開いているページを、紡が横から覗き込みながらそんな風に告げてくる。

 そしてそれに続くようにして、

「私も、最近ようやくこういった『術式』が少しだけ分かるようになってきていたのですが……ここにあるのはさっぱりでした。……いえ、正確に言うと『何がしたいのか良く分からない術式』ばかりだった……という感じでしょうか?」

 なんて事を言って、肩をすくめてみせる舞奈。

 

 というか、何気に舞奈が術式を理解し始めている事を始めて知ったぞ……

 向こうの世界なら、年単位で学ばないと何一つ理解出来ないような代物が多いのだが、さすがは異能と称されるレベルの分析能力だな。

 

「もっとも術式は理解不能ですが、ここで本に書かれている術式を色々と試していたらしい……という事は、『床の魔法陣の痕跡』から、何となく理解出来ました」

 紡が『床の魔法陣の痕跡』という所を強調しながらそう言って、床へと視線を向ける。

 

 その視線の先には、たしかにチョークのようなもので、魔法陣らしきものを何度も描いては消してを繰り返したかのような、そんな痕跡があった。

 すると、それを眺めながらブルルンが、

「ブッルル。そこの魔法陣はさっきセラが途切れていた線を繋いだ所ブル。で、ブルドバーンと灰と煙が放出された所でもあるブルゥ。もちろん、今はもう発動しない状態にまで消してあるから大丈夫ブルよー」

 と、そんな説明をしてきた。なるほど、これが例の奴か。

 というか……どうでもいいが、ブルドバーンってどんな擬音だ……

 

「と、途切れている所を繋ぐくらいなら大丈夫だと思ったんだよぉー。ちょーっと繋ぎすぎたけどぉ……」

 肩を落としながらそう口にするセラに、

「ブルゥ。まあたしかに線を1本2本繋いだくらいなら問題なかったブッルね。でも、10本も繋いだら復元されてしまうブルよ」

 なんて突っ込みを入れるブルルン。

 

 ……どうしていきなり10本も繋ごうと思ったのか……

 

「まあ、そのお陰? で、一応無意味な魔法陣――術式ではないという事は分かりましたね」

 紡が『お陰』の所で、首を僅かに傾げながらそう言ってくる。

 それに続くようにして、

「無意味ではないですが、無意味ですよね……」

 などと、そんな事を口にする舞奈。

 

「トッラ? 無意味ではないけど無意味とはどういう事でありますトラァ? トンチの類でありますトーラァ?」

 もっともな疑問を投げかけるオトラサマーに対して舞奈は少し顔を赤らめながら、

「あっ! す、すいません。トンチのつもりではなかったです。ほ、ホントですよ?」

 などと、ちょっと慌てた様子で返事をした。

 

「で、どういう事なのー?」

 オトラサマーに変わって、再度舞奈に対して問いの言葉を投げかけるセラ。

 舞奈はセラとオトラサマーを交互に見ながら、

「えっと……術式としては『何も発動しない適当な代物』ではないものの、その効果は『何の役に立つのか分からない地味すぎるもの』という事です」

 と、説明した。

 

「まあたしかに、灰と煙を大量に放出する魔法陣が、どんな役に立つのかと問われると困るね」

「はいです。逃走用の煙幕か、目眩ましにはなる気がするですが……わざわざ魔法陣を描いていては色々と手遅れになる気がするのです」

 舞奈の発言に、亮太と悠花がそんな事を口にした。

 そして更にそれに続くようにして、紡がもっともな疑問を口にする。

「というか、どうして灰と煙だけなのでしょう……?」


 俺はその紡の疑問に対して、

「多分、本当は炎を発生させる魔法陣を構築しようとしたんだと思うぞ。その辺りとか、それっぽい感じだし」

 と返事をしつつ、床に描かれた術式――といってもほとんど消えているが――の一部を指差してみせた。

 

「なるほど……。炎を発生させる魔法陣の失敗作だったというわけですか」

「ああ。おそらくそんな所だろう」

 俺は紡に頷いてみせながら、近くの机の上に置かれたままになっていたチョークを手にすると、それを使って描かれている魔法陣――術式に線と文字を付け加えていく。

 そして必要な線と文字を全て付け加えた所で、

「こういう感じにしてやれば……」

 と言って、指をパチンと鳴らした。

 

 次の瞬間、魔法陣の中心に青い炎が出現し、その場でメラメラと燃え始める。

 それを眺めながら悠花とセラが、

「ちゃんと作るとこうなるですか……」

「ほへー、凄いー。何もないのに燃えてるー」

 なんて言葉を、興味深そうな表情で呟く。

 

「まあ、魔法の炎だからな。敢えていうなら、魔力を燃やしていると言えなくもない。ちなみに……なんだが、どうも術式的には『特定の物』しか燃やさないっていう特殊な炎みたいでな、その『特定の物』以外が燃える事もないぞ」

「特定の物……です? この炎は、一体何を燃やせるのです?」

 俺の説明に首を傾げつつ、そう問いかけてくる悠花。


 まあ、もっともな疑問だが……

「何も燃やせない」

 

「ほえ?」

 そんな素っ頓狂な声を発した悠花に対し、

「その炎は『何も燃やせない炎』なんだ」

 と、『何も燃やせない炎』の部分を強調して再び告げる俺。

 

 そう……。このメラメラと燃えている青い炎……

 実は燃やせる『特定の物』が存在しない、『何も燃やせない炎』なのだ。

思ったよりも長くなってしまったので、一旦ここで区切りました……


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、3月23日(土)の想定です!


※追記

脱字を修正しました。

また、本来記述しないといけなかった一文がすっぽ抜けていたので追加しました。

(記述していなくても話の展開としては支障がない為、完全に忘れていました……)

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