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第43話 憑依と変異

「別の存在が憑依……ですか。それはまた面倒そうな相手ですね……」

「そうだね。単に身体を乗っ取られているだけっていう可能性があるって事だしね。この女性のように」

 舞奈に対して頷きながらそんな事を口にする涼太。

 それに続くようにして、

「ああ。おそらくこの女性に話を聞いても何も知らないだろうな……」

 と言いながら、俺は女性を見る。

 

 生きている人間に憑依してその身体を操る……か。

 これまで遭遇した『敵』と比べて、かなり魔法や術といったものを扱うのに長けた――要するに俺たちに近しい存在――のようだな。

 いや、純粋に幽霊の類である可能性も、一応あるにはあるか。

 

 などという事を考えていると、

「それにしても、結界を張っておいて正解でしたね。今回は追跡が容易ですし」

 と、そんな風に舞奈が言ってきた。

 

「たしかにそうだが、ちょっと気にはなるんだよなぁ……」

「――追跡を遮断する為に黒志田を殺害した割には、そういった追跡に対する警戒が疎か……というか、詰めが甘い感じがする点が、ですか?」

 まさに俺が気になった点をさらっと口にしてくる舞奈。

 相変わらずの分析力だな……と思いつつ、頷く俺。

「ああ、その通りだ。舞奈の言う通り、詰めが甘くて結界に気づかなかっただけというのも、無論ありえる話ではあるが……」


「――気づいていながらも、敢えて逃げた。つまり、俺たちを誘っているのではないかというのもまた、同じくらいありえるって事だね」

 涼太が俺の言葉を引き継ぐようにそう言ってくる。


「ああ。その通りだ」

 そんな風に返事をした所で、

『ブッルゥ! ご主人! 死体が動き出したブルよーっ! しかも変異しているブルゥゥ!』

 というブルルンからの声が頭に響く。

 

「おっと、どうやら黒志田がゾンビ化したようだ。変異付きで」

「こっちもオトラサマーから声が届いたよ」

 俺と涼太そう口にすると、舞奈が顎に手を当てて推測を口にした。

「逃げるついでに何かを発動した……という感じでしょうか?」

 

 俺と涼太はともかく、舞奈もほとんど驚いていないな。

 ゾンビ化すると予想していたんだろうなぁ、きっと。

 

 そんな事を思いながら俺は小さく肩をすくめると、

「ま、そんな所だろうな。紡の障壁があれば大丈夫だとは思うが、変異というのが気になるし、一応急いで戻るとしよう」

 と告げて、舞奈から気絶している女性を受け取ろうとす――

「でしたら、この女性は私がこのまま抱えていきますね。あ、身体能力強化魔法を使っているので、重さはまったくありませんし『何も気にしないで』任せてください」

 ……受け取ろうとするよりも先に、舞奈がそう言って女性を抱えてしまった。

 

 ……良く分からないが、舞奈が自分で運ぶと言ったという事は、俺や涼太が運ぶと何か問題があるという事なのだろう。

 仕方がない。ここは舞奈に任せるか……

 

 そう判断しつつ涼太を見ると、涼太は俺に対して無言で頷いて来た。

 ……どうやら、俺と同じ結論に至ったという事のようだ。

 

 というわけで、俺たちは急いで来た道を引き返す。

 

 先や脇道の小部屋などを確認しながら進んで来た行きと違い、一直線に戻るだけなので大した時間もかからず、紡たちの居る場所へと辿り着く。

 

「……なるほど、たしかに変異しているね……」

「そうだな。まあ、腕が4本、触手が6本あろうとも、紡の障壁を叩いているくらいで、それ以外は何も出来ていないみたいだが」

 涼太の呟きに対してそう返事をしつつ、魔法剣を生み出す俺。

 

「とはいえ……あんな姿形のゾンビと真正面から睨み合いの状態になっている紡さんは、SAN値がガリガリと削れていそうですし、早めにどうにかしましょう」

 と、舞奈。あー……うん、なるほど……。たしかにそれはあるかもしれん。

 

 というわけで、一気に黒志田だったゾンビへと接近する俺たち。

 そんな俺たちにセラが気づき、

「あっ! 戻ってきたよーっ!」

 と、大きな声を発する。

 

 するとすぐにそれに続くようにして、

「このゾンビ、悠花の浄化の札が効かないのですっ!」

 という報告を真っ先にしてくる悠花。

 

 浄化の札……。アンデッドを滅する事を『浄化』と向こうの世界では言っていたし、これも同じだと仮定するなら、アンデッドを滅する類のものだろう。

 それが効かないというのは、『変異』のせい……とかだろうか?

 

「よくわからんが、斬り倒すしかなさそうだ」

「どっかに短剣ないですかね。ナイフでもいいですが」

「そのくらいなら作れなくはないぞ。……エルマギオン!」

 俺はそう口にして、湾曲した鎌状の短剣――ハルパーと呼ばれる物――を、二振り生み出す。向こうの世界でアサシンが使っているのを見た事があるな。

 

 って、そうじゃない。普通の短剣を作ったつもりが、何故こうなったんだ……?

 無意識下で、舞奈にはこれが一番イメージ通りだと思ったという事だろうか……

「これはまたファンタジーなゲームでしかまず見る事のない形状の短剣ですね。でも、なんだか思ったよりも使いやすそうです!」

 舞奈もなんだか笑みを浮かべてそんな風に言ってくるし。


 まあ……なんだ? 使いやすそうだと言っているし、これでいいか。うん。

 俺はそう結論づけて、二振りの短剣……ハルパーを舞奈へと手渡した。

 すると、舞奈はそれを受け取るなり、

「士気高揚がなくても、このくらいなら余裕ですねっ! この方はお任せします! ――アクロア!」

 なんて事を声を大にして口にしつつ、抱えていた女性を俺に預けると、ゾンビへ向かって魔法で急加速しながら突っ込んでいった。

 

 う、うーん……?

 これ……もしかして、短剣を作らない方が良かった……か? 俺の出番がなくなりそうだ。

 いやまあ、大して強そうな相手でもないから、別にいいけど……

大して強そうでもないと言っている通り、交戦はすぐに終わります。……多分ですが。


ま、まあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、3月13日(水)の想定です!

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