第38話 夜が明けて
そんなこんなで、色々あった学校生活初日も終わり、2日目となった。
……ホント、昨日は平常心を失わないようにする魔法があってよかった……
なんて事を思いつつ、学校へ向かう準備をしていると、ピンポーンという来客を知らせるチャイムが鳴った。
……うん? こんな朝っぱらから誰だ?
と、そう思いつつドアを開けてみると、そこには顔を赤らめた舞奈の姿があった。
「あ、あの……き、昨日の夜はすいませんでした……っ!」
開口一番、そんな謝罪の言葉を口にして、勢いよく頭を下げる舞奈。とてもキレイな90度だ。
「き、気がついたら布団の中で寝ていて驚きました……」
「あ、ああ、ちょっとやそっとの事じゃ起きなさそうな状態だったから、勝手に布団を敷いて寝かせてしまったんだ。……なんというか……その、あのままにして帰るのは、ちょっと気が引けてな……。不愉快だったらすまない」
「い、いえっ! 全然不愉快とかそういう事はないですっ! そ、そもそも、これに関しては私の方が悪いわけですし、成伯さんが謝る事ではありましぇんっ!」
あ、思いっきり噛んだ。
「~~~~~っ!!」
更に顔が赤くなる舞奈。
さて、どうしたものか……と思った俺は、もうこうなったら話題を変えてしまおうと思い、
「……ああそうだ。月城の部屋から帰るために、転移印を使っていなかった部屋に刻んであるから、後で消させてくれ」
と、そう告げた。
「え? 印? ……ああっ! 玄関の鍵がかかっていたのはそういう事でしたか……っ!」
「ああ、そういう事だ」
「どうやって鍵をかけたのか気になっていたのですが、それなら納得です。でも、それでしたらその印は消さなくても良いと思いますよ? 行き来が楽ですし」
「……いや、あの……。あの魔法使えるのは俺だけなんだが……。俺が一方的に月城の部屋に行けるだけなんだが……?」
「……? 何か問題があるのですか? すぐに来られて便利ですよね?」
心底何を言いたいのかわからない、といった表情でそんな事を言ってくる舞奈。
……まあうん、昨日の感じからしてそう言ってきそうな気はしていたけどさ……
「女性の一人暮らしの部屋に、男性がいつでも入れる状況になってたら駄目だろ……」
「あ、なるほど。うーん……男性がいつでも入ってくる状況はマズいですが、成伯さんが入ってくるのは別に問題ないですね」
「俺が何か良からぬ事をするかもしれないだろ?」
「え? するんですか? しないですよね? 絶対に」
俺の問いかけに首を傾げてそう返してくる舞奈。
絶対と言われてしまった……
これはあれか!? 分析か!? 分析したのか!? たしかにしないけど!
「うんまあ、たしかにしないけどな……」
そういう事じゃない気がするんだがっ! というのは、心の中でだけ叫んでおく。
大魔道士たるもの、そんな簡単に女性に手を出したりはしないからなっ!
そのためならば、自身に魔法を使ってそういう感情や思考を抑える事も辞さないぞ!
……いや、うん、単に意気地がないだけとも言うが。
し、仕方があるまい。魔法研究塔に篭もっている年月が長すぎて、そういう経験皆無なのだからっ!
コーデリアもサーシャもエミリエルも、コウイチにしか目が向いていなかったしなっ! コンチクショウ!
……って、俺は朝から心の中で何を叫んでいるんだ……
舞奈のせいで頭が暴走気味らしい。
「まあいいや……。月城がいいなら……そのままにしておくか」
ため息混じりにそう言うと、舞奈は、
「はい、そのままにしておいてください。――それでは、また学校で」
と言って立ち去ろうとする。
だが、俺はそんな舞奈を呼び止め、
「待った。……今からじゃ、自転車でも間に合わないぞ」
と、自分の腕時計を舞奈の方に見せながら言った。
――なにしろ、俺がゲートを使って向かおうとしていた所だしな。
っていうか、まずはそっちを分析しようよ……
いや、昨日もヤバかった事を考えると、無意識に分析したりしなかったりする時があるって事なんだろうなぁ……。なんとも不思議な力だ。
気付いたら、前話の倍近い長さになっていました……
ま、まあ、前話が短かったのでその分という事で……
といった所で、次回の更新ですが……無論、明日です!
明日もよろしくお願いします!




