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第38話 ホテルと電気と洞窟

 うーん……

 とりあえず、こちらも待っているだけではなく動くとするか。

 

 俺はそんな風に判断し、

「このまま進んでみるとしよう」

 と、そう告げながら通路へと歩を進めた。

 

「隠れられそうな場所を見落とさないようにしていかないとね」

「気をつけるのです!」

「トッラトッラー。一応、反応を探りながら進むでありますトーラー」

 ふたりと1体がそんな風に返しながら、俺に続く。

 

 壊れた機械が並ぶ部屋や、朽ち果てたロッカーや棚が並ぶ部屋などを注意深く確認していくが、どこにも黒志田が隠れていたりはしなかった。

 

「うーん……。黒志田が潜伏しているのであれば、電気が通っていてもおかしくはない気がするですが、どの部屋も蛍光灯がないので、たしかめようがないのです」

 悠花がふとそんな事を呟く。

 

 ……うん? それなら調べようがあるな……

 俺はそんな風に思いながら、今いる部屋を見回す。

 

 すると目当てのもの――コンセントを見つけたので、俺はスマホの充電器を取り出し、試しに差し込みプラグへとスマホの充電器を差し込んでみる。

 

「トッラァー!? 充電され始めてるでありますトラよー!」

 オトラサマーが驚きながらそう言った通り、俺のスマホの画面には、充電中を示すアイコンが点灯していた。

 

「……電気が通っているな」

「ただの廃墟ではないという事だね」

 俺の呟きにそう返してくる涼太。

 

「ま、ただの廃墟に長期間潜伏するってのは、ちょっと厳しいしな」

 そう言いながらも、だとしたらここは一体……という新たな疑問が浮かんでくる俺。

 

 そして、その疑問についてあれこれと考え込ながら歩いていると、

「ここは……地下室へ続く階段だね」

 と、涼太が言ってきた。

 更にそれに続くようにして、

「トッラ? 下から何か妙なものを感じるでありますトラーラ」

 なんて事を告げてくるオトラサマー。

 

 階段……か。

「……地下室から繋がる洞窟があるって話だったよな。そこへ逃げ込んだ……か?」

「あり得るのです。洞窟なら見つかりづらいと考えてもおかしくはないのです」

 俺の呟きに頷き、肯定してくる悠花。

 

 ブルルンに反応を確認す……るよりも早く、

『ブッルゥ! 止まっていた反応が少しずつ動き出したブルゥー!』

 と、ブルルンが告げてきた。

 

 ……これは、洞窟に逃げ込んだと考えて間違いなさそうだな。

 今まで止まっていたのは、洞窟の入口を開けるのに手間取っていたとか、おそらくそんな所だろう。

 

 俺がその推測とブルルンの言葉を告げると、

「それなら、急いで追うのです!」

 と口にするなり、階段を駆け下り始める悠花。

 

 悠花を追う前にブルルンに対し、まずは黒志田が地下室から続く洞窟へ逃げ込んだ可能性が高い事と、この建物には電気が通っている事、そして廃墟内で電気が使われている場所があるはずなので、それを探して欲しいと告げた。


『任せるブッルよー。ばっちり探すブ――だ、駄目ブルゥ! そこは違うブルゥゥ! ブッルゥゥー!』


 ……なにやら途中から慌てた声になり、さらにそこから叫ぶ声――というか悲鳴に近い――に変わったが、なにがあったのだろうか……

 ま、まあ大丈夫だろう……。多分。

 というわけで……改めて悠花の後を追って階段を下りる。

 

 すると、先行して駆け下りていったはずの悠花が階段の下で立ち止まっていた。

「ち、地下だけあって暗いのです……。真っ暗なのです……」

 ……どうやら、勢いに任せてここまで下りてきたはいいが、あまりにも暗すぎてこの先に踏み込む勇気が出なかったようだ。ま、突っ走られるよりはいいか。

 

「とりあえず明るくするか」

 俺はそう言いながら光球を生み出すと、それを浮かべた。

 

 光球によって照らされた地下室には、『冥闇洞』と書かれた古いパネルとカウンター、それから棚のようなものと、壊れた自動販売機があった。

 また、洞窟の入口には鉄格子が嵌め込まれていたが、一部が切断されており、人が通り抜ける事が可能な状態だった。

 

「……これ、切断面に錆とかが全くなくて、キレイな状態なのです。ついさっき切断されたばっかりといった感じなのです」

 悠花が、鉄格子の切断面を確認しながらそう言ってくる。

 それに対して俺は、

「となると……これを切断するのに時間がかかったって所か」

 と、そう返しつつ洞窟の奥へと視線を向ける。

 

 洞窟内には、白熱灯が所々に取り付けられているが、どれも光を放ってはいなかった。既に使えなくなっているのだろう。

 

「この洞窟は使われていなかったみたいだね」

「はいです。わざわざ切断して中に入ったくらいですし、この洞窟には用途がなかった……とか、そんな感じなのかもです。というか、意外と中が行き止まりになっている事も知らなかったりするかもしれないのです」

 涼太に対して悠花がそんな風に返事をしつつ、洞窟へと足を踏み入れる。

 

 そんなふたりに対して俺は、

「ま、なんにせよわざわざ行き止まりの場所に逃げ込んでくれて助かったというものだ。ただ……ここから奴が何か仕掛けてくる可能性はゼロではないし、一応注意して進むとしよう」

 と告げて、洞窟内へと足を踏み入れるのだった。

遂に追い詰めた状態になりましたが、果たして……?


とまあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、2月24日(土)の想定です!

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