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第37話 黒志田包囲網

 悠花を追いかけながら走っていく事しばし、さほど広くはない敷地なので、あっさりと裏手――裏口の手前へと辿り着く。

 

「トットラー。まだ誰も来ていないでありますトラー」

 そう告げてきたオトラサマーに対して悠花は、

「それなら、この辺に隠れて待つとするのです」

 と言ってから俺の方へと顔を向け、

「あ、魔法は発動したままにしておいた方が良い感じです?」

 なんていう問いの言葉を続けてきた。

 

「そうだな。念の為そうしておくとしよう」

 俺は悠花にそう答えると、周囲を見回す。

 

「うーん……。ガラクタは多いが、隠れられそうな場所はないな」

「たしかにそうだね。どうしたものかなぁ……」

 俺に対して頷きながらそんな風に言う涼太。

 

「まあ、隠蔽魔法を使って隠れるしかないな。っと……その前に網を張っておくか」

 そう口にして、俺は結界魔法を発動させる。

 

「隠蔽魔法というのは分かるですが、網……というのは何なのです?」

「ああ。霊的な存在を感知する結界魔法だ。これは以前不十分だった『マーカー』を強化する為でな。もし、奴が肉体を捨てて逃げようとすれば、こいつに必ず引っかかる。だからそれを利用して、今度は完全な『マーカー』を付与する……というわけだ」

 俺が悠花の問いかけにそう答えると、悠花は納得顔で顎に手を当て、

「なるほどなのです。そう言えば肉体を捨てて逃げる事が可能だったですね」

 なんて言ってきた。

 

 俺はそれに対して頷いて見せ、

「ああ。幸いというべきか、奴には既に不完全ではあるものの『マーカー』が付着している状態からな。こうしておけば今度は逃さずに追いかけられる。……まあ、既に死体しか残っていないような状態だと困るが、さすがにそれだとブルルンが感知するはずないし、おそらくまだ生きているはずだ。というわけで――」

 と告げながら、裏口である鉄製のドアに手をかける。

 

 すると、ドアに鍵の類はかかっておらず、すんなりと開いた。

 もっとも……消音魔法を使っていなかったら、ギイギイとけたたましい音を響かせていたであろう程に錆びていたが。

 

「とりあえず、中に入って隠蔽魔法で隠れて待ち伏せするとしよう」

 俺はそう言いながら、廃墟の中へと足を踏み入れた。

 て涼太、悠花、オトラサマーも俺に続くようにして中に入ってくる。

 

「うわぁ……。いかにも幽霊が出そうな雰囲気なのです」

「トッララー。霊的な存在は依然として感じないでありますトラトラ。だから、大丈夫でありますトラよー」

 少しばかり恐怖が顔に出ている悠花に、オトラサマーがそう告げる。

 

 たしかに幽霊とかそういうのがいる感じはないな。

 というか、そもそもそんなのが巣食っている場所に、黒志田が潜伏しているわけがないのだが。

 

「ま、ここでしばらく待つとしよう」

 俺はそこで一度言葉を切ると、隠蔽魔法を発動させてから続きの言葉を紡ぐ。

「これで陣の外に出なければ見つからない。以前、黒志田に対して使った時は見破られなかったし、今回も大丈夫だと思う」

 

「対策されてる可能性とかは?」

「……ないとは言い切れないが、発動した際に完全に俺の位置を見失っていたし、後日もう一度念の為にと思って調べてみたけど、解析の類を受けた痕跡もなかったからな。対策出来る程の情報は得られていないはずだ」

 涼太のもっともな疑念に対し、俺はそんな風に答える。

 あくまでも推測でしかないが、おそらく心配はないだろう。

 

 それはそうと、あっちはどんな感じなのだろうか……?

 そう思ってブルルンに問いかけてみると、

『ブッルルー、こっちは中に入ったブルよー。黒志田の反応が動く気配はないブッルねー』

 というブルルンの声が返ってきた。

 

「向こうは中に入ったらしい。今の所、黒志田は動いていないようだ」

 そんな風に俺が告げると、

「トッラトッラー。たしかにそれっぽい反応は近くにないでありますトラーラ」

 と、オトラサマーがそう返してくる。

 

 ……そのまましばらく待ってみるが、誰かが来る感じはまったくしない。

 

「逃げるのではなく、潜伏してやり過ごす方を選んだ……かもしれないです?」

 小首を傾げながら、そんなもっともな疑問を口にする悠花。

 

「まあ……十分考えられる事ではあるな。とはいえ、ブルルンが既に位置を把握しているし、このまま潜伏し続けるのなら、向こうが発見するはずだ」

 そんな風に俺が言った直後、ブルルンから裏口方向へ移動していると告げられた。

 

「おっと、どうやらこっちに向かってきているようだ」

 そう俺が言うと、

「ばっちり捕まえるのです!」

 と言って、両手をグッと握りしめる悠花。

 そして、涼太とオトラサマーがそれに頷いてみせる。

 

 ……だが、先程と同じように一向に現れない。

 

 ブルルンに状況を確認すると、

『ブルゥ? 黒志田の反応が止まっているブルから、もう捕まえたのかと思っていたブルー』

 なんていう返答をされた。……うん?

 

 止まっている? まさか肉体を捨てたのか?

 いや、それならそれで、さっき展開した結界に引っかかるはずだよなぁ……

 となると、単純にどこかの部屋に隠れて、俺たちをやりすごそうとしている……とか、そんな所だろうか?

妙に説明が長くなってしまった為、一度ここで区切りました……


ま、まあ、そんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、2月21日(水)の想定です!

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