第33話 学食での報告
――3日後……
「おう、おつかれさん。……って、なんで3人ともそんなに疲れてんだ?」
昼休みに学食へとやってきた舞奈、鈴花、かりんに対し、そんな疑問の声を投げかける雅樹。
まあ、妙に疲れた顔をしているので雅樹が問わなければ、俺が問いかけていただろうが。
「さっきの体育、バスケだったんだけど、舞奈と鈴花が途中で1on1を練習がてらに始めたのだけど……。いつの間にか、魔法をこっそりと全力で使いまくるなんていうアホな事をし始めていたのよ。いつもはそんなに派手にやっていないのに、今日はなんかやたらと派手にやってくれるし……」
かりんが呆れ顔でそんな風に言って肩をすくめてみせた。
「こっそりと全力って……」
紘都が頬を掻きながらそう呟くように言う。
それに続くようにして、
「というか、いつも何かやってるのか……」
という突っ込みを入れる俺。
「まあ、いつもは地味に使っているから大した事はないけど、今日は途中で、こっそりじゃなくなって常人の域を超えた動きを何度かしてくれたから、上手くごまかすのに苦労したわ……」
なんて事をため息混じりに口にするかりん。
「い、いやぁ、なんというかその……長強い舞奈なんて今までありえなかったからさぁ……。つい、こう本気に……」
「それで、鈴花が全力を出すので、こちらも全力を出さないとと思いまして……」
などと言い始めるふたりに対してかりんは、
「超特大跳躍とか、ゴールに結界を張って弾き返すとかは、ごまかすのが大変なのでやめて欲しいものですね……」
と、ジトッとした目で告げた。
「それ、もう色々とおかしいな」
「というか、ゴールに結界張ったら駄目じゃない? それボール入らないよね?」
呆れた表情でそんな事を言う雅樹と紘都に、
「そう思うでしょ? ところが入れてくるんだよねぇ、これが」
なんて返す鈴花。
「……どうやって?」
「あ、えっと、その……。結界を破壊しながら叩き込みました……」
首を傾げる紘都に、舞奈がそんな事を言う。
「いや、結界破壊って……」
「無茶苦茶だな、おい」
「なんで体育で魔法バトルしてるのか理解不能……」
紘都と雅樹だけではなく、いつの間にかやって来た弥衣も加わり、やれやれと言わんばかりの表情で言う。というか、弥衣に至っては本当にやれやれと首を横に振っている。
「まあ、なんだ? 程々にな」
「そこ、普通やめろっていう所じゃ……?」
俺の発言に、弥衣がそんな突っ込みを入れてくる。
だが、そうは言えないのだ。
「……俺たちも若干、そんな事やってるからなぁ」
「そうだね。主に透真が、だけど……」
なんて事を言いながら俺の方を見てくる雅樹と紘都。
「まあ、みんな透真に対しては、『とんでもない身体能力でとんでもない事をやる奴』って認識だから、ここで普通にすると逆に怪しまれるってのもある以上、仕方ないっちゃ仕方ないんだが……」
「そうなんだよね……。もっとも、鈴花たちと違って、あからさまに常軌を逸したような動きはしないから、まだ良いと思うけどね」
紘都は雅樹に続くようにしてそう言いつつ、鈴花へと顔を向ける。
「納得……。でも、常軌を逸した動きにならないようにしている辺りはさすが」
「ま、まあ、一応そのくらいはな……」
弥衣に対し、頬を掻きながらそう返すと、
「うぐっ……。あ、あまり無茶な事はしないようにするよ……。かりんに思いっきり怒られたし……」
「そ、そう……ですね……」
なんて事を口にする鈴花と舞奈。
……ああ、ふたりが疲弊していたのはそれもあるのか。
というより、かりんが隠蔽での疲弊で、ふたりは怒られての疲弊って所か?
「……まあ、その件はさておき……そろそろ本題に入ろう? ――輸送機の件で進展があったって聞いた。どうなったの?」
弥衣がそんな風に問いかけてくる。
「あ、ああそうだな」
俺はそう返すと一度コホンと咳払いをしてから、
「――輸送機を撃墜した奴だが……この国の外から来た傭兵だった」
と、告げた。
「傭兵!?」
「そんなのいたんだ……」
驚く鈴花と弥衣。
弥衣の方はあまり表情が変わっていないものの、驚いているという事はなんとなく分かる。
「いや、そんなに驚く事なのか?」
「う、うーん……。この国で傭兵が活動しているという話は、あまり聞かないから、驚きと言えば驚きだね」
「ま、たしかにそうだな。どうやって入り込んだんだ? つー疑問もあるし」
小首を傾げる俺に、紘都と雅樹がそんな風に返してくる。
なるほど……俺としては傭兵なんて別に珍しいものでもないが、この国の人間にとっては珍しいものなのか。
だがまあ、どうやって入り込んだのかという点については、桜満も同じような事言ってたな。あと、警戒をもっと厳重にしないと……とも。
「詳細については、今取り調べ中だが……傭兵という時点で何者かの依頼で動いているのは間違いない。……もっとも、それが何者なのかが判明するかは、かなり怪しいが。傭兵がそうそう依頼主の事を話すとは思えないからな」
そんな風に告げて肩をすくめてみせると、
「何者か……か。そういやこっちも、この数日の間にまた妖怪……いや、妖怪もどきとニ度も遭遇してな。明らかに何者かがいそうな感じなんだが……」
「尻尾すら掴めない……。かりんと私で式神とか飛ばしてるし、ギネヴィアにも感知してもらってるけど、それでも何も引っかからない……」
と、雅樹と弥衣が言ってくる。
なるほど……。古都の方でも何かが蠢いているってわけか……
黒志田単体でどうこうしているとは思えないし、カフェ――正確にはアンティークショップ――の件も含めて、なんというかこう……黒志田を追っていたら、もっと大きな『何か』が引っかかったような、そんな感じがするな……
久しぶりに学校シーンです。
……なのですが、せっかく学校での会話という事もあって、魔法が普通に使える状態となった皆の日常風景みたいなものを入れてみた所……なんというか、その部分の会話が思った以上に長くなってしまった感が……
ま、まあ、そんな感じでまた次回! 次の更新も予定通りとなります、2月7日(水)を想定しています!




