第37話 舞奈の部屋から戻る
目の前でスイッチが切れたようにパタリとなって寝息を立て始める舞奈。
とりあえず揺すりながら声をかけてみるが、一向に起きる気配がない。
念の為、舞奈に刻み込んだ擬似的な魔力回路を確認する。
……あー、魔力回路自体に問題はないが、完全に魔法を使いすぎた事による影響が出ているな……。これは魔力回路が落ち着くまで起きそうにないぞ……
その事を理解した俺は、このまま放っておくわけにもいかないと考え、非常に申し訳ない気持ちになりつつも、寝室にしている部屋を探す事にした。
――まずはリビングから一番近い部屋……何もない。本当に何もない。畳マットすらない。
続いて廊下に面した部屋その1……ここも何もなし。
……あまりにも空っぽすぎてもったいないくらいだな。
まあ、用途がないんだろうけど。
そう思いながら、廊下に面した部屋その2のドアを開ける。
と、畳マットが敷かれており、布団が隅に折り畳まれた状態で置かれていた。
……ん? ベッドかと思っていたけど布団なのか。
いや、この畳マットが敷かれた部屋や舞奈の話からすると別におかしくはないか……
というわけで、それを素早く広げると、平常心を失わないようにする魔法を自分にかけてから、舞奈をそこへ運んでくる。
……本当は混乱状態や恐怖状態などを解消、防止する魔法なんだが、こういった使い方も出来るのではないかと思い試してみたら、上手くいった。
無論、理性を総動員すれば魔法を使わずとも問題はないのだが、やはり魔法でどうにか出来るのならどうにかした方が楽だし安全というものだ。
なんて事を思いつつ、俺は平常心を保ったまま舞奈を布団に寝かせると、そーっと部屋から出て玄関の鍵を内側からかける。
無論、このままだと俺も外に出られないので、何もない部屋へと移動し、そこに印を刻む。
「――虚空を超えて此の地と彼の地を繋ぎし其よ、今ここに顕現せよ。《転移門》……第十八の印より第十六の印」
ゲートを生み出し、自分の部屋へと戻った。
……舞奈の部屋への瞬間移動手段が出来てしまったが、まあ今日の所は仕方があるまい。
明日にでも事情を話して、印を消しに行けばいいだけだ、うん。
ちょっと短いですが、区切りが悪くなるので一旦ここで切ります。
そして、本日はもう1話更新します!




