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第30話 六翼のワイアーム

 セラがドラゴンと呟いたそれは、たしかに大蛇に6つの翼が付いたような、そんな姿のドラゴンだった。

 そして、ここまでくればはっきりするというもの。

 こいつは間違いなく、魂の欠片によって異形化した野生生物だ。

 それがなんなのかまでは分からないが……

 

「見た目的にはワイアームと呼ばれるタイプの竜にそっくりですね。……翼の数を無視すればですが。ワイアームで六翼というのは、さすがに見た事も聞いた事もありません」

 紡がそう口にすると、それに続くようにして、

「ヘビかトカゲが異形化したのでしょうか……?」

 と、舞奈が自身に強化魔法を使いながら言う。

 

「わからん。ヘビっぽいと言えばヘビっぽいが……。なんにせよ、こんなものを放っておいたらマズい事になるのは間違いない」

 俺がそんな風に返事をしつつ魔法剣を生み出した所で、六翼のワイアームが大きく息を吸うかのような動きをする。

 ……って! これは!

 

「紡っ! 障壁をっ!」

「あ! はいっ!」

 俺の呼びかけに即座に反応し、防御障壁を展開する紡。

 それとほぼ同時に、六翼のワイアームから紫色のブレスが放射された。

 

「あわわわわわっ!?」

「ポイズンブレス!?」

「ど、毒でありますトラァァッ!」

 悠花、涼太、そしてオトラサマーが慌てながらそんな事を口にする。

 それに対して紡が、

「大丈夫です。この障壁で十分防げます」

 と、冷静な口調で告げる。

 

「ト、トラァ……。ほ、本当でありますトララァ」

「さすがは紡だな。俺じゃ、こんな風に俺たち全員を覆うような障壁は展開出来ないし」

 俺はオトラサマーに続くようにして、俺たちを起点として展開されているドーム型の障壁を見ながらそんな風に言う。

 

「ほ、本当に凄いのです。これ程の障壁――結界は、お父さんたちでも多分展開出来ないのです」

「うん、たしかにね。広さも、強度も、展開速度も、全てが半端じゃない」

 悠花や涼太にまでそう告げられ、

「あ、あまり持ち上げられると、ちょ、ちょっと恥ずかしいのですが……」

 と、頬を赤らめながら返す紡。

 

「グガガァァッ!」

 ブレスが効かない事に対し、六翼のワイアームは怒りに満ちた叫びを上げ、今度は障壁を破壊しようと長い身体を鞭のように振るって叩きつけてきた。

 

 しかし、紡の障壁はその程度で破られたりはしない。

 一度では駄目だと考えたのか、六翼のワイアームは連続して叩きつけてくる。

 だが、バチバチと火花が散るだけで、障壁にはヒビひとつ入らない。

 

 そこへ再び毒のブレスが放射される。

 ブレスと打撃による連続攻撃で障壁を破ろうとしているのだろう。

 

 というか、毒のブレスと打撃……あと牙くらいしか攻撃手段を持っていないみたいだな、こいつ。

 特に厄介そうな障壁などをもっているような感じもないし、こちらから攻撃を仕掛けても大丈夫そうだな。様子見はこれくらいにして、そろそろ倒してしまうとしよう。

 

「あ、透真さん待ってください。普通に倒してしまうと、これがなんだったのかが分からなくなってしまいます。私が倒さない程度に大ダメージを与えるので、元に戻してください」

 唐突に横にいる舞奈がそう呟いたかと思うと、毒のブレスから打撃へと切り替わる瞬間に、展開されている障壁の外へと離脱。

 そこから大きく後方へと跳躍。近くの木を足場にしつつ、更に跳躍。跳躍。跳躍。

 木々の合間を飛び跳ねるかのような動きで、六翼のワイアームの側面へと回り込む舞奈。

 その動きに気づいた六翼のワイアームが、舞奈に攻撃目標を変更するかのように、口を舞奈の居る方へと向けた。

 ブレスで舞奈を落とそうとしているのだろう。

 しかし、舞奈はブレスを吐くよりも先に六翼のワイアームへと到達。

 

 そして、

「てぇぇぇぇぇいぃぃぃっっ!!」

 なんていう掛け声と共に足を伸ばし、六翼のワイアームの頭に一撃を叩き込む。

 

 それをまともに食らった六翼のワイアームは、勢いよく顔面から地面に激突。砂煙が舞った。

 ……まあ、動きは常人離れしているが、やってる事自体は単なる踵落としだな……

 もっとも――


「と、とんでもない威力なのですぅぅっ!?」

「トッラァァァ!? 重すぎる一撃でありますトラァァァッ!」

 と、悠花とオトラサマーが興奮気味にそう叫ぶように、その威力はこのデカブツを一撃で気絶させてしまえる程の凄まじいものではあるのだが。

 

 ……ちなみに今日の舞奈はキュロットスカートなので、どんだけ飛び跳ねてもパンツが見えたりする事はない。……いや、見えても困るが……

 

 なんて事を思いながら俺は、異形化状態から元に戻す魔法を、六翼のワイアームめがけて発動させる。

 すると幸いと言うべきか、異形化の深度は大した事がなかった為、あっさりと元の姿へと戻り始める。

 

「……って、待て待てなんだこれは……」

「ブッルルゥ……? ヘビ、トカゲ、ナマズ、カラス、コウモリ、ワシ……? どうして元に戻したら、複数の生き物になるブルゥ? 理解不能ブルー」

 俺の呟きに続く形でブルルンがそんな風に言ったとおり、『元の姿』に戻ったワイアームは、1匹の生物が異形化したものではなかった。

 

 複数の生物が、まるで合体するかのような状態で異形化していた?

 そんなのは今まで見た事も聞いた事もないぞ……

 一体なにがどうなったらこんな風になるっていうんだ……?

強さはまったくない異形でしたが、妙な事になっていますね?


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、1月27日(土)の想定です!

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