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第28話 山間に隠れしもの

「木々の合間に、家がチラホラ見え隠れしているのです」

「んー、明らかに廃屋って感じだね。昔は小さな集落だったか、あるいは林業とかで使っていたのかもしれないね」

 悠花と涼太が眼下に見える家――というか廃屋へと視線を向けながら、そんな風に言う。

 

「あの廃屋に黒志田が潜んでいる可能性もある……という事ですか?」

「まあ、可能性でしかないけどな。多分、山間部一帯に点在していて、桜満たちでは調査しきれなかったんだろう。とりあえず高度を下げてみるか」

 紡の問いかけにそう返しつつ、俺は高度を下げる。

 

「ブッルー……このくらいの高さならバッチリこの辺り全体を探知出来るブルけど……何も感じないブルねー」

「とすると、この辺りの廃屋は探すだけ無駄ですね。さっさと次へ行きましょう!」

 ブルルンの反応を聞いた舞奈がそんな風に言ってくる。

 

「ブルルー、幽霊もいないから大丈夫ブルよー」

「そ、そうなんですか? って、そ、そうではなくっ!」

 ブルルンのツッコミめいた一言にそんな風に返す舞奈。

 

「そもそも、幽霊を何度も見て来ているのに何で怖いのー?」

「い、いえ、別に怖いわけでは……。ただ、意思疎通の出来ない幽霊が苦手なだけです。私の魔法は物理特化なので、攻撃が効きませんし……」

「攻撃が効くか効かないかの問題なのー?」

 セラと舞奈のそんな会話を聞きながら、なんかこの会話、前にも聞いた事があるような……。気のせい……か?

 なんて事を思う俺。

 

「物理特化とは一体どんな魔法なのです?」

「え、あ、はい、身体能力を上げて物理的に敵と殴り合う魔法ですね」

 悠花の問いかけにそう返事をする舞奈。

 ……間違ってはいないが、正しくもないぞ、その説明は……

 

「トッララー、いわゆる物理魔法でありますトラ? 隕石を降らせられるでありますトラー?」

 オトラサマーが妙に期待のこもった眼差しで問うと、

「い、いえ、そういうのは無理です……」

「そうそう、舞奈お姉ちゃんの場合は、どっちかというと自分がメテオになって突撃する感じ? メテオでダイブみたいな? あ、メテオなストライクも出来るかも?」

 舞奈とセラがそんな風に言う。

 

「トラァ! それはそれで凄いでありますトラァー! 一度見てみたいでありますトッララァー!」

「オ、オトラサマーが妙にテンション高いのです……。あ、あまりはしゃぐと落ちるですよ……」

 カゴの中で両手を上げてはしゃぐオトラサマーに、ちょっと困惑しつつそう呟く悠花。

 

「トラァ、申し訳ないでありますトラー……。ファイタイガーの血がつい騒いでしまったでありますトッラァー……」

「ファイタイガー……?」

 オトラサマーの発言に対し、俺が首を傾げてみせると、

「あ、そのヌイグルミは元々『ウォーランドアニマルズ』っていうシリーズのひとつでして、ファイタイガーはそのうちの1体なんですよ」

 と、悠花……ではなく、紡がそう言ってきた。

 そして、

「うちにも、メイジュゴンちゃんがいますし」

 なんて続けてくる。

 メイ……ジュゴン……。ジュゴンのメイジ――魔法使いって所だろうか?

 

「あっ、紡お姉さんも持っているですか!」

「はい。呪言とジュゴンがかかっている所に、とても惹かれて買ってしまいました」

 悠花に対しそんな風に返す紡。

 

 じゅ、呪言とジュゴン……。ダジャレか何かなのか……?

 っていうか、そこに惹かれるって……。いや、紡なら普通……か?


 なんて事を考えつつ、やや低空飛行で山間部を進んでいると、いつの間にか記されていた場所を抜けており、

「この辺りはもう範囲外じゃないかな?」

 という涼太の言葉でそれに気づく俺。

 

「おっと、そうなるとここはハズレか」

「ブッルゥ……。そうブルねー。まったく何も感じなかったブルよー」

「なら、他の場所に――」

「――トッラ? 何か『殺意』のようなものを感じるでありますトラー」

 俺の言葉を遮るようにそんな事を口にするオトラサマー。

 

「殺意……です?」

「良く分からないが……オトラサマー、それはどの辺りから感じるんだ?」

 首を傾げる悠花に続くようにしてそう問いかける俺。

 それに対してオトラサマーは、

「トララー、こっちの……あっ! あそこに見える廃屋あたりでありますトッラ!」

 と答えながら、右手を伸ばして方角を示してみせる。

 するとたしかにそこには廃屋があった。

 

「獣道のようなものが一応見えるな。廃屋は廃屋でも完全に山に埋もれてしまったというわけではなさそうだ。誰かが使っている可能性は十分にあり得る……か」

「黒志田ではないとはいえ、殺意……と言われると、放置しておけるものでもありませんね」

 俺の呟きに対し、紡がそんな風に言ってくる。

 そして、まさにその通りでもあるので、

「そうだな。よし、とりあえず降下して地上から慎重に近づいてみるとしよう」

 と皆に告げると、俺は地上へと降下するのだった――

何かがいるようですが、果たして……?


とまあそんな所でまた次回!

次の更新も予定通りとなります、1月20日(土)の想定です!

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