第15話 おおやしろとウサギと勾玉
おおやしろの入口である鳥居をくぐってしばらく進むと、小さな社が見えてきた。
それに対して、紡とセラが、
「あそこ、人が並んでますね?」
「小さい神社?」
と、それぞれそんな風に言って首を傾げる。
「あれは穢れを祓う為のお社ですね。拝殿へお参りする前に、あそこでお参りしておくのが流れとしては良いそうですよ」
「あ、そうなのですね。それでしたら、私たちも並ぶとしましょうか」
舞奈の説明を聞いて納得した紡が、そう返事をして列に並ぶ。
なるほど……。さすがは神々の集う地だけあって、他とは色々と違うな。
なんて事を思いながら列に並んでお参りを済ませると、更に奥へと向かう。
「あ、ウサギの像がある!」
「そう言えば入口の鳥居の所にもあったな」
俺がセラに続くようにして、そう口にすると、
「全体で70以上存在していたはずですよ」
と、そんな風に言ってくる舞奈。
それを聞いたセラと紡が、驚きの表情で言葉を発する。
「70以上!? 多すぎー! でも、探してみたいかもー」
「そ、そんなにあるんですか!? さ、さすがは神話の地だけありますね……」
「まあ、今日はさすがに探している余裕まではないな。……ないよな?」
言いながら一応気になったので、舞奈の方へと顔を向けてみる。
すると舞奈はそれに頷き、
「そうですね。固まっているわけではないですし、探すのは結構大変です。さすがにちょっと時間が足りないかと……」
と、そう言ってきた。結構広いからなぁ……ここ。
「むぅ、残念……」
セラが残念そうな顔をするが、さすがにどうにも出来ないので諦めて貰うしかないな……
……
…………
………………
――ウサギの像探しは諦め、とりあえず巨大な縄――注連縄というんだったか――のある拝殿でお参りを済ませた俺たちは、近くの博物館の方へと移動。
「ここら辺はあまり人がいないな」
俺は人の姿があまりない場所でそう言うと、隠蔽魔法を使って全員の姿を隠す。
そして、
「さて、それじゃあ改めて舞奈のおじいさんの家へ行くとするか」
と告げ、飛翔魔法を発動した。
「け、結構高くまで来ましたね……」
「あれ? 全然気づかなかったけど、海、近いんだねー」
紡とセラがそれぞれそんな事を口にする。
……紡がちょっと不安げというか、軽く恐怖を感じている顔をしているな……
うーん……。少し高度を上げすぎたか?
そう思って少し高度を下げようとした所で、
「あ、透真さん、あの東に見える大きな湖の方へ向かってください」
と、舞奈がそんな風に言ってくる。
「なるほど……たしかにちょっと距離があるな。よし、行くぞ」
俺はそう告げると、少し高度を下げながら湖の方へと向かう。
そして、湖へと突き出す空港が間近に見えてきた所で、再び舞奈から指示がくる。
「南岸に沿って東岸の都市に入るちょっと前まで向かってください」
俺は言われた通り南岸に沿って――というか、南岸沿いに線路が伸びていたので、その上をなぞるようにして東岸の方へと飛んでいく。
川岸に桜の木が延々と植えられている川が見えて来た所で、
「あ、その川に沿って南下してください。もうすぐなので、高度と速度を落とした方が良いと思います」
と、そう告げてくる。
俺は速度と高度の双方を落としながら南下。
程なくして、宿が建ち並ぶ光景が目に入ってくる。
「温泉宿が並んでいますね……。というか、随分と宿が多い感じがします」
「まあ、大昔からありますからね」
舞奈は紡に対してそう答えた後、
「温泉街自体も見る所が多いので、それなりに人が出ていますし、どこかで降りて歩いた方が良かもしれませんね」
と、俺の方を見て言ってきた。
たしかにそうだな……と思い、人目に付きにくい場所に着陸し、隠蔽魔法を解除。
「あ、勾玉がある!」
そうセラが口にした通り、着陸地点の近くに、欄干に巨大な勾玉が埋め込まれた橋があった。
うーん……? 何か霊的な意味合いでもある……のか?
良く分からないが、なかなか面白い橋だな。
「ここには変わった橋がいくつかあるのですが……まあ、街中を探索する前に、お祖父様の家に向かいましょう。ここから大して遠くはないですし」
橋を眺める俺たちに対し、舞奈がそう告げて先導する。
舞奈のおじいさん……か。
なんとなく舞奈の話だと武人っぽいイメージがあるけれど、実際はどうなんだろうか……?
と、そんな事を考えながら舞奈の後を追って歩く俺だった――
敢えて地名とかは書いていないとはいえ、どことなく観光案内感がありますね……
とまあそんな所でまた次回!
次の更新も予定通りとなりまして、12月6日(水)の想定です!




